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原発被災後の福島の現状を知るエコツアーを開催
東日本大震災から2年半が経過した今でも、福島県内にはさまざまな課題が山積したままです。
震災の記憶が徐々に風化するなか、原発事故によって引き起こされた自然環境、社会環境の変化や影響を少しでも多くの方に現地で体感していただき、その実情を実際に見てもらうために、当会では今年7月、「福島の原発被災地を訪ねるエコツアー」を開催しました。全国から集まった32 名の参加者とともに、相馬市、南相馬市、浪江町、飯館村、福島市を訪ねました。
復旧が遅れている原発の近接地域
浪江町の海岸部は福島第一原発から約5 km のところにあります。空間線量は高くありませんが、原発に近いために警戒区域となり、今年4月まで復旧作業が行なわれず、津波により壊れた家屋や堤防などが震災当時のままに残っていました。
請戸(うけど)地区の小学校の教室には机やイスが雑然と残り、避難時の騒然とした様子がうかがえました。立ち入り制限が解除されて間もないため、整備も始まったばかりで、瓦礫の撤去作業や行方不明者の捜索も継続中でした。南相馬市の太田川河口周辺や小高(おだか)区浦尻も同様の状況でした。
こうした作業の遅れの背景には、原発に近接した地域では立ち入りが長い間制限されていたことに加えて、瓦礫の受け入れ先がいまだに決まらないことが挙げられます。
汚染された地域での農業の停滞
飯舘村や南相馬市では今も、水田の作付けが禁止されています。作付け禁止を余儀なくされ、3年目を迎えた水田には雑草が茂り、なかには小さな樹木が生えている場所もありました。こうした水田では、草地環境を好むセッカやキジがよく観察されました。放置水田の面積はかなりの規模に及び、回復には長い時間と多額の費用がかかるものと思われます。
一方、農地の除染作業は、暑い中も、継続して行なわれていました。黒いビニールに包まれた汚染土の塊が、農地のそばや、場所によっては人家の近くに積み上げられていました。こうした汚染土の処理問題も、受け入れ先が定まらないまま時間ばかりが経過しています。
松川浦の漁業の今後
相馬市の松川浦は、震災前は風光明媚な場所として知られ、コウナゴ漁やズワイガニ(松葉ガニ)漁、海苔養殖が盛んでしたが、震災により漁船の3分の1が流され、漁業施設が倒壊するなど大きな被害が出ました。
相馬双葉漁業協同組合の方に、地元の漁業の将来についてお話しを伺いました。現在、試験操業を再開し、福島県と漁協で検体のダブルチェックを行なっているそうです。タコやツブガイでは放射性物質は検出されていないものの、カレイやアイナメ、ヒラメでは依然基準値を超えているとのことでした。
今も福島第一原発からは高濃度汚染水が海へ漏出し続けているため、さらなる影響が懸念されます。漁師の方が本来の生活を取り戻すには長い時間がかかりそうです。
今も続く仮設住宅での生活
次いで、仮設住宅を2か所訪ねました。一時的な住まいとして建てられた仮設住宅は狭く、プライバシーの確保がむずかしい面があります。また、震災前に住んでいた地域のコミュニティがそのまま仮設住宅に移ってきているケースは少なく、避難生活の長期化とともに、本来あったコミュニティの機能やつながりが失われつつあります。
震災から2年半が経過していますが、退去できる人が少ないために居住者は減らず、終わりの見えない仮設暮らしのなか、住民同士のトラブルや心のケアが必要となっているケースや、高齢者の孤独死も発生しているとのことで、深く考えさせられる訪問となりました。
復興に向けての取り組み
失われたコミュニティを取り戻すための取り組みが南相馬市では始まっていました。地元NPOが中心になり、「花見山」と呼ばれる里山に年配の人を集め、植樹と森林整備を軸に活動し、コミュニティの復活を進めていました。将来的には若い人たちも受け入れ、地域再生の核にするとの意気込みで、とても元気づけられました。
ツアーの最後には、風評被害により大きな影響を受けた福島市内の果樹園を訪ねました。現在では除染と徹底した検査を行なっているため、安全であるとのことで、福島産の果物を購入し食べることが、福島の復興につながっていきます。
今回のツアーでは、現地の方々の案内で原発被災地を巡り、放射性物質の影響により遅々として進んでいない復興の現状や、風評被害による農産業への深刻な影響を目のあたりにしました。
福島第一原発では依然、汚染水の漏出が続き、汚染土の処理問題も進まず、一向に終息への目途は立っていません。原発再稼働を推し進めようとしている政府は、この福島で起こっている様々な問題を直視しているといえるでしょうか。
私たちは今後も、今回のようなエコツアーや、現地の状況を世の中に伝える普及活動を継続していきたいと思います。