No.101 2012年8月号


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目次 ◆矢部川水害について
 筑後支部より被害状況について
◆支部の動き
 支部報保護・調査記事関連トピックス
◆ブロック協議会・連携団体全国総会報告
 2012年度 北海道ブロック協議会総会報告
 2012年度 連携団体全国総会報告
◆事務局からのお知らせなど
 「支部報とりまとめ発送」次回日程のご案内
 支部名称等変更のお知らせ
 会員数
 訂正とお詫び

矢部川水害について

■筑後支部より被害状況について■

暑中お見舞い申し上げます。

さて、梅雨末期の北部九州豪雨は、我々の所・福岡県南部の矢部川流域に大きな被害をもたらしました。
我々が春に探鳥会を行なっている中流域の、八女市、筑後市、みやま市、の公園でも沢山の流木が泥流とともに流れ込み、大きな被害が生じています。
折角の夏休みなのに、子供たちは使えず、ライフラインの復旧や、被害家屋のゴミや泥の搬出が先行し、何時修復するのか、全く目途が立っていません。
会員の中では、幸い怪我をしたりした人はいませんでしたが、今も何人かは、固定電話が通じず、水も無くて、避難所暮しをしている人がいます。
編集長も八女市の交通対策課担当だったため、災害対策課に詰め切りで、会報8月号は休止することになりました。 有明海も、流木やゴミがいっぱい漂流していて、海岸や、干潟に漂着しています。これが、シギ・チドリ地にどんな影響を与えるか、秋の調査でどんな結果になるか、心配しています。
本当は、早くに連絡すべきでしたが遅くなりました。

(筑後支部 支部長 松富士 将和)

支部の動き

■支部報保護・調査記事関連トピックス■

本記事は日本野鳥の会へ送付されてきている各地の支部報/会報から抽出して作成し、調査・保護に関心がある野鳥の会の会員へ配信しております。本記事の一部又は全部を不特定多数が見る可能性があるところへ公開される場合は、各支部/各会の了承を事前に得て下さい。記事は筆者の意向に反しないように、取り扱いをお願いします。

○支部報/会報 保護・調査記事関連トピックスNO.618

●2012/6 やまがた
・カラスの生息状況調査(代表 簗川堅治)
・山形県初確認の鳥たち
●2012/6 埼玉
・2012年春シギ・チドリ類調査(研究部 石井智)
●2012/6 東京
・支部活動活性化への4つの提言(八王子・日野カワセミ会会長 粕谷和夫)
・葛西臨海公園カヌー競技場計画再浮上
・餌付けは誰のため(金森光伸)
●2012/6 神奈川
・2012年ガン・カモ類調査結果(ガンカモ調査集計担当 森 要)
●2012/6 南富士
・春季シギ・チドリ調査(調査研究部)
●2012/6 徳島県
・「つるぎトレイルランニングレースin那賀2012」ついて要望書
・ちょっと気になる野鳥の和名 ミサゴ(曽良寛武)
・ウインドファーム設置計画に係る環境影響評価書への意見
・日本湿地ネットワーク総会とシンポジウム(山内美登利)

●2012/6 やまがた
・カラスの生息状況調査(代表 簗川堅治)
山形市からの委託で、11〜2月、毎月、霞城公園(山形城)でカラスの塒入りを調査した。
結果は11/19:2,260羽、12/3:2,478、12/17:4,692、1/14:3,926、2/25:6,837。公園内のケヤキやプラタナス等の高木を利用した。全体の7割程度がハシボソガラスで、ミヤマガラス、コクマルガラスも数羽、観察された。(かまがた「やませみ」NO.79,P10)
・山形県初確認の鳥たち
399番:04/5、ウスリームシクイの囀り声が収録され、「BIRDER」2011/3号に掲載された。最近、同じと思われる囀り声を聞いた事例が複数ある。以前はエゾムシクイとされていたが、現在は別種のウスリームシクイとされ、アムールムシクイへ名称変更も提唱されている。400番:コウテンシ、11/23、飛島で撮影された。
国内では天売島に続く2例目となる。その他未確認:ヒメウタイムシクイ又はミナミヒメウタイムシクイ、07/4、飛島で記録された可能性がある(「BIRDER」2011/12号)。シベリアヨシキリ又はヌマヨシキリが2011/10、飛島で撮影されたとある。
(かまがた「やませみ」NO.79,P13)
●2012/6 埼玉
・2012年春シギ・チドリ類調査(研究部 石井智)
4/29、さいたま市の大久保農耕地で調査した。結果はコチドリ9、タシギ1、ムナグロ45であった。ムナグロは2011年:7、2010年:5、2009年:337、最大は1990年の624と変動が大きいが、激減している。
(埼玉「しらこばと」NO.338,P4)
●2012/6 東京
・支部活動活性化への4つの提言(八王子・日野カワセミ会会長 粕谷和夫)
支部活動活性化で提言。
1・探鳥会は皆で教え合う方法で、参加者はお客の考え方はしない。
2・会員が自主的に企画運営する探鳥会の開催。
3・会員外への公開探鳥会。
4・調査活動の充実、多くの会員が参加する人海戦術的な方法は多くの成果が期待できる。各地域の野鳥関係団体と連携する。
(東京「ユリカモメ」NO.680,P2)
・葛西臨海公園カヌー競技場計画再浮上
 東京都は再度、20年のオリンピック開催地候補地に立候補した。前回同様葛西臨海公園西側一帯をカヌー競技場の建設予定地にしている。計画は9mの高さから下る400mコース2本、この激流を支える大きなコンクリートの池、観覧席1万2千、オリンピック後はレジャー施設で残す計画である。公園西部の森が破壊される恐れがある。幹事会は葛西東渚・鳥類園友の会と歩調を合わせ、財団本部の協力を求める。
(東京「ユリカモメ」NO.680,P10)
・餌付けは誰のため(金森光伸)
 嘗ては給餌は美談であった。今でもタンチョウ、シマフクロウは緊急措置として給餌は必要である。出水へ集中するツルへの給餌はかなり危険で、ツルの分散化を考えるべきである。嘗て、不忍池で、水鳥に給餌していた上野動物園は給餌を止め、餌付けを止めるよう看板を立てた。鳥が可哀想と思うなら、広く自然環境復元に力を入れるべきである。カメラマンの餌付けは自分の写真のためで、ミールワームは脂肪分が多く、ビタミン欠乏症等で、野鳥の餌として良くない。餌付けで本人の母性本能は満足し、写真撮影ができても、野鳥は幸せか。
(東京「ユリカモメ」NO.680,P19)
●2012/6 神奈川
・2012年ガン・カモ類調査結果(ガンカモ調査集計担当 森 要)
 1/22の前後1週間、神奈川県下86箇所を調査した。16種、17,154羽が記録され、総数は前年とほぼ同じ。内訳はコガモ4,335(♂1,927、♀2108、不明300)、ヒドリガモ2,967(1,586、1,381、0)、カルガモ2,199、スズガモ2,113(313、525、1,275)、キンクロハジロ1,506(911、577、18)、オシドリ1,156(124、80、952)、マガモ932(406、325、201)、オナガガモ882(519、363、0)、ホシハジロ555(330、184、41)等。宮ヶ瀬湖には過去最大のオシドリ936羽が飛来した。雌雄別にカウントしている支部はあまり無く、ホシハジロの♂/♀の比が(今年も)1.8と高いのは、その意味する所は何なのか。
(神奈川「はばたき」NO.481,P15)
●2012/6 南富士
・春季シギ・チドリ調査(調査研究部)
 4/29、富士川両岸を新幹線から河口まで調査した。総計76羽で内訳はハマシギ29、コチドリ13、チュウシャクシギ12、シロチドリ6、イソシギ4、トウネン4、メダイチドリ2、キョウジョシギ2、クサシギ2、ムナグロ1、タシギ1。
(南富士「さえずり」NO.355,P6)
●2012/6 徳島県
・「つるぎトレイルランニングレースin那賀2012」ついて要望書
 5/9、当会は徳島県自然保護協会、徳島県植物研究会、パンダクラブ徳島と連名で同レースについて、徳島県知事へ要望書を提出した。人の一時的な欲望を満たすため、生き延びた寒冷地の植物を一瞬で踏み潰すと、復元はできない。自然の中での行事は多様な生き物にも配慮すべきである。現在、「生物多様性とくしま戦略」が策定中で、他県ではその点を配慮し、トレイルランニングレースの計画が中止さている例も多い。剣山山系の生物多様性を喪失させないために、「トレイルランニング」の健全なスポーツ性を貶めないためにも、登山道は使用せず、林道使用で指導頂きたい。予め自然保護団体、関係機関と十分な協議を行い、イベント後は植物等の被害状況を調査し、公表願う。http://www.trailrunning-ohkoku.jp/raceguide/2012/05/in2012.html
(徳島県「野鳥徳島」NO.406,P6〜8)
・ちょっと気になる野鳥の和名 ミサゴ(曽良寛武)
 みさごの語源について、貝原益軒はその著「日本釈名」で「水さぐる」としており、今の文献は殆どがこの説を採用している。ミサゴは空中で停空飛翔し、一気に急降下し、「水をさぐっている」様には見えない。鳴門ではミサゴは「びしゃご」と呼ばれ、これは水に飛び込む時のビシャッと言う音によるものと思われ、ミサゴの名はこの水音に由来していると考える。
(徳島県「野鳥徳島」NO.406,P9)
・ウインドファーム設置計画に係る環境影響評価書への意見
 上勝町、神山町に約20基の風力発電所が計画されて、5/12、環境影響評価書へ意見書を出した。既に15基の風車が設置された大川原高原では、5年連続して繁殖していたクマタカの営巣が確認できなくなっている。工事中の騒音、人や車の影響、森林伐採、風車の発する(低周波)騒音、バードストライク、野鳥、野生生物の生息調査、希少な野草の調査結果等を環境影響評価書に反映すること。
(徳島県「野鳥徳島」NO.406,P10)
・日本湿地ネットワーク総会とシンポジウム(山内美登利)
 4/21、敦賀市で開催された。同市にある中池見湿地は大阪ガスの液化天然ガス備蓄基地建設が予定されたが、NPO法人ウエットランド中池見等の反対運動で撤回後、敦賀市へ寄付され、ラムサール条約登録湿地に認定された。元ラムサール条約本部事務局の小林聡史氏から「今年度の世界湿地のテーマは『湿地と観光』で、マナーが悪い観光客が増えれば、脆弱な湿地は生態学的特徴が変化してしまい、湿地保全に興味を持ってもらえば、環境問題全般に強い味方になり、環境教育が必要である」とあった。
(徳島県「野鳥徳島」NO.406,P11)

