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野鳥たちの声なき叫び
今も続く放射性物質の脅威
文=山本裕 自然保護室
①2014年11 月、福島県・飯舘村。除染廃棄物が行き場のないまま積まれている
②渡来直後に体内への放射性セシウムの蓄積が確認されたツバメの死体(2015 年4月南相馬市)
③放射性セシウムが検出されたサンコウチョウの巣
ツバメの体内への蓄積
当会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故で漏出した放射性物質の野鳥への影響を調べるため、福島県内で定期的に調査を行なっています。その中で、2015年4月19 日に福島県南相馬市で拾得されたツバメの死体から、約425 Bq (ベクレル)/ kg と比較的高い放射性セシウムが検出されました。代謝量が高い小鳥類では生物学的半減期が短く、他国の越冬地で過ごす間に放射性セシウムは体内から排出されるため、このツバメは春先に渡来してから約1か月の間に、エサなどから環境中の放射性セシウムを取り込んだと考えられます。
巣材や卵への汚染
現在、人の居住地を中心に除染が進められていますが、周辺の森林の土壌の表層には、今も大量の放射性物質が蓄積しています。2014 年に福島市内の森林で、コケなどを材料とする小鳥類の巣材を分析したところ、カラ類の24 巣から平均17 万3千Bq / kg (4・9万~ 53 万Bq / kg )、オオルリの巣から14 万7千Bq / kg 、サンコウチョウの巣から7万Bq / kg と、いずれも指定廃棄物の数値8千Bq / kg を大きく超える放射性セシウムが検出されました(※)。また2015年の調査では、避難指示解除に向けて除染が進められている福島県・富岡町で採取されたヤマガラの巣材8巣から平均15 万1千Bq / kg 、未孵化卵から約275 Bq / kg の放射性セシウムが検出され、親鳥の体内から直接卵へと移行していることが明らかになりました。拡散した放射性物質は、野鳥の体内や巣材、次世代につながる卵にまでも蓄積し、人々の生活は放射能汚染と隣り合わせにあることが浮き彫りになりました。
当会は今後も、放射性物質による野鳥への影響をモニタリングし、情報を公開するとともに、野鳥たちの代弁者として、国や世論に対して原発依存のエネルギー施策からの脱却を求めていきます。
※放射線量は、線源から離れることで大幅に減少するため(距離の二乗に反比例)、通常の生活を営んでいる限り、人体に直ちに影響が出ることはありませんが、こうした巣には近づかない、触らないということが大切です。