海鳥たちは訴える。海は、ごみ箱ではない。
地球表面の約70%を占め、生命を育む豊かな海。
しかし今、その海に年間1,100万トンを超えるプラスチックごみが流れ込み、海鳥をはじめ多くの海洋生物たちの命を奪っています。
この状況が続けば、2050年には魚類の総重量を超えるという衝撃的な予測もあります。
日本は、一人当たりの使い捨てプラスチック消費量が世界第2位の大量消費国。
私たちは今、生命を育む海を守るのか、失ってしまうのか、未来を選択する岐路に立っています。
あなたが捨てたごみが今、海鳥を苦しめている
コアホウドリの世界最大の繁殖地ミッドウェー島には、大量のプラスチックごみが漂着する。ここでは、ペットボトルのキャップやライターなど、プラスチック片で胃をいっぱいにしたヒナの死骸が多数みつかっている。
毎年約100万羽の海鳥が命を落としている
安くて加工しやすい「プラスチック」は、レジ袋やペットボトル、容器や包装など、私たちの暮らしの中で便利に使われています。一方で、使い捨てのライフスタイルを助長し、想像を絶する量のプラスチックごみが生みだされています。
そのうち、これまでにリサイクルされたのは世界全体で9%に過ぎず(Wilcox et al. 2015)、適切に処理されなかったごみが大量に海へと流れ込んでいます。
近年では、その量は年間1,100万トンを超え(The Pew Charitable Trusts 2020)、極地から深海まで海洋全体を汚染し、800種を超える海洋生物に影響を与え、海鳥だけでも毎年約100万羽が命を落としているといわれています(国際連合広報センター 2017)。
親鳥からプラスチックごみを与えられ十分成長できず、飛び立つことなく力尽きたコアホウドリの幼鳥。(ミッドウェー島)
有害物質の“運び屋”マイクロプラスチック
海鳥がエサと間違えて、プラスチックごみを誤食して死に至るケースは、1960年代から知られていましたが、近年では、細かく砕けた5mm以下のマイクロプラスチックの影響が問題になっています。
マイクロプラスチックは、添加剤が残留していたり、海中の有害な化学物質を吸着することがあります。こうした有害物質が、食物連鎖を通じてプランクトンから魚、海鳥へと生物濃縮されることがわかってきました。
世界的規模で実施された海鳥調査では、40%の個体の脂肪から有害物質が検出され(Yamashita et al. 2021)、生体への影響が懸念されています。
ハシボソミズナギドリの胃の中からは、1羽あたり最大0.6gのプラスチック片が見つかった。体重比で考えると、人間の胃の中に60gものプラスチック片があるのと同じ。(マス目は5mm四方)
いますぐ行動を
このままでは近い将来、海の恩恵を受けている私たちも、今苦しんでいる海鳥たちのように、自らが捨てたプラスチックごみの脅威にさらされるかもしれません。
日本野鳥の会は、脱プラスチック社会を実現するために基本法の制定を国に働きかけるとともに、一人ひとりのライフスタイルを見直すための普及活動を行なっています。海鳥たちが健やかに舞う海を守るために、どうかご支援をお願いします。
活動へのご寄付に、ご協力ください
■日本のプラスチック消費量は、国内でリサイクル可能な量を大幅に上回る
日本政府は、プラスチックごみの約85%を有効利用していると公表していますが(2019)、内訳の約60%は、焼却による熱回収であり、環境負荷が高く、大量のCO2を排出しています。
適切なリサイクル(再生利用)は約25%とされていますが、国外輸出を含むため、実際の国内リサイクルは約16%に過ぎません(プラスチック循環利用協会 2020)。
私たちは、国内で適切にリサイクルできる量を大幅に上回るプラスチック製品を、大量消費しています。
街で捨てられた生活ごみも、風や雨に運ばれ、川から海へと大量に流れ込んでいる。
当会の取り組み
2050年には、プラスチックごみを誤食する海鳥は99%に達すると予測されています(Wilcox et al. 2015)。海鳥を守り、大量生産・大量消費社会を変えるため、いますぐ行動する必要があります。
脱プラスチック社会を実現する政策提言
日本の対策は、国際社会に大きく後れをとっています。2021年3月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が閣議決定されましたが、その内容は「代替品の利用」と「大量廃棄を前提とした回収とリサイクルの推進」に依存しており、問題の本質であるプラスチック製品の大量生産・大量消費社会からの転換を図るものにはなっていません。まず、使い捨てプラスチック製品の生産総量を大幅に削減し、そのうえで、確実に循環利用させていく仕組みが必要です。
当会もメンバーとなっている「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」は、政府に対し、2021年2月に「脱プラスチック戦略を推進するための基本法(案)」を提言しました。法案が政策に反映されるように、今後も引き続き、政府に働きかけていきます。
【脱プラスチック戦略を推進するための基本法(案)の骨子】
●2030年までに、自然環境へのプラスチックごみの流出ゼロ
●2030年までに、使い捨てプラスチック製品の製造・輸入の原則ゼロ
●2050年までに、バージンプラスチックを使った製品に依存しない社会を築く
●有害化学物質による健康被害や生態系への悪影響の発生を予防する
など
- プレスリリース:「脱プラスチック戦略推進基本法(案)」を検討し、提案(2021年2月12日)
ライフスタイルの変化を促すための、普及・啓発活動
この問題の解決に一番重要なことは、プラスチック製品の使用量を減らすことです。使い捨てを見直し、環境負荷の少ない製品を選ぶなど、私たち一人ひとりがライフスタイルを見直すことが必要です。
当会では、この問題を多くの方に知っていただき、できることを一緒に考えていけるよう、オンラインでの連続セミナーの開催や、関係団体と協力して教材の開発・無償提供などを行なっています。
2030年までに
【SDGs】(持続可能な開発目標)を達成するためにも、
国際社会全体で、プラスチックごみ問題に
取り組む必要があります。
当会の活動に、ご支援をお願いします