○支部報 保護・調査記事関連トピックス NO.619

●2012/6 佐渡
・モズの生態(支部長 坂田金正)
・佐渡島におけるホシガラスの観察記録(事務局長 近藤健一郎)
●2012/6 千葉県
・コサギ、サシバ、オオヨシキリの生息状況に注目しよう(幹事会)
・千葉県内カモメ事情(志村英雄)
・ハヤブサ 震災後確認できず(4/26 YAHOO京都新聞ニュース)
・野鳥の国内最長寿オオミズナギドリ(4/26 YAHOO 毎日新聞ニュース)
●2012/6 福井県
・愛玩飼養制度の廃止(密対連事務局長 中村桂子)
・オジロワシ、オオワシ渡来状況調査(調査担当 小嶋明男)
●2012/6-7 京都
・2012年越冬ツバメ調査(調査保護部 船瀬茂信)
・マミチャジナイ(澤島哲郎)
・陽の影が無くなる島(谷角裕之)
●2012/6 筑豊
・続「沈黙の春」は始ったのか?(落合東太)

●2012/6 佐渡
・モズの生態(支部長 坂田金正)
 モズは、上嘴下側の両脇に小さな突起を持ち、これで捕まえた獲物の首を押え、脊髄を砕いたりするニッパーの役目をする。嘴の先端は下方に曲がり、獲物の肉を切り取るナイフや手かぎの役を果たす。モズは春は繁殖のためペアで縄張を持つが、肉食性のため秋は自分の餌場として個々に縄張りを持つ。冬に敵対した隣接する雌雄は春に番になるため、和解をするが、互いにばつが悪いのか、そのままペアになるのは半分程度である。
(佐渡「いそひよ」NO.22,P3〜4)
・佐渡島におけるホシガラスの観察記録(事務局長 近藤健一郎)
 ホシガラスは本州中部では4月頃、針葉樹の樹上で営巣し、産卵数3〜4個、抱卵期間約18日、巣立ち約23日である。新潟県では渡りの時期に平野部でも観察される(新潟県支部)。佐渡島では1962/10、初めて観察され、渡り鳥の中継地である弾崎付近では秋に少数が渡るが、春の渡り観察例は無い。2010、11年、標高900mの大佐渡山地で夏に連続して観察され、この地に定着している可能性がある。杉の自然林帯で、ハイマツ、オオシラビソ等の松科が無い所で何を食べているのか興味がある。冬期は雪に閉ざされる。
(佐渡「いそひよ」NO.22,P4〜5)
●2012/6 千葉県
・コサギ、サシバ、オオヨシキリの生息状況に注目しよう(幹事会)
これらの鳥は、ついこの間まであたりまえに見られたが、近年、激減し、ネオニコチノイド系農薬、除草剤が多用され、水田をめぐる生態系が破壊されていることは見逃せない。これら、3種を環境指標生物として、動向を見守っていく。
(千葉県「ほおじろ」NO.374,P2)
・千葉県内カモメ事情(志村英雄)
 2011/7/22〜2012/5/18、コモメ類の写真を10.5万枚撮影した。種ごとの移動時期、換羽時期を知り、新たな識別情報を得る目的である。千葉県に最も早く渡来するのはウミネコで、その後8月中にオオセグロカモメが来る。銚子では干潟環境を好むズグロカモメは見られないが、その他の種は多い。外房から内房の岩礁地帯ではオオセグロカモメの比率が高く、セグロカモメは低い。
東京湾内富津から盤洲ではセグロカモメが優先する。カナダカモメは87年末に銚子で4羽確認して以来、毎年飛来している。銚子で見られるカモメ類基本8種の内、ミツユビカモメは観察例が激減している。旧ソ連が廃棄した原潜の放射能の影響?銚子市内の魚肉加工工場の廃液規制の影響?
(千葉県「ほおじろ」NO.374,P3〜6)
・ハヤブサ 震災後確認できず(4/26 YAHOO京都新聞ニュース)
宮古市の津軽石川河口では東日本大震災以降、ハヤブサが見られなくなったのが、宮古支部の調査で分かった。餌となる小鳥が減った事が原因とみられ、シギ、チドリ類も激減している。オジロワシも防潮堤がかさ上げされてから、飛来しなくなった。震災復興での防潮堤建設が餌場に影響が出るか注視していく。
(千葉県「ほおじろ」NO.374,P12)
・野鳥の国内最長寿オオミズナギドリ(4/26 YAHOO 毎日新聞ニュース)
 今年1月、マレーシアで保護されたオオミズナギドリが、75年、舞鶴市沖の冠島で成鳥時に標識された個体である事が分かった。足輪を付けてからの生存期間36年8箇月は、日本で標識された野鳥では最長寿となる。この鳥は衰弱して保護されたが、間もなく死んだ。冠島のオオミズナギドリは孵化して4年程後に戻って来るので、実年齢は40歳を超えていたと推測される。海外には50〜60年生存した標識鳥がいる。
(千葉県「ほおじろ」NO.374,P13)
●2012/6 福井県
・愛玩飼養制度の廃止(密対連事務局長 中村桂子)
 日本野鳥の会「かすみ網対策会議」の組織を移行し、92年、密対連が発足後、99年:現行法に基づく野鳥密猟取り締まりの強化、2000年:野鳥輸入は原則禁止、12年:野鳥の愛玩飼養制度の廃止になった。
現在、飼養登録されているメジロは引き続き飼養は可能であるが、毎年、飼養登録の更新が義務付けられ、足輪や飼養登録証の無い個体の更新はできない。不死身のメジロが存在しないよう願う。
(福井県「つぐみ」NO.162,P8)
・オジロワシ、オオワシ渡来状況調査(調査担当 小嶋明男)
 2/5、三方五胡に飛来するワシ類の個体数を把握した。今回28回目の調査となる。
確認はオジロワシ2羽で、第2回あるいは第3回冬羽若鳥と第4回冬羽若鳥である。
10年間、冬場は1羽が続いたが、昨季より2羽が見られている。琵琶湖に飛来するオジロワシとは別個体である。オオワシは09/2を最後に14年連続して同一個体が来ていたが、その後は途絶えたままである。
(福井県「つぐみ」NO.162,P10〜12)
●2012/6-7 京都
・2012年越冬ツバメ調査(調査保護部 船瀬茂信)
 温暖化の影響で、京都府南部の河川周辺で越冬ツバメは増えている。冬期の河川は改修工事が多く、特に、宇治川では中州の撤去、河畔林伐採が行われ、ツバメの目撃数は1/4に減った。今冬、越冬ツバメ確認数は宇治川宇治橋周辺で2/11:ツバメ40、イワツバメ300、コシアカツバメ2、ヒメアマツバメ22。三川合流御幸橋上流で2/18:ツバメ50、イワツバメ200。木津川5q地点でツバメ100、イワツバメ400。桂川久我橋付近で2/19:ツバメ20、イワツバメ100。
(京都「そんぐぽすと」NO.176,P9)
・マミチャジナイ(澤島哲郎)
マミチャジナイは秋に多い旅鳥で、西日本では少数が越冬する。ツグミの異名だった「しなひ」が名前の由来で、眉が目立つ茶色のツグミの意でマミチャジナイとなったようである(「鳥名の由来辞典」柏書房2005)。ハッキリした白い眉斑があるので、正確にはマミジロチャジナイと言うべきかもしれない。京都市では06年の春、市内のあちこちで見られ、今年の春もアカハラと共に10羽以上見られた。
(京都「そんぐぽすと」NO.176,P12)
・陽の影が無くなる島(谷角裕之)
 石垣島の南西約42kmにある波照間島は有人の国内最南端の島で、その島の最南端は北緯24度2分29秒で、北回帰線の24.4度に極めて近く、夏至の日、太陽は真上にきて、陽の影が無くなる。同島では留鳥や夏鳥は少ないが、大陸に近いため、06/12にサカツラガン、09/12にクロウタドリの迷鳥が見られている。
(京都「そんぐぽすと」NO.176,P14)
●2012/6 筑豊
・続「沈黙の春」は始ったのか?(落合東太)
 2/26の西日本新聞にアイガモ農法提唱者の手記が載り、自然観察者の細かな眼で、鳥類、昆虫の異変を見定め、その生息数の減少要因の1つに、ネオニコチノイド農薬を疑っている。影響ある野鳥に、ヒバリ、スズメ、ムクドリ、セキレイ類、ヒヨドリ、メジロの名が挙がっている。これら6種には共通点がある。いずれも、人間が作った環境に馴化し、生息域を拡大してきた。ヒバリは違う?人が新たに作った農地、牧草地等、一種の荒地がヒバリのすみかになっている。
(筑豊「野鳥だより・筑豊」NO.412,P20)

