プレスリリース:(公財)日本野鳥の会、バードライフ・インターナショナル 海鳥と漁業の共存のために刺し網漁による海鳥混獲リスクマップを作成

2020年3月27日

(公財)日本野鳥の会と国際的環境保全団体バードライフ・インターナショナルは、日本沿岸域における刺し網漁による海鳥の混獲リスクを把握し、海鳥と海洋環境の保全に役立てるため、研究者と共同で「混獲リスクマップ」を作成しました。

混獲は海鳥減少の主な要因の一つになっており、刺し網漁による海鳥の混獲数は世界で年間40万羽と推定されています。にもかかわらず、効果的な混獲回避策はまだ確立されていません。現状把握や対策の開発を行う優先地域を抽出するため、今回のマップ作成に至りました。

このマップでは、日本各地での刺し網漁業による、絶滅危惧種を含む海鳥の混獲リスクが高いと推定されるエリアを可視化しました。マップを作成する過程でのヒアリング調査から、海鳥が生息し、かつ水深が浅いエリアが混獲のリスクが高いとの情報を得ています。

当会とバードライフ・インターナショナルでは、このマップを活用し、混獲リスクが高い地域の漁業関係者と連携して、混獲回避策の開発と普及を進めていきたいと考えています。

刺し網漁による海鳥混獲リスクマップ

図3.刺し網漁による海鳥混獲リスクマップ
※凡例のランクはいずれも環境省のレッドリストに基づく。

<混獲リスクの高いエリア>

①北海道東部
絶滅危惧種(チシマウガラス、ヒメウ、ケイマフリ、エトピリカ)を含む、海鳥の繁殖地が多く、根室湾から根室海峡にかけては、広範囲にわたり水深が浅い(100m以下)。道内でもこの地域は刺し網漁が盛んなことから、刺し網漁による海鳥混獲のリスクが高いと推定される。

②北海道北西部
絶滅危惧種(ヒメウ、ウミガラス、ケイマフリ、ウミスズメ)及び、ウトウの大規模な繁殖地がある。また、沿岸部から天売島にかけて水深100m以浅の海域が広がっており、刺し網漁による海鳥混獲のリスクは高いと推定される。

③宮城県沖
絶滅危惧種(ウミスズメ)、ウトウの繁殖地があり、仙台湾内は水深が100m以浅であることから、刺し網漁による混獲リスクがあると推定される。

④九州北西部
烏帽子島・机島(福岡県)周辺、沖ノ島・小屋島(福岡県)周辺も、絶滅危惧種であるカンムリウミスズメの繁殖地があり、水深が100m以浅のため、混獲リスクがあると推定される。

【事業の背景・概要】

刺し網漁によって命を落とす海鳥は推定40万羽
海鳥は、鳥類の中でも急激に数を減らしています。IUCN(国際自然保護連合)によると、全世界359種の約3分の1にあたる111種が絶滅の危機にあります。
海鳥の減少の主な要因のひとつに、漁業の際に誤って捕獲される「混獲」があり、刺し網漁(*)による混獲で命を落とす海鳥は世界で年間40万羽と推定されています。刺し網漁による混獲にはまだ効果的な回避策がなく、漁業の規模が小さいため、混獲の実態がわかりにくいという問題があります。そこで、日本野鳥の会と国際的環境保全団体バードライフ・インターナショナルは、研究者と共同で、今回の混獲リスクマップを作成しました。

混獲回避のための用具の実験も開始
また、刺し網漁による海鳥の混獲回避に効果があり、かつ漁獲量に影響を与えない方法を開発するため、北るもい漁業協同組合と北海道海鳥センターの協力を得て、国内でも海鳥が数多く生息する天売島および羽幌町沖で、網にLEDライトや布製パネルを装着する実験を行いました。

*刺し網漁とは
水中に帯状の網を仕掛けて「網の壁」を築き、そこを通過する魚を絡めてとる漁法で、主に沿岸域で行われている。ウ類やウミスズメ類などの潜水性海鳥が、餌を採るために潜水している時に漁網に絡まり、犠牲になっている。

【本件に関するお問合せは】

(公財)日本野鳥の会 自然保護室  ■担当:山本・岡本
東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
TEL:03-5436-2633  E-mail:[email protected]
※リスクマップの詳細なレポートはこちら
※リスクマップの画像データ、本件の詳細資料を提供いたします。
上記までお問合せください。


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