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「カラス」もいろいろ
●カラスは黒い?−黒いだけがカラスじゃない
カラスといえば真っ黒け、と思いがち。でも、黒い羽もよく見てみると…緑や紫、藍色といった、光沢のあるなんとも艶やかな色だとわかる。カラスの羽を拾うこともよくあるので、手に取って光に反射させて見てみるのもおもしろい。
世界に約120種いるカラス科の鳥の中には、ホントにカラスの仲間?と思うほど色鮮やかなものもいる。日本のカラス科の鳥には、ルリカケス、カケス、オナガ、カササギ、ホシガラス、そしていわゆる「黒いカラス」に、コクマルガラス(後頭部と腹が白い淡色型もいる)、ミヤマガラス、ワタリガラス、ハシボソガラス、ハシブトガラスがいる。
●カラスなんてみな同じ?−鳴き声やすみかにも違いあり
身近なカラスといえば「ハシボソガラス」と「ハシブトガラス」。ハシボソガラスはガーガーと濁った声で鳴き、ハシブトガラスはカーカーと澄んだ声で鳴くことが多い。両者の間にはすみ分けがあり、大きく見ると農村部などの開けたところにはハシボソ、そして都市になるとハシブトが多く生息している。この傾向は関東でははっきりと見られるが、他の地方都市や環境の入り交じるところでは2種とも生息しているようだ。
英語で“Jungle Crow”と呼ばれるハシブトガラスは、もともとは森林性の鳥と考えられている。そのためか、都市にくらしていてもねぐらは基本的に本物の緑地に作る。一見すみにくそうな都市を好むのは、ビルが林立する環境、いわばコンクリートジャングルが森林に似ているからともいわれている。
ハシブトガラス(上)はハシボソガラス(下)に比べて
くちばしが太く、おでこがでっぱっている。
カラスの羽色は光に反射すると光沢のある緑や紫などに見える。
(写真/平野伸明)
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カラス的ライフスタイル
京都大学大学院でカラスを専門に研究している松原始さんに、ハシブトガラスの生活様式について伺ってみた。
「カラスは昼行性なので、昼間に餌を食べ夜は寝ています。たまに夜中にカラスが騒ぐことがあります。不吉だとか言われますが、これはねぐらに侵入者が来たなどの理由で驚き、しばらく飛び回っているものと考えられます」。
秋冬の間カラスは、夕方になるとねぐらに集まり、大きな集団を作って眠る。しかし繁殖期になると、若い鳥やなわばりを持てないもの、弱い個体など以外は、ペアで自分たちのなわばりを持ちそこで眠ることが多くなる。繁殖可能になるのは生後2年目以降といわれ、ペアにならない若い鳥は夏でもねぐらを作り、群れていることが多い。また、8月頃から若鳥を連れた親がねぐらに戻ることもあるようだ。
●人を襲う恐い鳥?−子を守りたい気持ちはカラスも同じ
ペアを作ったカラスは自分たちのなわばりを守ろうとする。特に子育て中は、敵の可能性があるすべてのものからヒナを守るため、お父さんお母さんは必死なのだ。
「巣立ち後10日くらいの時期は、特に気が立っています。カラスは不審な侵入者に、まず音声の威嚇をします(鳴き声のくり返しのペースが速くなる)。もちろんケースバイケースで常に怒るわけではなく、個体によって性格も違います。しかし、カラスはいったん怒るとしばらく止まず、八つ当たり的に他の人を攻撃する場合もあるので、怒りだしたら立ち去ったほうが無難です」。
身近な鳥であるにもかかわらず、カラスの研究はあまり進んでいない。カラスの警戒心の強さと頭の良さがネックになって、観察しているとすぐに気づかれ、その上、成鳥(なわばりを持つ個体)の捕獲・バンディングなどが困難で、通常の鳥類研究の方法がほとんど通用しないのだという。故に、松原さんは見つけたら追いかけられるだけ追いかけるといった研究を続けているそうだ。
人を襲うのは通常、繁殖上の問題に限ったことである。中にはごくまれに意味不明の攻撃をするものもあるが、普通に遊んでいる非繁殖群やねぐらに集う大群は危険ではない。
●ゴミを散らかすイタズラ者?−目の前のえさを食べて何が悪い
カラスは雑食性で、サバンナのハイエナ同様、自然界の掃除屋さん(スカベンジャー)でもある。死体、小動物、果実など食べられそうなものは何でも食べる。おまけに、餌が豊富にあれば、「貯食」といって、隠しておいて後で食べる。
「都市のハシブトガラスも同じです。樹の上など高いところから視覚で餌を探しますが、都市には餌になるゴミがごろごろあります。貯食をする鳥は、どこに何があるかという「認知地図」が発達しているとされ、いったんゴミ袋の中に餌を発見すれば、“ゴミ置き場にはごちそうがある”と覚えてしまいます」。
松原さんによれば、カラスがゴミをあさるのは森で死体を食べることとなんら変わりはないという。カラスは鳥のヒナを襲って食べることもある。憎い!と思う方もいるだろうが、もともと小動物や卵を食べる鳥なのだ。また、都市の生態系において、カラスが捕食者として他の種が増えすぎるのを抑えているとも考えられる。ネズミなどはかなりの数が食べられているだろう。カラスが増えすぎたというのは、都市がそれだけカラスに餌を与えている環境だということで、問題はこのような環境自体にあるのだ。
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