○支部報/会報 保護・調査記事関連トピックスNO.620

●2012/7 埼玉
・落語の中の鳥たち(長野誠治)
・カッコウの記録(大西孝治)
●2012/7 千葉県
・身の回りの環境変化に敏感になろう(幹事会)
・アスファルト熱浴(武田健治)
・カワセミで写真家と愛護会が対立(5/19 YAHOOニュース毎日新聞)
●2012/7 南富士
・ウルトラトレイル・マウントフジが行われて(支部長 景山秀雄)
●2012/7 大阪
・溜池で繁殖するカイツブリ(和田岳)
・大阪府レッドデータの鳥 オオタカ(小海途銀次郎)
●2012/7 北九州
・カンムリウミスズメ(研究部)
●2012/7 宮崎県
・御池のヤイロチョウ 待望の林道規制
・オオヨシキリは一夫一妻か一夫二妻か(友貞隆明)

●2012/7 埼玉
・落語の中の鳥たち(長野誠治)
 スズメ「抜け雀」:絵描きが宿賃が払えず、その換りに衝立に5羽の雀を描く。
雀は朝、飛び立ち戻って来るので宿屋は大繁盛する。老人が「このままでは雀は死ぬ」として、籠を描き加えた。数年後、絵描きは籠を描いたのは父親と知り、 「親を駕籠かきにした」と落ち。ツル「鶴」:ツルの名の謂れを聞かれ「雄がツーと飛んできて、後から雌がルーと飛んできた」。これを聞いて他人に説明すると 「雄がツルーと飛んできて」となり、「雌は黙って飛んできた」と落ち。ガン「雁風呂」:雁風呂の由来を聞いた水戸光圀は、雁の供養をしている町人に三千両を下げ渡し、「三千両は高い雁(かりがね:借金)ですな」「そのはずじゃ、貸金(かしがね)を取りに行くのじゃ」と落ち。
(埼玉「しらこばと」NO.339,P2〜3)
・カッコウの記録(大西孝治)
 過去10年間、三郷市で聞いたカッコウの初鳴き記録。2012年:5/24、11:5/19、10:5/20、09:5/27、08:5/18、07:確認できず、06:5/29、05:5/27、04:6/6、03:6/24。
(埼玉「しらこばと」NO.339,P8)
●2012/7 千葉県
・身の回りの環境変化に敏感になろう(幹事会)
石弘之の「地球環境報告」「同U」(共に岩波新書、1988,1989年)で、傷ついた地球を訴えている。更に年が経ち、千葉県では東京湾奥部の青潮、アオサの大量発生等の問題が発生している。支部ができたのはこの報告書が出た頃で、野鳥の宝庫の谷津干潟は国設鳥獣保護区、ラムサール条約登録地になったが、今はオオヨシキリは鳴かない。西印旛沼のヨシゴイも見られなくなった。ホトトギスの声は減り、普通種も減っている。私たちの身の回りの環境変化に、敏感である必要がある。
(千葉県「ほおじろ」NO.375,P2)
・アスファルト熱浴(武田健治)
 6月初旬、鴨川市の漁港でイソヒヨドリ♀が照りつけるアスファルト道路の上で、ゆっくり羽を広げ、姿勢を低くして翼を浮かした状態で、体を伏せた。砂の高温を利用して羽の寄生虫を駆除する砂熱浴が知られている。今回は砂の代わりにアスファルトを利用した。
(千葉県「ほおじろ」NO.375,P11)
・カワセミで写真家と愛護会が対立(5/19 YAHOOニュース毎日新聞)
 静岡県三島市で「市の鳥」カワセミをめぐり、カメラマンと自然保護団体が対立している。カワセミの写真を撮るためのさし木を愛護会が見つけると即、引き抜くいたちごっこが続いている。「カワセミは市の鳥なのに三島市の対応が悪い。市のシンボルに対し、行政は規制を考えねばならない」と指摘されている。
(千葉県「ほおじろ」NO.375,P12)
●2012/7 南富士
・ウルトラトレイル・マウントフジが行われて(支部長 景山秀雄)
 5/18〜20、富士山を一周する山道等を走るウルトラトレイル・マウントフジが行われた。事前に実行委員会から3回、幹事会を訪れており、支部より「野鳥の繁殖期5〜6月の実施は避けるよう」要望したが、聞き入られなかった。野鳥への影響を知るため、レース前後の5/16と5/22、富士宮市北山地区にあるレースコース約950mを調査した。5/16→5/22の結果は、観察総数16種、84羽→19種、97羽、繁殖行動8種、27羽→7種、21羽、繁殖テリトリー2種、2羽→1種、1羽。夏鳥の渡来で活発な時期、生息数が増えるのは自然な現象であるが、繁殖に関する数値の低下はレースの影響と判断する。野鳥の会本部、他支部とも連絡を取り合い、関係機関への指導を要請する。(南富士「さえずり」NO.356,P7)
●2012/7 大阪
・溜池で繁殖するカイツブリ(和田岳)
 溜池が多くあるのは瀬戸内と関西で、大阪府には80年代に半減したが、1999年現在、11,230箇所あるが、その面積はどんどん減っている。78年と98年の緑の国勢調査の結果を並べて、繁殖するカイツブリの数が減っていると指摘されている。在来魚の減少、アカミミガメの増加による影響の可能性もある。大阪鳥類研究グループで2000年、府下の1,178箇所の溜池を調べた。カイツブリは大阪府南部に多く記録され、北部では少ない。溜池が減るだけがカイツブリに影響するとも思われない。
(大阪「むくどり通信」NO.220,P10)
・大阪府レッドデータの鳥 オオタカ(小海途銀次郎)
 支部の依頼で「大阪希少鳥類研究グループ」は2000、01年、大阪府のオオタカを調査した。2年間でオオタカの巣48箇所が確認され、意外にオオタカは多いと
感じた。この調査で知り得た事は、巣間距離は平均2.2km(最短1.1km)、他種との巣間距離はハチクマ約60m、トビ約130m、サシバ約1.1qと近いものがあった。巣立ち数は平均2羽、営巣地は標高200m前後の丘陵地に多く、最高高度は557mであった。営巣木は松が48%、スギ、カシ、クスと続き、常緑樹が91%を占める。営巣林の状況は針葉樹林38%、針広混交林35%、落葉広葉樹林25%であった。繁殖失敗は原因不明23例、落巣3例、密猟1例、トビ、フクロウによる乗っ取り3例で、繁殖成功率は4割程度で かなり低い。
(大阪「むくどり通信」NO.220,P13)
●2012/7 北九州
・カンムリウミスズメ(研究部)
 日本近海に生息し、生息総数は5千羽程度と言われ、国の天然記念物に指定されている。日本沿岸の無人島で繁殖し、福岡県では筑前沖ノ島・属島小屋島で繁殖し、76年の調査で成鳥約280羽と推定され、89年以降、ドブネズミの侵出で激減している。
(北九州「北九州野鳥」NO.313,P11)
●2012/7 宮崎県
・御池のヤイロチョウ 待望の林道規制
 ヤイロチョウが渡来する御池野鳥の森では、支部が求めていた林道規制が実現し、5月末〜8月の3箇月間、立入禁止ゾーンを拡大する事が決まった。5/25、林道にロープが張られ、掲示板が2枚立った。5/27、ヤイロチョウ1羽の飛来を確認したが、 観察者は3名しかおらず、立入規制ニュースは広まったと思われる。5/27の調査ではウグイスの声が聞かれないほど下草やブッシュが無く、人ばかりでなく、シカの食害対策の課題もある。
(宮崎県「野鳥だより みやざき」NO.232,P5〜7)
・オオヨシキリは一夫一妻か一夫二妻か(友貞隆明)
 オオヨシキリの♀は♂より2週間程遅く到着すると言われる。♀が強い♂を選ぶのは野生の本来のあり方である。オオヨシキリはセッカやウグイスと異なり、♂は子育てに協力するので、迫力が無くてもこまめに餌を運ぶ♂が♀に受け入れられる事もある。♂は最初に番った♀に餌を運び、それ以降の♀には餌を運ばないそうである。一夫二妻では雌雄で育てた巣では餌が多いため♂の雛が多く、第二妻以降の巣では♀が独力で子育てし、餌が少ないので♀の雛が多いと言われる。
(宮崎県「野鳥だより みやざき」NO.232,P15〜16)

