宮城のツバメと被災地・福島――2012年夏


福島第一原発と角田市、南相馬市、飯舘村

当会では、チェルノブイリの例に見られるように、福島第一原発事故による放射性物質の影響がツバメに出ていないか、当会の支部会員に呼びかけ情報を収集しています。このたび、「尾羽の片方が短いツバメが複数いる」との情報が寄せられ、7月に調査しました。


地盤沈下した水田が野鳥の生息地に(南相馬市)

尾が不均一な宮城県角田市のツバメ

尾羽の片方が短いツバメが確認された場所は、福島第一原発からは約60㎞離れた角田市内の駅舎です。周辺には水田が広がり、駅舎の通路内にツバメの巣が30巣ほどありました。
巣近くの空間線量は平均0.1μSv/hほどでさほど高くない値です。ほどなく巣に戻ってきた親鳥は、確かに片方の尾羽が短く不均一な形でした。尾羽の異常個体は少し離れた場所でも見られ、短時間のあいだに2羽を確認しました。
情報を寄せてくれた当会会員のTさんによると、子育てピーク時には市内で7羽の尾羽の不均一個体が観察されたとのことです。巣の汚染状況を調べるために古巣5個を分析したところ、2巣からそれぞれ7200、6700Bq/kgと比較的高い線量の放射性セシウムが検出され、残りの3巣は平均2100Bq/kgほどでした。
ツバメは一度羽が抜け、生え換わる途中で一時的に尾羽が不均一になることがあるのですが、同時期にこれだけ多くの尾羽の不均一な個体が確認されたのは珍しいことです。この原因が放射性物質による影響とは断定できませんが、巣も汚染されていることから今後注意していく必要があります。

無人化した原発被災地は遷移が進んでいる

南相馬市小高地区は今年4月に警戒区域から解除されました。瓦礫処理の問題もあり復旧は手つかずのままです。海岸近くの広範囲に地盤沈下した場所は、湿地へと変貌し、300羽を超えるサギ類やカルガモを確認しました。
飯館村は、全村民が避難し田畑も放置されているため、田畑は草地へと変化し、山沿いの人家は森に覆われつつあります。雑草の繁茂する田畑ではキジなど草地性の野鳥が確認され、遷移が進んでいます。


不均一な尾羽を持つツバメ


草木に覆われる無人の家屋(飯舘村)


駅舎で繁殖するツバメ(角田市)

(写真/安藤康弘)