キホンのスズメ――身近な野鳥を観察しよう

スズメ
(写真:PIXTA)

日本で身近な野鳥といえば、スズメ! いつもあちこちにいるので、気にせず通りすぎている人が多いかも。ところが最近、スズメが減っていることがわかってきました。野鳥や自然を守る第一歩は、関心を持つこと。まずは、身近なスズメを観察してみませんか?

ピンバッジとシール(ツバメ)
(イラスト:武藤 修)

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スズメはみんな“ほっぺ”が黒い?

日本でスズメといえば、茶色い頭に黒い“ほっぺ”。でも山に行くと、“ほっぺ”が黒くない不思議なスズメに会うことがあります。「山のスズメ」と呼ばれるニュウナイスズメです。また、ごくまれに海外からやや大きなスズメが飛んでくることも。彼らはイエスズメといい、やはり黒い“ほっぺ”ではありません。

スズメ
スズメ
全長14.5cm。ほおに黒い斑(はん)があり、のども黒い。オスもメスも似た姿。日本では、小笠原諸島をのぞく全国に分布し、人家の近くでくらす。


ニュウナイスズメ
ニュウナイスズメ
全長14cm。オスは頭や背に赤みがあり、メスは緑がかった褐色。日本では、本州中部以北の明るい林に生息し、秋冬は農耕地や河原で群れる。


イエスズメ
イエスズメ(写真:PIXTA)
全長16cm。オスの頭は灰色で、のどの黒斑が胸まで広がる。メスは全体的に色が薄い。スズメ科で最も数が多く、ほぼ世界中に分布しているが、南北アメリカ、南半球などでは外来種。日本では珍しく、ごくまれに北海道などで観察記録がある。

スズメのなかまは世界に40種以上もいますが、黒い“ほっぺ”は珍しいようです。そんなスズメが日本にいるなんて、ちょっとうれしくなりませんか?

世界のスズメ
世界のスズメ
(イラスト:富士鷹なすび)

※IOC World Bird List v15.1ではスズメ目スズメ科は43種。「世界のスズメ」イラストの種名も当リストによる。

スズメの“見ごろ”“聞きごろ”

スズメは一年中「チュン、チュン」とただ跳ねまわっているわけではありません。よく観察すれば、四季の巡りとともに、けんめいに生きるスズメたちの姿がみえてきます。

春~夏:求愛のさえずりやヒナの声に耳をすませて

寒さの残る2月頃、オスは「チッ、チョン、チ」とさえずり、メスに求愛します。3月には、くちばしにワラや小枝をくわえ、家の屋根や排気口、信号機、電柱など、いろいろなすき間に巣を作ります。子育て中に巣の近くを通りかかると、ヒナが「シリッ、シリッ」と鳴く声が聞こえてくることも。スズメは年2~3回子育てをするので、9月頃まで、せっせと食べものを探す親スズメと、ぴょんぴょんとついていく子スズメの姿を楽しめます。

スズメ(オス)
オスは背をそらせて求愛する。

スズメ(ヒナ)
ヒナは巣立ち後10日間ほどで自立し、成長とともに黄色いくちばしは黒く、ほおやのどの黒色は濃くなる。

(写真:掛下尚一郎)


子育て中の親スズメを観察すると、やせて羽もボサボサ。苦労がしのばれる。
(イラスト:富士鷹なすび)

日本野鳥の会『こんにちはスズメ』でさえずりやヒナの声を聞けます!

秋~冬:若鳥の大群や「ふくら雀」を探そう

巣立ったヒナが成長し、稲が実るころになると、大きな群れを作ります。昼は田んぼや草地で食べものを探し、夜はヨシ原や竹林、街路樹などの「ねぐら」に戻り、集団で眠ります。ねぐらから響く「チュン、チュン」はまるで大合唱! 冬になると、寒さをしのぐため羽に暖かい空気をため込んで「ふくら雀」の姿になります。今年生まれたスズメのうち、草も枯れ、虫も少ない厳しい冬を生きのびることができるのはわずか。この試練を越えれば、また春が訪れます。

まるまるとした「ふくら雀」たち
まるまるとした「ふくら雀」たち

歩くときは、両足をそろえて跳ねる。

スズメは害鳥?