○支部報/会報 保護・調査記事関連トピックスNO.621

●2012/6-7 宮古
・風力発電計画が発生(遠藤公男)
・ミヤコ式巣箱2011年利用状況(佐々木宏)
●2012/7 東京
・改めて探鳥会を考える・その歴史と使命(本部主席研究員 安西英明)
・日比谷公園のスズメの数は?(川内博)
●2012/7 甲府
・フクロウ受難二題
●2012/7 和歌山県
・ウミネコ(谷脇智和)
・風力発電のリスクと実態(津野修一)
●2012/7 岡山
・連携団体全国総会に参加して(丸山健司)
・野鳥の行動・習性・生態(久保晧一郎)
●2012/7 香川県
・コアジサシ繁殖地の現状(榮川)
●2012/7 筑豊
・英彦山ソウシチョウ調査(広塚忠夫)

●2012/6-7 宮古
・風力発電計画が発生(遠藤公男)
  北上高地で2500KW級風車89台が計画されている。これには致命的な問題がある。
1・山の尾根に設置するため、建設用道路が必要で、環境破壊になる。
2・土砂流が発生し、下流域の水系が荒廃する。
3・羽根の騒音で牛の放牧に
影響が出る。
4・バードストライクが発生する。
5・近くのイヌワシ営巣地に影響が出る。08/9、釜石市でイヌワシの衝突死体が発見され、再発防止策が不十分である。参考書:「ストップ!風力発電」鶴田由紀 アットワークス 1200円+税。「風力発電の不都合な事実」武田恵世 アットワークス 2000円+税。(宮古「ミサゴの森」NO.222,P2〜3)
・ミヤコ式巣箱2011年利用状況(佐々木宏)
16の小中学校に設置してあるミヤコ式巣箱の利用状況を調べた。利用の多くはスズメで、シジュカラ、ヤマガラもあった。宮古支部が考案した「ミヤコ式巣箱」の人気が広がり、全国に3,000個を売る隠れたベストセラーになっている。 円筒形で、直径15cm、高さ20cm。(宮古「ミサゴの森」NO.222,P6)
●2012/7 東京
・改めて探鳥会を考える・その歴史と使命(本部主席研究員 安西英明)
 野鳥の会の歴史について誇ってよい。探鳥会を、野鳥を通して自然に親しみ、自然を守る運動を1934年(昭和9年)から続けている。フィールドマナーの「き」は当初、着る物にも一工夫(目立つ服装で野鳥を脅かさない)であったが、気をつけよう、写真、給餌、人への迷惑になっている。野鳥に親しむ人は増えたが、撮影や給餌の問題が出ている。全国90の連携団体は野鳥に関心を持つ人を増やすのは共通である。「ヒナを拾わないで」のキャンペーンを18年も続けねばならぬ状態で、探鳥会の使命は、「あるがままの野鳥に親しみ、あるがままの自然を知る」その心掛けをする人を増やす事である。
(東京「ユリカモメ」NO.681,P3)
・日比谷公園のスズメの数は?(川内博)
 2010年より、バードウィーク期間中に都心の日比谷公園でスズメの個体数を数えている。6つのコースでロードセンサス法で3回調査し、その平均値を出している。過去5回の春、冬の調査ではスズメの数は右肩下がりで減っていたが、2010/5/15:115羽、11/5/14:107羽、12/5/12:139羽で、今春は逆に増えている。
(東京「ユリカモメ」NO.681,P16)
●2012/7 甲府
・フクロウ受難二題
 甲府市で20年来フクロウが子育てしている場所を、5/13、地元新聞社が親子の写真入りで報じた。翌日から40〜50人のカメラマンが巣を取り囲んだ。夜間に ライトを照らし、親は子育てを放棄し、雛2羽は衰弱死した。カメラマンの行儀の悪さは論外とし、新聞報道に問題があり、寺院もカメラマンの立入を制限すべきであった。上野原市で地面にうずくまっているフクロウの雛を保護し、更に洞内の1羽も兄弟だろうとして家に連れ帰った事が美談調で新聞に載った。巣から落ちた雛を拾わないようにと指摘すると、雛は県の指導で元の場所に戻された。翌日、配慮に欠けた不適切な記事であった旨の謝罪と反省が載った。
(甲府「カワセミ」NO.119,P8)
●2012/7 和歌山県
・ウミネコ(谷脇智和)
 和歌山県では由良町と美浜町にウミネコの繁殖地がある。全国の主要なウミネコの営巣地はスゲ等の草は生えているが、木が無く、人や獣が近づきにくい場所で、年によっては繁殖場所が変わる。同じ場所で繁殖すると寄生虫等の問題が起こるため、全国的に数年毎に営巣場所を変えている。
(和歌山県「いっぴつ啓上」NO112,P9)
・風力発電のリスクと実態(津野修一)
 環境影響調査での騒音測定は、人の耳に聞こえる周波数での測定(A特性)、聞こえない超低周波数を考慮した測定(G特性)がある。事前調査では稼働前の環境音を測定し、稼働後、騒音で苦情が出た時、データが比較される。由良町では苦情に対し、「騒音は一般的な住宅地内とレベルは変わりなく健康への影響の可能性は極めて少ない」と説明されている。乱流の影響を避けるため、風車設置間隔は垂直方向にはブレード直径の3倍以上、水平方向は10倍以上が推奨されているが、尾根設置ではこれよりかなり近い。固定買取価格は7/1より、風力は業界が主張した高価格の23.1円/KWHとなり、今まで中止されていた計画が復活している。この費用は一般の電気料金に上乗せされる。ドイツでは買取は9円/KWH程度まで下がっている。
(和歌山県「いっぴつ啓上」NO112,P10〜11)
●2012/7 岡山
・連携団体全国総会に参加して(丸山健司)
 5/26、27、東京都晴海で第2回同総会が開催された。全国90団体の内44団体が参加した。
柳生会長:新たに9箇所がラムサール条約登録地に指定された。ツバメ調査、既に7千件以上の回答が届いている。回答者は会員外の方が殆どである。
議事討議:ツバメ調査で白化個体で放射能の影響が把握できるのでは。愛玩捕獲全面禁止の成果確認。野鳥写真撮影から入る人が多く、写真撮影マナーが悪化している。警察にお願いする方向も必要では。現鳥獣保護法の下では外来種の駆除は非常に難しい。特定外来生物のガビチョウ、ソウシチョウは捕獲可能でも、カスミ網所持ができない状態では捕獲方法が無い。鳥獣保護法で外来種捕獲を早急に検討して欲しい。自然保護団体として脱原発の方向性はどこか。
(岡山「野鳥おかやま」NO.191,P2)
・野鳥の行動・習性・生態(久保晧一郎)
 皮脂腺(上尾筒の付け根にある)の脂を嘴で羽毛につけるのをブリーニングと言い、撥水、防ダニ、防埃のため、水浴後に多い。水鳥では脛で静脈、動脈が交差し、足先から来る冷たい熱を奪い、体内に入る血液を温めて、足のうっ血を防いでいる。世界の野鳥は9,600種と言われ、内13%は絶滅危惧種で、化石に残っていない絶滅種は10万〜20万とされる。主な絶滅種はジィアントモア(ニュージーランド)、ドードー (モーリシャス)、エピオルニス、エレファントバード(マダガスカル)、リョコウバト(北米)、オオウミガラス(北太平洋)、ハワイミツスイ(ハワイ)。日本固有種の主な絶滅種は リュウキュウカラスバト、オガサワラカラスバト、オガサワラマシコ、オガサワラガビチョウ等。
(岡山「野鳥おかやま」NO.191,P4〜5)
●2012/7 香川県
・コアジサシ繁殖地の現状(榮川)
観音寺市瀬戸町の埋立地にコアジサシが営巣している。21haの安定型産業廃棄物埋立地で08年から繁殖している。瀬戸内で観察されるのは3箇所程度と言われる。営巣地はカラス等が止まって狙いをつける高い樹木や構造物が無い場所である。砂礫地の窪地に2、3個の卵を生み、20日位で孵化し、雛は2、3日で走り回る。雛が飛べるようになるには更に20日程かかる。巣立ち率5.5〜11.5%の数値がある。
(香川県「かいつぶり」NO.342,P1〜2)
●2012/7 筑豊
・英彦山ソウシチョウ調査(広塚忠夫)
4月、12回目(初回09/8)の英彦山ソウシチョウ調査を行った。31種591羽確認の内、ソウシチョウは131羽とその占有率が22%と高い。3月の調査では4羽であったので、繁殖期に低地から英彦山にかなり戻っている。ウグイスは確認13羽と少なく、ソウシチョウに追い出されている可能性もある。
(筑豊「野鳥だより・筑豊」NO.413,P18〜21)

(自然保護室・野鳥の会・神奈川/森 要)

ブロック協議会・連携団体全国総会報告

保全プロジェクト推進室より

■2012年度 日本野鳥の会北海道ブロック協議会総会 報告■


【日程】 2012年6月16日(土)〜17日(日)
【会場】 おたる自然の村 おこばち山荘(小樽市)
【主管】 日本野鳥の会小樽支部
【出席】(敬称略)

