公益財団法人日本野鳥の会
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韓国浅水湾で発生したトモエガモの大量死

 韓国の忠清南道の浅水湾において,2000年10月に鳥コレラが発生し,12,430羽のカモ類が死亡した.死亡した鳥の約90%はトモエガモで,他にマガモ5%,オナガガモ4%が含まれていた.以下がその時の状況である.

10月22日  100羽のカモが死んでいるのが発見された.
10月23日  8羽がサンプルとして大韓民国国立獣医科検疫院に検査の為送られた.
10月24日  700羽のカモの死体が回収された.
10月25日〜11月1日  カモの死体回収と検査が継続された.

 韓国のほかの越冬地では鳥コレラは発生してなかったようだが,鳥コレラが発生した時,浅水湾には約20万羽の水鳥がいた.アメリカなどの例を見ると,これらの鳥のと同じ渡り経路の先にある日本でも,この病気が発生する可能性は高い.
 鳥コレラの発生は,アメリカでは1930年代に初めて報告されてから現在まで,発生は年々増加傾向にあり,その感染ルートも増加しているようである. 1979年から80年にかけて中央ルートとミシシッピールートで大発生した時は,97年7月にカナダのエスキモーポイントで発生して以来,ネブラスカのアライアンスで80年4月下旬に発生するまで,ガン・カモを中心に合計72,000羽におよぶ被害が出ている.また,これまでは越冬期のみ発生していたものが,近年では繁殖期を含めたすべてのシーズンにおいて発生している.

 鳥コレラは,パスツレラ菌による感染症で,病状は急性ないし激性の敗血症,高い罹病率と死亡率が特徴である.病状は,食欲がなくなったり,無気力になることで,病気の伝播は,菌の直接的接種または吸入によるものとされており,鳥が高密度に生息するような環境下では容易に感染する.
 発病が確認された群れの中には,一般に潜伏期の鳥から,死亡に至るケースまで,様々な段階の個体が何羽も見いだせるが,これらの水鳥群集を捕食する猛禽類も,感染している可能性がきわめて高い.また,スカベンジャーであるカモメ類の場合は,この病気に対し抵抗力を持っているため,逆に媒介者になる可能性がある.
 死後病変では,病気の激しさに個体差が見られるが,敗血症・肝臓,脾臓の膨張および斑点形成・呼吸器系の出血などが共通して見られる.鑑別診断は事実上不可能で,細菌学的,血清学的方法によってのみ結論が得られる.診断には時間がかかるため治療の開始には間に合わない.予防法としては現在のところ,病気が発生した湖沼などに鳥の群れを近づけないという方法しかない.また,もし個々に治療が行なえるならば,クロールテトラサイクリン,オキシテトラサイクリン,サルファクイノサリンを,水や餌にまぜて投与すると効果があるとされている.

 
浅水湾では世界の大部分にあたる20万羽ものトモエガモが越冬している.写真は採食のために飛び立った大群.

2000年秋,1万羽以上ものトモエガモが鳥コレラで死亡した

回収されたトモエガモの死体
写真 :Kim Hyun-Tae氏提供
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