スズメの主食は植物のたね。とくに収穫前のお米が大好きで、農家にとっては悩みのたねです。でもスズメには、稲などにつく虫を食べて田畑を守っている面もあります。1950年代の中国で、スズメを害鳥として一斉に駆除したときは、虫が大量発生し、かえって不作になりました。自然の生態系は、食べたり食べられたり、いろいろな形でつながり、支えあっています。害鳥と決めつけず、スズメとうまくやっていきたいですね。

スズメとの“距離感”を守ろう

警戒中のスズメ

スズメは人の近くでくらしていますが、害鳥として駆除されてきたせいか、人を強く警戒しているようです。人が見ているだけで、スズメが逃げだすことも。スズメに迷惑をかけないよう、追いかけたりせず、とくに子育ての時期は、遠くから見守ってください。写真のように急にピン!とのびたら“警戒中”というサインです。

※「フィールドマナー」「野鳥撮影マナー」をお読みください。

スズメのおもしろい姿をチェック!

☑ 花の蜜を“盗む”

盗蜜中のスズメ

サクラの木の下に花が丸ごといくつも落ちていたら、“犯人”はスズメかも。スズメはじつは甘党で、サクラの花の蜜が大好き。でも、太くて短いくちばしで蜜が吸えないので、花をちぎって付け根の蜜をつぶしてなめています。サクラからしたら、花粉を運んでもらえず蜜をなめられただけの“盗蜜”ですが、サクラの花はとても多いので影響はありません。苦労の多いスズメに、春のごちそうを楽しんでもらいましょう。

☑ 穴にはまって砂まみれ

地面になぞの穴がたくさんあったら、それはスズメの砂浴びのあとかも。砂まみれで遊んでいるわけではなく、体についたダニを砂で取っています。ちなみに水浴びも大好きで、どちらもする野鳥はとても珍しいのです。

にぎやかなスズメたちの砂浴び。

なぜ減っているの?

信号機のすき間に巣を作るスズメ
今は信号機のすき間も利用する
(写真:川内 博)

スズメの減少は、20年ごとの「全国鳥類繁殖分布調査」や、100年規模の「モニタリングサイト1000」の調査データから明らかにされました。とくに里山周辺のスズメの減少スピードは絶滅危惧種並みで、全国的なニュースにもなりました。
スズメは人家のそばにすみ、屋根の下などのすき間や樹洞に巣を作ります。しかし、最近は巣を作れない高気密住宅が増えました。巣の近くで食べ物を探せる緑地や空き地なども減りました。こうした環境の変化により、スズメの子育てがむずかしくなったことが、減少の要因と考えられています。

(参考: 会誌『野鳥』2025年3・4月号「身近な鳥たちの近況報告(文・三上 修)」)

私たちにできること

日本野鳥の会バードメイト・チームが実施した鳥類633種の総選挙「2024バードメイト杯」では、珍しい野鳥や憧れの野鳥ではなく、スズメが1位になりました。いつもそばにいるスズメを大切に思う人が多いことがうかがえます。スズメへの応援コメントには、最近数が減ったことを心配する言葉が並びました。

ぬまがさワタリ氏による結果発表

信号機のすき間に巣を作るスズメ
画像をクリックで拡大

バードメイトX(旧 Twitter)での鳥類633種の総選挙「2024バードメイト杯」結果報告はこちら

スズメへの応援コメント(一部)

  • 「一番好きな鳥は、いつも一番近くにいる(ちたろ様)」
  • 「民話から童謡まで、心の風景になっています。(escape2009様)」
  • 「賢くてちっちゃくて可愛くて一生懸命生きるスズメ、生涯応援しています。人間のせいで年々環境が過酷になっていくから心配です。(ピロきし様)」
  • 「子供の頃から身近にいて慣れ親しんできた鳥さん。最近、昔に比べて見かけなくなり寂しいです。先日久々に出会えてうれしかったー!(こうめ様)」
  • 「最近数が減っているとウワサの彼ら、スズメさん!!ここで彼らの大切さを思い出したいです。(スズメの子様)」
  • 「地味で平凡でどこにでもいそうに思えてどんどん減っているスズメ。つぶらな瞳も跳ねるときのぴょんぴょんスタイルもたまりません!清少納言も愛でた古来から愛されるスズメをこれからも守っていきたい!!(ぴょんきち様)」

日本野鳥の会バードメイト(@Birdmate_wbsj) / X
ID:@Birdmate_wbsj(日本野鳥の会バードメイト)

スズメがそばにいる日々を守るためには、スズメの視点から身のまわりの環境を見直すことが大切です。まずはスズメを観察し、人もスズメもくらしやすい環境について考えてみませんか?

ピンバッジとシール(ツバメ)
(イラスト:武藤 修)

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スズメ