<北海道ブロック協議会代表>藤巻裕蔵/<オホーツク支部>川崎康弘・多賀憲雄/<根室支部>阿部嗣/<釧路支部>永澤廣治/<旭川支部>柳田和美/<滝川支部>越後弘/<道北支部>疋田瑞栄/<札幌支部>山田三夫・猿子正彦・近藤幸友・住友順子/<室蘭支部>篠原盛雄・堀本富宏/<道南檜山>一戸静夫・林直樹・林啓子/<小樽支部>梅木賢俊(議長)・伊藤佐保・大川良祐(司会)・小笠原惇六・須田良子・奈良田清光・濱野由美子(計10団体・24名)
公益財団法人日本野鳥の会(以下、「財団事務局」)からは、佐久間仁(理事)、小林豊(事務局長・保全プロジェクト推進室室長)、葉山政治(自然保護室室長)、松本潤慶(保護区グループチーフ)、中村聡(ウトナイ湖サンクチュアリチーフ)、手嶋洋子(根室市春国岱原生野鳥公園チーフ)、有田茂生(鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリチーフ)、柴田英美(鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ)の8名が出席。
【欠席】 小清水、十勝支部、江別支部、苫小牧支部、函館支部
【配布資料】
(1)2012年度 日本野鳥の会北海道ブロック協議
総会議案
(2)<資料1>2012年度日本野鳥の会北海       道ブロック協議会総会参加者名簿
(3)<資料2>ブロック規程
(4)<資料3>ウトナイ湖ネイチャーセンター支援 募金について
(5)<資料4>根室フレシマの風力発電所(仮称)建設計画への対応について
(6)<資料5>「根室フレシマ風力発電所(仮称)環境影響評価方法書」に対する意見書
(7)<資料6>新聞記事
(8)<資料7>「(仮称)伊達風力発電事業拡張計環境影響評価方法書」及び計画に対する意見書

1.開会の挨拶
(1)小樽支部 梅木賢俊支部長
現在、野鳥を取り巻く環境が厳しくなってきている。例えば、東北の震災後の風力発電関連の問題など。今回はそれらを中心に話し合っていきたい。
(2)北海道ブロック連絡協議会 藤巻裕蔵代表
風力発電については、北海道ブロック協議会全体で協力して取り組むとともに、財団事務局とも協力して取り組んでいきたい。
(3)公益財団法人日本野鳥の会 佐久間仁理事
1)現在、風力発電の計画中止や変更に関する要望書が矢継ぎ早に提出されている。10月1日より、風力発電に関する環境影響評価書の基準が変わるので、今後は駆け込みで風力発電の計画が増える可能性があり、これに対して適切なタイミングで対応していきたい。また、省エネ型の生活への転換と、原発への依存度の低減を財団事務局のエネルギーに対する考え方として決定した。
2)財団事務局は、収入の32%が受託事業、15%が
寄付、25%が物販、会費15%という不安定な財政にある。今年度も2000万円程度の赤字欠決算を見込んだ予算を組んでいる。今後は確実に収入を得られる事業を進めていきたい。
3)公益財団法人日本野鳥の会は来年度80周年を迎える。その準備委員会設立を検討中であり、ぜひ、支部にも協力をお願いしたいと考えている。
4)5月26・27日に東京で連携団体全国総会が開催された。その際、連携団体でネットワークを構築する取り組みを進めていくことを確認した。例えば、ネットワークの一例として「野鳥情報全国ネットワーク」が挙げられるが、現状、支部の半分程が登録しているのみであり、登録されていない支部は登録をお願いしたい。また、連携団体全国総会への出席率が低かったため、ぜひ出席をお願いしたい。
5)休刊となっていた野外鳥類学論文集「Strix」を再度発行し始めたが、売れ行きが不調。購入・投稿などご支援をお願いしたい。
6)財団事務局では、イベント実施時の賠償責任について問題視して、その対策について検討している。支部のイベントでも、主催者が賠償責任を問われる可能性が考えられるため、リスク管理を徹底して行ってほしい。
7)ツバメ調査を開始し、ご協力いただいているが、今後も協力をお願いしたい。
8)ウトナイ湖サンクチュアリの運営へのご協力を引き続きお願いしたい。

2.議事
(1)2011年度会計・活動報告<道南檜山・一戸静夫事務局長より:資料1「2011年度収支決算報告書」参照>
前年度担当より会計収支の報告があり、承認された。
(2)北海道ブロック協議会の組織体制<小樽支部・梅木支部長より:資料2参照>
議長より、協議会の事務局の体制について、@従来通り、輪番制で担当する、A今後は担当事務局の支部長が協議会代表を担当するという2点についての提案があった。
→各支部の意見交換の中で、心構えができるよう、事務局を担当できない支部を特定して、事務局担当支部の順番を事前に決定することが提案された。また、財団事務局から、他のブロックの事務局の運営状況・ブロックの規程に関しての情報提供が行われた。
→小樽支部の梅木支部長が素案のたたき台を作成し、来年度の北海道ブロック協議会の前に各支部に回覧して意見収集を行い、来年度の協議会で最終案を提出することとなった。
(3)2013年度及び2014年度事務局担当支部<小樽支部・梅木支部長より:資料1「日本野鳥の会北海道ブロック協議会 総会開催状況」参照>
1)2013年度:釧路支部
2)2014年度:室蘭支部
3)2016年度:旭川支部
(4)財団事務局からのお知らせ
1)ウトナイ湖サンクチュアリ
・昨年度、北海道ブロック協議会より10万円をご寄附頂いた。
・ウトナイ湖サンクチュアリ設立30周年記念イベントでは室蘭支部・十勝支部・苫小牧支部にご出席頂き、無事終了した。
・北海道千歳市の菓子工房「morimoto」の商品『ハスカップジュエリー』の売上0.1%をご寄附頂くこととなった(年間約20万の見込み)。
・ウトナイ湖サンクチュアリ賛助会の新しいパンフレットが完成したので、各支部の探鳥会などで配布をお願いしたい。
2鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ
・鶴居の事業内容について紹介
・小冊子「こんにちはタンチョウ」の紹介・配布
・富士通株式会社のカメラを活用して冬の採食状況を調査中であることを報告
3)根室市春国岱原生野鳥公園
・今年度も根室市からの委託事業を基本として運営することについて報告
・株式会社明治の協力を得て作成した小冊子「根室の野鳥」の紹介
・補修工事により春国岱橋通行止め(7月16日〜8月31日)についてお知らせ
4)野鳥保護区グループ
・野鳥保護区の買い取り状況の報告
・シマフクロウへの給餌事業について報告
・フレシマ風力発電問題について報告<資料4〜6>→「発表(5)参照」
(5)2011年度の各支部活動報告<総会議案参照>
「2012年度 日本野鳥の会北海道ブロック協議会 総会議案」の各支部の活動報告の資料を各自で確認しておくよう議長よりアナウンスがあった。

3.発表
(1)宗谷のカワウの繁殖について<道北支部・疋田編集担当より:資料1「幌延町のカワウコロニーについて」参照>
1999年以降カワウが確認されるようになり、現在は1000羽以上が確認されている。春に渡来する。現在は、カワウによる被害は報告されていないが、各地域における生息状況や対策について情報があれば教えてほしい、との話があった。
→根室、旭川、小樽、室蘭からカワウの生息状況について情報提供がされた。室蘭で過去に繁殖していた事例はあるが、現在の繁殖事例はなく、対策についての有力な情報は得られなかった。
(2)風力発電について<札幌支部・山田支部長より>
石狩市厚田区・石狩市と小樽市にまたがる石狩湾新港地区などで風力発電計画が進行している。また、石狩湾新港地区で「グリーンパワーインベストメント」による洋上風力発電の建設計画も進行している。現状、支部で対応できる範囲を越えている。今回、財団事務局は原発に対する見解を示したが、さらに再生可能エネルギーに対する考え方も具体的に示す必要がある、との報告がされた。
(3)伊達風力発電事業拡張計画環境影響評価方法書の意見書<室蘭支部・篠原支部長より:資料7参照>
5年前に伊達市と室蘭市の間で風力発電事業が進行。当初の計画は縮小され、その後、開発側による影響調査が実施されている。その結果には5機の試運転の結果、ワシ類は1羽も衝突していないという結果が示されていたが、実際には、ワシ類が風車を避けて利用していることが支部の調査から分かっている。さらに、開発側の拡張計画の環境影響調査結果が事前の通知もなくネットで縦覧され、数日で見られなくなっていたため、開発側から直接方法書を入手するという事態も発生した。開発側は、知らない内に既成事実をつくり計画を進めていくため、機敏に対応する必要がある。当初は、バードストライクのみに注目した意見書を提出していたが、振動・騒音・低周波が生物に追い出し効果などの影響を与えること、風力発電の建設は補助金を得ることが目的であって儲かるものではないこと、風力発電によって得られる電気は周波数や電圧が他と異なるため扱いにくいこと、なども含めて意見書として出していく必要がある。また、私たちは風力発電に関してさらに勉強し、伝えていく必要がある、との提案がされた。

(4)ウトナイ湖ネイチャーセンター支援募金<室蘭支部・堀本事務局長より:資料3参照>
数年前よりネイチャーセンターを廃止するか否かについて議論がされているが、ネイチャーセンターを支援するため、資料の枠内のチラシをイベント参加者に配布し、「保護団体に寄付し、保護団体の活動を通じて皆さんの鳥への感謝の気持ちを還元していこう」と募金を位置づけ、寄付を募っている。今後は、北海道ブロック協議会の他支部にもこの動きを広げ、さらには、本州の支部の賛同も得ていきたい、との提案がされた。
→佐久間理事より、ネイチャーセンターの運営の現状など、財団事務局の今後の方針について述べた。また、佐久間理事より、支援してもらえるような企業を紹介して頂きたい旨、中村チーフレンジャーより、法人からの寄付を募っていくことを伝えた。
→室蘭支部より、サンクチュアリは利益を上げることが目的の施設ではないこと、財団事務局でのサンクチュアリの窮状を全国に訴えるような働きかけが少ないことが指摘された。根室支部より、世論や財団事務局を動かせるよう、北海道ブロック協議会で現状を把握して、各支部でキャンペーンを展開していくことが提案された。

