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早急な法整備を!急増するメガソーラー施設
文=浦 達也 自然保護室
①メガソーラーの急増に、送電設備が追いつかず、生まれた電力が有効に活用されないという事態も起こり得る。
②高知県土佐清水市のメガソーラー反対運動ののぼり旗。自然災害によるパネルの破損などが懸念されている。(写真提供:環境エネルギー政策研究所)
表1 2012年の「固定価格買取制度」導入後、メガソーラーによる発電量は急増し、特に2013年は4月~7月の4か月で、制度導入以前の累計の2倍に近い発電量に達した。
メガソーラー建設ラッシュの背景
ここ最近、新聞紙上などで、大規模な太陽光発電施設(以下「メガソーラー」)の建設によるトラブルが報じられています。その内容は主に「近隣住民には事前に何も知らされず、ある日突然メガソーラーが建設されたことで、親しまれていた自然や景観が損なわれてしまった。森林伐採による土砂災害などへの不安、電磁波や気温の上昇からくる健康への不安が高まっている」などです。こうした状況が起こっている背景は、非常に複雑です。
メガソーラーは、再生可能エネルギーの導入促進のために2012年に国が開始した「固定価格買取制度」以降、建設が急増しています(表1)。この制度は「太陽光、風力等などの〈再生可能エネルギー〉で発電された電気を、一定期間、国が定めた固定価格で電力会社が買い取る」というものです。事業者はメガソーラーの建設が許可された時点の買取価格(1年ごとに見直し)で、20年という長期間、安定した収益を見込めるのです。この制度により、他の電源に比べて設置基準の規制が少なく、建設費用も安価なメガソーラーが、新規参入の事業者によって、次々と建設されるようになりました。
太陽光発電は天候に左右される不安定な電力です。1日のなかでも発電量の変動が大きいため、こうした不安定な電力を、安定的な火力発電等の電力と一緒に、遠方まで送電するには、一度蓄電設備に蓄えてから送電するシステムが必要です。しかし現状では、全国的にその設備は整備されておらず、各地域の大手電力会社では太陽光による電力の送電を拒否する場合もあり、作られた電力が使われないということもあり得る状態です。
またこれらのメガソーラーでは、当初国が想定していた国産の太陽光パネルではなく、より安価な外国産パネルが使われたため、国内の産業振興に結びつかなかったことや、国が目標としていた太陽光発電量のシェアを達成しつつあることから、太陽光発電の買取価格は年々引き下げられています(表2)。そのため、事業者側は値下がりした買取価格をカバーしようと事業規模を拡大するようになり、より面積の大きなメガソーラーが建設されるようになったのです。
「ゾーニング」や法整備で、適正な場所での建設を
メガソーラーが自然環境に与える影響としては①景観破壊②森林伐採③森林伐採による土砂災害の発生④土地利用の変化による動植物の生息地破壊等があります。一番の問題は、こうした影響が想定されるにもかかわらず、法的な規制がほとんどないことです。
風力発電施設ではバードストライクなどの影響から、環境アセスメントが法的に義務づけられ(「環境影響評価法」)、その費用も事業者が負担します。しかし、メガソーラーは同アセスメントの対象外であり、建設費用も数百万~数千万円と安いため、土地さえ確保できれば、簡易な手続きで建設することが可能です。
環境アセスメントの義務がないため、市民は建設計画を事前には知らされず、地域住民への説明会もありません。気がつけば森林が伐採され、3か月後にはメガソーラーができあがっていた、といった事態が起こります。自治体の情報公開や、こうした問題の顕在化もあって、現在は、建設予定地のあちこちで住民による反対運動も起きています(写真②)。地方自治体では、農地規制や景観保全関連の条例を整備し、無計画なメガソーラー建設を規制しようと対応を始めています。
太陽光発電の将来的な発電量の可能性は大きく、大きなビルや工場、一般家屋の屋上などに設置するならば、ぜひとも導入を進めてほしい電力です。メガソーラーを建設するなら、土砂採掘の跡地や自然が回復していない埋立地など、あらかじめ建設に適した土地を行政が示しておく「ゾーニング」という手法を取り入れるなど、施策が必要です。なにより、CO2削減を目的とする再生可能エネルギーを生産するために、CO2を吸収してくれる森林を伐採するのでは本末顛倒です。再生可能エネルギーと自然環境の保全の両立に向けて、早急に、法的な規制や基準を整備することが望まれます
参考資料:『NEDO再生可能エネルギー技術白書第2版』(森北出版)/『メガソーラー開発に伴うトラブル事例と制度的対応策について』(NPO法人環境エネルギー政策研究所2015年12月発行)