プレスリリース:北海道・根室地域に新しい野鳥保護区が誕生
2021年12月9日
ご寄付をもとに「シマフクロウ」の生息地37.3ヘクタールを購入
合計4つがいの生息地保全を強化
公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京、会長:上田恵介、会員・サポーター数約5万人)は、現在約160羽ほどしか生息していないシマフクロウ(絶滅危惧ⅠA類)の生息地保全のため、北海道・根室管内の2か所の民有林、合計37.3haを「野鳥保護区基金*」へのご寄付をもとに購入しました。
当会では、この保護区を「野鳥保護区シマフクロウ根室第1」(30.8ha)「野鳥保護区シマフクロウ根室第3」(6.5ha)と名づけ、絶滅危惧種の生息地として貴重な自然環境を恒久的に保全します。
*野鳥保護区基金:野鳥保護区にかかわる土地購入や管理の費用に特化した当会の基金
*野鳥保護区の具体的な場所や地名は、シマフクロウの生息かく乱の可能性があることから、公表していません。
1.シマフクロウ1つがいが繁殖する森林の保全を強化<野鳥保護区シマフクロウ根室第1>
根室管内のこの森林には、1991年から1つがいのシマフクロウの繁殖が確認されています。当会ではこの地区の河畔林のうち、法的な保護がされていない民有地を2004年から購入し、野鳥保護区として保全してきました。今回購入した民有林も近隣の開発計画に晒され、シマフクロウの生息が危ぶまれていました。そこで当会では、「野鳥保護区基金」へのご寄付をもとに、2020年から2年にわたり30.8ha(307,962㎡)の土地を購入し、野鳥保護区を設置しました。これにより、当森林で繁殖するシマフクロウの生息地のうち51.6haが保全されます。
2.シマフクロウ3つがいが繁殖する森林の保全を強化<野鳥保護区シマフクロウ根室第3>
根室管内のこの森林の流域には、3つがいのシマフクロウの繁殖が確認されています。当会ではこの地区の河畔林のうち、法的な保護がされていない民有地を2010年から土地の購入や所有者との協定により、野鳥保護区として保全してきました。今回購入した民有林も近隣の開発計画に晒され、シマフクロウの生息が危ぶまれていました。そこで当会では「野鳥保護区基金」へのご寄付をもとに、2020年から2年にわたり6.5ha(64,809㎡)の土地を購入し、野鳥保護区を設置しました。これにより、当森林で繁殖するシマフクロウの生息地のうち63.7ha(636,720㎡)が当会の所有地として保全され、協定による保護区と合わせると189.3haが守られることになります。
シマフクロウについて
国指定天然記念物、国内希少野生動植物種、絶滅危惧ⅠA類
河川や湖沼周辺の森林に生息する魚食性の世界最大級のフクロウです。明治期までは北海道内に広く生息していたとされますが、繁殖に必要な直径100cm以上の洞のある大木が森林伐採等により喪失し、餌の魚類が河川改修などにより減少したことで数を減らし、絶滅の危機に瀕しています。現在は北海道中部から東部にかけて約160羽程度が生息するのみです。そして、多くのつがいが巣箱や給餌など、人為的な支援を受けて繁殖しています。生息環境が限られているため、巣立ち後の分散が困難で、近親つがいの形成などの問題も起きています。
日本野鳥の会では、2004年より生息地の民有林を買い取って独自の野鳥保護区としているほか、植樹や間伐など森林環境の整備のような長期的な活動と、生簀による給餌や巣箱設置などの当面の絶滅を回避するための保護活動を行なっています。 現在では、13つがいの生息地で保全活動を進めています。
日本野鳥の会の野鳥保護区について
絶滅危惧種の生息地の危機
1970~80年代は企業・行政共に環境への配慮よりも産業や経済が優先される時代であり、開発によって自然環境が荒廃していました。国は環境庁を設置したばかりでまだ十分な体制を持っておらず、生き物たちの絶滅も心配されていました。北海道でも、タンチョウやシマフクロウなど絶滅危惧種の生息地が開発の危機に晒されていました。
生息地を丸ごと守ります
彼らを守り、絶滅の淵から救うためには、繁殖できる生息地を丸ごと守ることが有効です。また、進行する開発に迅速に対応するためには、買い取りによる生息地の確保がもっとも有効な方法です。そこでNGOである当会が、先駆的に生息地を買い取って独自の「野鳥保護区」とする運動を1986年より開始しました(タンチョウ:1987年~、シマフクロウ:2004年~)。
タンチョウやシマフクロウの生息地を丸ごと保全することで、そこに住むすべての動植物を守ることができる。
国内最大の民間自然保護区に
最初の保護区設置から今日まで35年が経過し、今回の土地購入により、当会所有および協定による野鳥保護区の総面積は3,620ha となりました(タンチョウ2,463ha、シマフクロウ1,125ha、その他32ha)。また、土地所有者との覚書により保全しているシマフクロウの重要な生息地の132haも合わせると、保全面積は3,752haとなります。これは山手線の内側面積の約6割に相当し、絶滅危惧種の保全を目的とした民間の自然保護区としては国内最大の面積です。(景観保護のための民間自然保護区を含めると、前田一歩園財団の3,892haに次ぐ2番目の広さ)。
ご寄付によって支えられています
本件の土地は、野鳥保護区の設置をご希望された故人から生前にご遺贈の申し出をいただき、購入できたものです。当会の野鳥保護区の運動は、共感いただいた方々からのご寄付に支えられています。土地の購入だけでなく、野鳥保護区の設置後には、自然環境を良好かつ永続的に維持するため、巡回監視やモニタリング調査、適正な管理など継続的な活動を行なっています。
(詳しくはホームページ)
「日本野鳥の会」について
「野鳥も人も地球のなかま」を合言葉に、野鳥や自然の素晴らしさを伝えながら、自然と人間とが共存する豊かな社会の実現をめざして活動を続けている自然保護団体です。
独自の野鳥保護区を設置し、シマフクロウやタンチョウなどの絶滅危惧種の保護活動を行なうほか、野鳥や自然の楽しみ方や知識を普及するため、イベントの企画や出版物の発行などを行なっています。会員・サポーター数は約5万人。野鳥や自然を大切に思う方ならどなたでも会員になれます。
<組織概要>
組織名:公益財団法人 日本野鳥の会
代表者:理事長 遠藤孝一
所在地:〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
創立:1934(昭和9)年3月11日 *創立87年の日本最古にして最大の自然保護団体
URL:https://www.wbsj.org/
報道関係者様 問い合わせ先:(画像の提供も下記にお問い合わせください)
公益財団法人日本野鳥の会 保全プロジェクト推進室 保護区グループ
担当:松本 潤慶(まつもと じゅんけい)
〒059-1365 北海道苫小牧市植苗150-3
野鳥保護区事業所(ウトナイ湖サンクチュアリネイチャーセンター内)
TEL:0144-82-8803
E-mail:[email protected]