(5)根室半島(フレシマ)における風力発電施設の建設問題について<根室支部・阿部支部長より>
松本チーフレンジャーより、風力発電によって影響を受ける可能性のある鳥類、電源開発株式会社の調査結果、財団事務局と根室支部より意見書を提出について報告し、各支部に調査への協力を依頼した。根室支部・阿部支部長より、フレシマの原生の自然の素晴らしさや、洋上調査や陸上調査の結果について述べ、財団事務局の力を借りながら、北海道ブロック協議会で協力して風力発電に対応していく必要があることを伝えた。
→調査対象種はオジロワシだけに絞るのではなく、全ての種を対象にする必要がある、北海道電力や北海道に直接交渉する必要があるなどのアドバイスがあった。
→決議文に「小清水」を追加する、決議文の「会長」を「代表」に訂正する、電源開発株式会社・根室市・報道各社に決議文を送付することが確認された。

(6)その他<オホーツク支部・川崎支部長より>
網走市能取湖西側付近で「株式会社ユーラスエナジージャパン」による風力発電の建設計画が持ち上がり、駆け込みで報告書の縦覧があり、財団事務局・自然保護室の葉山氏・浦氏の協力を得て意見書を提出した。意見書は財団事務局のホームページに掲載されている。風力発電への対応は支部の限界を超えているというのが現状である、との報告があった。

4.講演「スズメの生息数は回復したか」
北海道ブロック協議会代表の藤巻裕蔵氏より、「」函館・室蘭・苫小牧・札幌・江別・岩見沢・夕張・美幌・砂川・上砂川・滝川・帯広・釧路の市街地のスズメの個体数の変化と、その変化の要因についての講演が行われた。

5.懇親会・早朝観察会
(1)1日目の夕食時に、同会場内で懇親会が開かれた。
(2)2日目の朝食前に、会場周辺で探鳥会(路程2km)が行われた。

(保全プロジェクト推進室 鶴居・伊藤サンクチュアリ/柴田英美)

総務室より

■2012年度連携団体全国総会報告■

【日 時】 2012年5月26日(土)13時〜 27日(日)12時
【会 場】 晴海グランドホテル(東京都中央区晴海)
【参加者】 72名:連携団体(41団体、44名)、財団(28名)
【スケジュール】1日目(26日(土))
13時00分  理事長開会宣言
        会長挨拶
13時15分 ●東日本大震災関連の報告
財団の取組み(佐久間常勤理事)
福島県における取組み(普及室/箱田敦只)
放射性物質の野鳥への影響調査(自然保護室/山本裕)
講演:自然エネルギーの現状と問題点(ウインドコネクト梶^斉藤純夫)
●全国総会の進め方(意見交換)
●探鳥会保険の今後のあり方(意見交換)
●特別報告
愛玩捕獲全面禁止の成果(京都支部/中村桂子)
17時30分  1日目終了
18時30分  懇親会

2日目(27日(日))
 6時30分 早朝探鳥会
 9時00分 2日目開会

●連携団体からの報告
 写真撮影マナー(千葉県/阿久津斉)
 野鳥情報提供(徳島県支部/三宅武)
 外来種カナダガンの対策(神奈川支部/石井隆)
●意見交換
 総合学習への取組み(京都支部/中村桂子)
 会員減少、財政健全化(会員室/安藤康弘)
●連携団体からの報告
 絶滅危惧種事業と支部との関わり(NPO法人十勝支部/室瀬秋宏)
 カンムリワシ生息数調査(西表/衣斐継一)
津軽半島の風力発電計画の現状、脱原発(弘前支部/片桐康雄)
12時00分  閉会
【第1日目】
■佐藤理事長の開会宣言、柳生会長挨拶■
 午後1時、佐藤理事長による開会宣言、柳生会長の挨拶に続き2012年度連携団体全国総会が開始された。

■東日本大震災関連の報告■
財団から、東日本大震災関連の取組みとして、財団の取組み、福島県における取組み、放射性物質の野鳥への影響調査について報告された。
●財団の取組み(佐久間常勤理事)
 集まった義援金(153件326万円)は被災会員(53名)へのお見舞い、当該地域支部等(6支部等)への活動資金として使用した。
この他、会費免除(75名)、及び観察用機器等の希望者への提供を行った。
●福島県における取組み(普及室/箱田)
原発事故以降、野外活動が制限された福島の子ども向けに実施した「身近な野鳥ティーチャーズガイド講習会」(昨年11月実施)及び「栃木、福島、白河3地域合同探鳥会」(5月19,20日)について報告、参加者の声として、講習会は「震災以降、久しぶりで仲間に会えて楽しかった」「室内で出来るプログラムはありがたい。学校で活用していきたい」、合同探鳥会は「単独より刺激になる」などの意見が紹介された。
●放射性物質の野鳥への影響調査(自然保護室/山本)
今回の原発事故で放出された放射線量は90万テラベクレルと言われているが、野生生物への影響は未だ不明、今後は、基礎的情報の収集とモニタリングが重要となる。
チェルノブイリ事故では、仏・米の科学者がツバメに顕著な影響が見られるという研究成果を発表している。
全国調査の対象にツバメを選んだ理由の一つはここにあり、もう一つの理由は、ツバメそのものが減っていることに一般の関心を持ってもらいたかったからである。今後、水鳥とツバメの調査を行っていく。水鳥は高濃度汚染水が大量に海に流出、食物連鎖を通じ体内に蓄積する生物凝縮を調査する。ツバメ調査は会員以外からも広くデータを集める全国調査とし、3年間継続、当面7月までのデータを集計して8月に分析結果を公表する。
●講演:自然再生エネルギーの現状と問題点(ウインドコネクト株式会社/代表取締役斉藤純夫)
氏は永らく民間の石油会社に勤務、その後、独立してウインドコネクト株式会社を設立(2011年)、「自然再生エネルギー開発のあるべき姿として、地域に根差した開発、皆が納得する開発」を提唱、豊富な経験に基づき自然再生エネルギー開発の現状と問題点について分りやすく講演された。

【講演要旨】
原発事故のあと、自然再生エネルギーやるべしと声高に叫ばれているが、無理をすると乱開発になり、原発と同じ構図になりかねないと警鐘を鳴らす。
特に、太陽光発電は予想以上の価格で電気を買取る固定価格買取制度がスタートしたことで、ソーラーバブルが現出しつつある、また風力発電は、10月からスタートする環境アセスメント実施の間隙を狙った駆け込み開発、焦った開発が見られる。どちらも大企業が押し寄せての開発で、負の側面が出始めている。
 風力発電では、補助金ほしさの乱開発の結果、中止に追い込まれたり、経営悪化に陥ったりする例が出始めている。氏は、大企業の論理は一件正しそうに見えるが、自分で自分の首を絞めることにもなりかねない、丁寧な開発が大切と説く。
現在は世界的な風力発電ブームにあるが、風力発電大国の米国、中国は砂漠など何もないところに建設している、エコでもなんでもなく安いから推進しているので日本とは様子が異なる。また、不安定な風力発電には補助的な火力発電が必要で、風力発電先進国のデンマークでも、風力発電への依存度はせいぜい20%程度でしかない、と風力発電の限界を示す。
最後に、自然再生エネルギーの開発は合意形成をしつつ進めていくのが早道、適材適所、風が吹くところに風力を、日照の強いところにソーラーを、が肝要、自然再生エネルギーは長く丁寧にやっていくもの、脱石油、目指せ国産エネルギーと締めくくる。

■全国総会の進め方■
●総会のあり方及び連携団体と財団との関係についての意見交換が行われ、開催日は各支部の意見を伺い再検討するとされたが、財団から提示した「日本野鳥の会連携団体全国総会」開催要領(案)は了承された。
神奈川支部:支部に関係のある案件は支部の意見を聞きながら丁寧な対応を、また本部は支部の実態を理解する努力をしてほしい。
十勝支部:総会日程の見直し、総会への財団からの参加者増、及びメーリングリストの早期開設を要望する。
財団:支部に関係する重要な案件は十分支部の意見を聞きながら進めていく、また支部の実態を理解して欲しいという件は前向きに検討する。開催日については、「前回総会の決定事項であり安易に見直す必要はない」「意見を聞いていてはまとまらない」などの意見もあるが、「探鳥会や総会など他のイベントと重なり日程調整出来ない」と、開催日に起因する不参加理由が多く寄せられた。広く支部の意見を伺ったうえで再検討する。

■探鳥会保険の今後のあり方■
●探鳥会保険について、現状と問題点について意見交換が行われた。
探鳥会保険は、「探鳥会の開催等普及活動」を推進するため、また支部等との連携の証の一つとして、財団負担で契約している。保証は、探鳥会リスクに対し最低限のレベル、このため内容は決して十分ではない。また、この制度を利用していない支部もあり、保険なしで探鳥会を実施していることも考えられる。
 最近の保険適用は、子供、年寄を中心に年5件程度である。高齢化が進む中、いつ大事故が起きてもおかしくない。良かれと思って実施した探鳥会が、裁判などと悲惨なことにもなりかねない状況にある。
このようなことにならないよう、最近のボランティア事故事例、探鳥会におけるリスク、現行の保証内容を理解してもらった上で適切な見直しを図りたい、と参加者の意見を募る。
支部で独自契約、財団の契約に加え支部で上乗せ、ボランティア保険を追加、自治体の制度を利用、共催先の保険を利用など支部の対応は様々であり、支部の意見・実態を調査したうえで探鳥会保険の今後のあり方を財団で検討することとした。

■特別報告■
●愛玩捕獲全面禁止の成果(京都支部/中村桂子)
 密対連発足以来活動を進めてきた愛玩捕獲全面禁止がやっと実現した、この間の活動について次のとおり報告された。
 全国野鳥密猟対策連絡会は、1992年に日本野鳥の会「かすみ網対策会議」を移行して発足した。3つの活動目標、@現行法に基づく野鳥の密猟取締りの強化、A野鳥の輸入の即時禁止、B野鳥の愛玩飼養制度の廃止を掲げ密猟防止に取組んできた。
この間、@は1999年、Aは2000年に達成、最後まで残っていたBが密対連発足20年に当たる今年達成できた。
野鳥捕獲は禁止されたが、捕獲用の道具は今でも販売されており、飼養中のメジロは引続き飼うことができる。ただし、飼育中のメジロは毎年登録更新が義務化されたので、今後は、市町村に更新個体数の確認に行くなど支部の皆さんには引続きの応援をお願いしたい。野鳥の密猟対策はひと山越えたが、これからが大変と締めくくられた。

■その他自由意見■
筑後支部:冬鳥が減ったがどうしてかという電話が多い。会員を増やす好機ととらえ丁寧に対応している。本件に関しては諸説色々あるが、新聞社、市民などの質問に答える材料を持っておきたいが、財団からの情報が何もないと苦言を呈す。
自然保護室: HP、支部ネット通信に状況をまとめたものを掲載したが、原因究明、情報発信力が不足していた。
 情報収集力を高めるために野鳥情報ネットワークを作っているが、加入は半数の支部に留まっているので積極的な加入をお願いしたい。
財団:全国に90の支部を有するのは他団体にはない強み。冬鳥ではこのネットワークを通じて情報を収集した。今後、当会のメリットを最大限に生かし、タイムリーにマスコミを通じて情報発信し、当会の知名度を高めていきたい。

【第2日目】

■連携団体からの報告■
●写真撮影マナー(千葉県/阿久津斉)
 立木の伐採、餌付け、止まり木などはあたりまえ、と最近の撮影マナーの悪さには目に余るものがある、と具体例に基づき苦言を呈す。
 また、野鳥の会は本件に会をあげて取組むべき、どう取組むかを財団で検討し全国の問題として音頭をとるように、また、HP・会報等でマナーを守ろうと訴えているが効果がないのでは、と財団の見解を求める。
財団:写真撮影の悪さはブロック会議でも話題にのぼるテーマである。また、財団が進めている「や・さ・し・い・き・も・ち」のPRでは効果が薄いことも認識している。今日の報告でかなりひどいことになってきたことも分かった、担当を決めて何らかの対策を考えたい。
京都支部:モラルの問題、道路を占有したら警察に通報、地域課の巡回は効果的と割切った対応が必要である。などの意見も出された。

●野鳥情報提供(徳島県支部/三宅武)
 鳴門海峡のイカナゴが豊漁でウミスズメが3月初めから5月まで、多いときで3千羽以上観察された。海温が1度上がるとプランクトンは種類・量が倍になると言われているからか。絶滅危惧種TAがこれほど見られていいのだろうか、と全国の動向を訊ねる。また、ウトウも昨年まではせいぜい2〜3羽程度しか観察されなかったが、今年は2〜30羽ほど観察された。

●外来種カナダガンの対策(神奈川支部/石井隆)
 ニュージーランドでは60羽のカナダガンが数万羽にまで増えている、英国、独国などヨーロッパでも増えすぎの被害が報告されている。環境の異なる日本で同じことが起こるかは不明だが、事前の対策が必要と訴える。河口湖に50羽いるが、14羽を捕まえた。捕獲過程で色々な問題が明らかになってきた。本来、外来種はいてはいけない種だが、特定外来種は法律で排除できるにも拘らず、要注意外来種は、捕獲申請、捕獲許可と鳥獣保護法で守られ予防原則が働かない。要注意外来種の段階で対策を打たなければ意味がないのにできないのが実状であり、神奈川県のアライグマが良い例である。5年間で2億円もの予算を支出し、毎年千頭以上を捕え10年で根絶と言っているがここまで増えては無理だろう。繰返しになるが、増えてからでは遅いのに法律の壁がある。有害捕獲は、生態系への被害が明らかになって初めて認められ、個体数が少なければ影響も少ないとして認められない。また、被害届を誰が出すかも重要で、NGOに対する許可例は殆どないため市町村に出してもらうが、被害が予想されるだけでは認められないし、学術捕獲は必要最小限の捕獲しか認められない。行政単位で運用が異なるなど、制限の多さ、問題の多さを訴える。
自然保護室:外来種法は施行5年目、今年から来年にかけ見直しが行われる。要注意外来種に対する予防的防除を加えるように働きかける。また、生物多様性の国家戦略の見直しでも予防原則の言葉を加えるよう取組む。その際、神奈川支部の事例を活用させてもらう。
ソウシチョウ、ガビチョウは有効な捕獲方法がないのが悩みである。ソウシチョウは、分布を広げているだけでなく、元からいた種の中で一番個体数の多い種になるなど問題が深刻化しており、真剣な取組が大切と考えている。

■意見交換■
●総合学習への取組み(京都支部/中村桂子)
 文科省が提唱する長期滞在型自然体験教室に取組んでいる支部があれば、よいアイデアを教えてほしい。また、長期滞在でないが、小学校高学年で実施の総合学習で4年は川、5年は自然体験学習、6年はツバメをテーマに学習会を10年位やっているが、支部ではバードウオッチング、巣箱つくりが中心、他にアイデアがあれば教えてほしい。
東富士:平成15年から5年間「野鳥を通じ富士を学ぶ」を目標に「東富士キッズ隊」を立上げゴミ問題に取組んできた。巣材にビニールが使われ、親鳥が足をとられている姿を見たことからゴミ問題に取組んだ。10名から始め5年で19名までに成長、今では大学生でゴミ問題に取組んでいる会員もいる。
 「東富士キッズ隊」は3年間のブランクのあと今年から8名で再開、今回は小学校3年から募集、3年間継続する。なお、会員に先生がいる場合、横のつながりを活用しない手はない。色々な場面で非常に役立つ。

●会員減少、財政健全化の取組(会員室/安藤康弘)
 会員数は2000年をピークに減少傾向にある。原因の一つは、情報が会員の中だけに限定され、外への発信が少ないことにある。メッセージが会員以外に届かないため、裾野が広がっていかない。10年前に総括したことがあるが、外への広報が重要である。
 会員増と財政の安定化について、会員が増えれば財政が安定するのか、と疑問を呈す。会員1人増やすのには6〜7千円必要であるが、会費5千円のうち野鳥誌等の諸経費を差引くと手元には2.5千円程度しか残らない、3年間会員でないとペイしない。これに反し寄付は、ほぼ全額が手元に残る。利益率からだけみれば、寄付が優位といえる。言い換えれば、会員増が財政安定に必ずしも一致しないのではないか。会員とは何か、財政安定とは何かを具体化する時期にきた。漠然と会員増を訴えるのではなく、ターゲットを明確にしないと適切な手が打てない、方法論が立てられない。最近は寄付収入が伸びてきており、財政安定化の一助に寄付収入を増やしていくことに注力している。
財団:会員と寄付者の垣根が曖昧になってきている。
十勝支部:会員増を求めないなら求めない、と態度を明確にしてほしい。
室蘭支部:組織は、人が財産、目先のコストだけではない。寄付金増の源泉は、会員数である。
神奈川支部:会員数と影響力は無関係と考えられる。
大阪支部:野鳥の会という冠がないと支部は何もできない、影響力が持てない。このことを良く認識して会を盛り立てていこう。
などの意見が出された。

●絶滅危惧種保護事業と支部との関わり(NPO法人十勝支部/室瀬秋宏)
絶滅危惧種保護事業の財団と支部等との関係が効率的ではないと野鳥誌執筆者の一人、山本澄夫氏の例、NPO法人釧路探鳥保護グループとの連携について苦言を呈す。少ない人数で、同じ目的の事業を進めるのだから、少なくとも企画実施段階で関係支部、参加希望支部とは連携をとって欲しい、連携をとるシステム、例えばメーリングリストの一元化などの構築を望む。

●カンムリワシ生息数調査(西表/衣斐継一)
西表は地球温暖化の影響を一番受けている。2005年から2009年にかけ発生した大型台風の影響でカンムリワシなどの繁殖が阻害され、以前に比べ半数位に減った。特に幼鳥が減少しているのが懸念される。環境省の調査があったが、幼鳥でなく成鳥の調査と的外れのものであった。財団でもカンムリワシへのアプローチをお願いしたい。
保全プロジェクト推進室:タンチョウの保護事業は、山本澄夫氏の意向に沿いながら進めてきたつもりだが、若干、思い違いがあるのかもしれない、意向を確認する。
 カンムリワシは、室で扱っていない種のため、まず情報収集をした上で今後何ができるかを考えていきたい。
十勝支部:山本澄夫氏との信頼関係ができていない、意向に沿った事業になっていないのではないか。連携団体と言いながら、財団が勝手に行い、支部はおいてけぼりになっていないか。
神奈川支部:財団は支部と関係したがらない、怖がっているのではないか。オール野鳥の会でやることは、支部の意見を聞いてほしい。連携団体と言いながら、連携されていない感がする。財団しかできないものは財団だけでやればいい、もやもやさせないでほしい。
根室支部:財団とタンチョウ保護研究グループ(NPO法人)、財団と鶴居との連携が悪い、目的は同じなのだから、円滑に進むようにしてほしい。
などの意見が出された。
●津軽半島の風力発電計画の現状(弘前支部/片桐康雄)
 青森県は風力発電日本一の県、その90%以上が野辺地から下北半島に集中している。この度、十三湖周辺及びその南側に80基の大型開発計画(ウインドファームつがる、津軽十三湖)が持ち上がった。建設予定地は環境省の保存すべき地形設定地や重要野鳥生息地(IBA)にあたり、日本気象協会の環境影響評価を受けている。環境影響評価は審査委員会(支部からも委員を出している)で審査されるが、支部選出委員が設置位置の見直しを要請したがNO回答、野鳥に影響を与えない開発の実現に皆さんの知恵を拝借したい。
室蘭支部:風力発電は、音、障害物以上に低周波に注意しなければいけない。クロガモが4キロ離れたという海外の例もある。低周波は未知の世界だが、生態系の破壊が行われることに注意しなければならない。環境省は、環境を守りながら開発すべきなのに、自然エネルギー推進の観点からこのことが抜けている。我々が果たす役割は重要であり、個別の対応は押し切られてしまうので、全国的な取り組みが必要である。
自然保護室:十三湖は環境影響評価の縦覧あり、支部と情報共有した。風発ファンドの支給要件に地元合意があり、地元ともめると立ち行かなくなる。このためにも、言うべき意見を述べることが大切である。
国家戦略のパブコメに皆さんも意見を出してほしい。
弘前:砂浜に沼が点在するが、これは砂地の下に固い層があるためである。ここにパイルを打つと水が枯れてしまうなど、環境破壊ははかり知れない。当会だけでなく、他の関連団体と連携して対応してほしい。
島根支部:環境影響評価は行ったが、建った後ははげ山となり、生態系が一変した。何がなんでも反対しないといけない。
熊本支部:今日のような情報があればもっと適切な意見が言えた。
などの意見が出された。
● 脱原発宣言(西表/衣斐継一)
一番小さい支部が、いち早く脱原発宣言を行った。残念ながら、九州・沖縄ブロックでの宣言には至らなかったが、財団、他支部にも連携してほしい。
十勝支部:団体として宣言すべきである。
財団:事務局で案を作り、理事会に諮り、評議員会の意見を聞くステップを出来るだけ早い機会に行う。
鹿児島:脱原発に異論はないが、温暖化に対する見解はどうか。低開発国が原子力発電を使用せずに経済発展をどうサポートするかを考えないと、脱原発だけの問題ではない。
財団:原発に代わるエネルギーとして自然再生エネルギーが考えられるがそこに移行するには色々な課題もあることが分かった。我々の立場は、クリーンエネルギーは推進すべきだが、野生生物に影響のあるもの、甚大なものはすべきでない。
十勝支部:クリーンエネルギーも自然環境破壊があるので、電力消費社会からの脱却が肝要、家庭の節電が大切である。
などの意見が出された。
●その他意見交換
兵庫から、被災者支援のための全国一斉探鳥会(11月22-24)の提案があったが、この時期は鳥インフルエンザ発症の可能性があり時期が悪い(鹿児島)、貴重な提案だが持ち帰って検討したい(埼玉支部)などの意見があり、内容を文書にしてもらうこととし、全ての予定を終了した。
■佐藤理事長の閉会挨拶■
12時、佐藤理事長による閉会の挨拶で2012年度連携団体全国総会が閉会された。

(総務室/奥田 秋穂、小川 富由美)

事務局からのお知らせなど

総務室より

「支部報とりまとめ発送」次回日程のご案内

次回の支部報取りまとめ発送は、2012年9月18日(火)となりました。支部報は下記要領でお送りください。
(取りまとめ発送の詳細については、支部ネット通信2012年4月号をご覧ください。)

送付〆切:9月14日(金)必着
送付部数:110部
※東京は130部、お願いいたします。
※神奈川、埼玉、奥多摩、千葉県は120部、お願いいたします。
※ご事情により必要部数に満たない場合は、こちらで発送先を調整させて頂きます。

【支部報の受付、お問い合わせはこちらまで】
〒141-0031東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル3F
(公財)日本野鳥の会総務室 総務グループ (担当;小川、鈴木)
TEL:03-5436-2620、[email protected]


■支部名称等変更のお知らせ■(敬称略)

【代表者の交代(※)】
●日本野鳥の会南伊豆(2012年1月1日より)
  【新】 鈴木 弘一
  【旧】 大隅 久
※代表者の呼称は支部長となります。

【事務局長の交代(※)】
● 日本野鳥の会遠江(2012年4月1日より)
  【新】 松岡 弘起
  【旧】 片桐 和雄
【事務局長の住所変更(※)】
● 日本野鳥の会長崎県支部(2012年7月9日より)
■共有名簿の訂正■
【事務局長のメールアドレス修正】
● 日本野鳥の会もりおか
  【正】 … @fj8.so-net …
  【誤】 … @fj8.xo.net …
※個人情報保護のため、メールアドレスの修正部分のみを掲載しております。

※ご住所・お電話番号に関しては、本紙には掲載いたしませんので、ご連絡の際は下記担当へご相談ください。)

総務室総務グループ TEL:03-5436-2620/FAX:03-5436-2635

(総務室 奥田 秋穂、小川 富由美)


会員室より

■会員数■

 8月1日会員数38,676人(対前月-76)会員数は先月に比べ76人減少しました。
 7月の入会・退会者数の表をみますと、入会者数は退会者数より75人少なくなっています。会員の増減は、入会者数と退会者数のほかに、会費切れ退会となった後に会費が支払われ会員として復活した人数によって決まります。7月の入会者数は109人で、前年同月 入会者100人に比べ9人増加しました。 また、7月の退会者数は184人で、前年同月の退会者158人に比べ26人増加しました。

 表1.7月の入会・退会者数

※会費切れ退会となった後に会費が支払われ会員として復活する方がいらっしゃるため、退会者数の年度累計は、実際の退会者数とずれた数字となります。このため、退会者数合計については年度末の集計後にお知らせいたします。

●都道府県および支部別会員数
 野鳥誌贈呈者数を除いた数を掲載します。

 表2.都道府県別の会員数(8月1日時点)

備考:その他は海外在住の会員を示します。

 表3.支部別の会員数(8月1日時点)

備考:支部別の会員数の合計は、都道府県別の会員数の合計と異なります。これは、本部型(青い鳥)会員や支部に所属されていない個人特別会員が支部別の会員数に含まれないためです。

(会員室/沖山展子)


■訂正とお詫び■

支部ネット通信7月号(第100号)支部報 保護・調査記事関連トピックスNO.616の一部記事の出所に誤りがありましたので、お詫びして訂正します。

4ページ
正:●2012/5-6 鳥取県
・オシドリ生息状況(吉田良平)
・ブッポウソウ オスは同じ巣箱に戻ってくる(なんだ&よすみ)
●2012/5-6 島根県
・飯梨川河口周辺のカモ(元吉洋子)

誤:●2012/5-6 島根県
・飯梨川河口周辺のカモ(元吉洋子)
・オシドリ生息状況(吉田良平)
・ブッポウソウ オスは同じ巣箱に戻ってくる(なんだ&よすみ)
5ページ
正:・オシドリ生息状況(吉田良平)
     ・
(鳥取県「銀杏羽」NO121,P10〜12)

・ブッポウソウ オスは同じ巣箱に戻ってくる(なんだ&よすみ)
     ・
(鳥取県「銀杏羽」NO121,P16〜17)

誤:・オシドリ生息状況(吉田良平)
     ・
(島根県「スペキュラム」NO147,P10〜12)

・ブッポウソウ オスは同じ巣箱に戻ってくる(なんだ&よすみ)
     ・
(島根県「スペキュラム」NO147,P16〜17)

■支部ネット担当より

梅雨も明け、蒸し暑い日が続きますが、いかがお過ごしですか。8月は戸外での熱中症だけでなく屋内での熱中症も多かったようです。無理のない節電を心掛けたいと思います。
今後とも、ご愛読の程よろしくお願いいたします。

<お知らせとお願い>
支部ネット通信101号をお届けします。
200号に向け新たな一歩を踏み出した支部ネット通信を、より充実した内容とするため、皆さまから忌憚のないご意見、こんな情報がほしい、こんな情報はいらない、などを伺う予定でいます。
アンケート実施の際はご協力をお願いします。

支部ネット通信 第101号
◆発行
日本野鳥の会 2012年8月24日
◆担当
総務室 総務グループ 奥田秋穂/松井江里奈
〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23
丸和ビル
TEL:03-5436-2620
FAX:03-5436-2635
E-mail:[email protected]