プレスリリース 2011.05.24
日本野鳥の会が「タンチョウ」の生息地68.0ヘクタールを購入
2011.05.24
タンチョウのための野鳥保護区は21箇所2584.8haに
ラムサール条約登録湿地、厚岸湖・別寒辺牛湿原地域で、合計714.8ヘクタールの湿原を保全
公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博 会員・サポーター数:約5万人)は、渡邉氏(わたなべ・関東地方在住)からのご寄付を元に、タンチョウの生息する北海道厚岸郡厚岸町、登喜岱(ときたい)の湿原68.0haを購入した。現地は、寄付者のお名前を冠した「渡邉野鳥保護区トキタイ」とし、恒久的に保全する。
現在、タンチョウの生息数は1300羽を越えるまで、営巣数も350巣以上になっているが、何らかの保護の地域指定を受けている場所は、全体の約40%に過ぎず、繁殖地となる湿原の保全の重要性は依然として変わっていない。このため当会では、1987年よりタンチョウを保護するため、寄付を財源として土地を購入すること、また土地所有者との協定を締結することにより、生息地を野鳥保護区として保全する活動を継続している。今回の購入地を含め、当会が野鳥保護のために設置した保護区は合計33箇所、2938.9haとなった。
購入した土地について
購入地は、北海道厚岸郡厚岸町を流れ、ラムサール条約登録湿地である厚岸湖に流れ込むトキタイ川河口流域に広がる68.0ha(680,175㎡)の湿原である。ラムサール条約湿地である厚岸湖・別寒辺牛湿原周辺では、約50つがいのタンチョウの繁殖が確認されており、タンチョウの重要な生息地になっている。当会は2010年度末までに、当該地に6ヶ所の野鳥保護区を設置し10つがいの繁殖地を保全している。今回の購地周辺では、タンチョウ1つがいの繁殖が確認されている。ラムサール条約登録湿地である「厚岸湖・別寒辺牛湿原」(同国指定厚岸・別寒辺牛・霧多布鳥獣保護区特別保護地区)に隣接しているが、鳥獣保護区等の法的な網掛けの弱い湿原であったため、野鳥保護区設置に至った。今回設置した野鳥保護区を含めると、厚岸町内に7箇所の野鳥保護区を設置し11つがいのタンチョウの繁殖地を保全することになる。なお、当会では今後も、この地域のタンチョウの生息する湿原を対象に野鳥保護区の設置を進める計画である。
野鳥保護区事業について
野鳥の生息地の保全を目的として、当会では「野鳥保護区」を設置している。これまでに北海道東部を中心に33か所、2938.9haを買い取りや協定により確保してきた。これは東京ディズニーランドが59個入る大きさで、国内の自然保護団体が設置した保護区としては最大級の面積である。この土地の買い取りの財源は、会員をはじめとする方々からの寄付で成り立っている。当会の最初の野鳥保護区は、1987年に根室へ設置したタンチョウの生息地7.6haだった。それ以降、タンチョウの生息地を中心に順次拡大を続け、2004年からタンチョウ保護と併せて、シマフクロウの生息地の買い取りも開始している。野鳥保護区が集中する北海道東部では釧路地域と根室地域に事務所を置き、当会の専従職員を常駐させ、保護区の巡回監視にあたっている。
購入費について
当会が買い取りによって野鳥保護区を設置する際、土地の購入費用をはじめ自然環境維持のための管理費用など多くの資金が必要である。この資金は、一般個人や法人からの寄付金などによって支えられている。通常、いただいた寄付金の半分を土地購入費に充て、残り半分を管理基金として積み立てて、毎年必要な額だけ維持費として支出している。
今回の土地購入費用は、関東地方在住の渡邉氏からのご寄付を充てている。なお、渡邉氏はご寄付の際に匿名を希望されており、姓以外のお名前や居住地などの情報は伏せている。
タンチョウ Grus japonensis について
タンチョウは、かつて江戸時代までは道内全域に生息していたと言われているが、明治時代の乱獲と生息地である湿原の開発により激減し、一時は絶滅したと考えられていた。大正時代末期に釧路湿原で再発見されて以来、地元農家の冬期給餌などの保護活動が実り、個体数は1300羽を超えるまでになった。国の特別天然記念物にも指定されているが、分布は北海道東部に偏在し、冬期の人為的な給餌に依存している。また生息地である湿原の面積は減少する一方で、残されている湿原も営巣地の約半分は法律による保護指定がなされておらず、いつ開発されてもおかしくないのが現状である。
1987年、(財)日本野鳥の会(現:公益財団法人日本野鳥の会)は全国からの募金をもとに、タンチョウの越冬地である阿寒郡鶴居村の給餌人、伊藤良孝氏(故人)のご理解とご協力を得て「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」を開設した。そこでは日本野鳥の会のレンジャーが常駐し、タンチョウ保護のために生態調査や自然解説などを行なう現地拠点となっている。また繁殖地の保護状況調査をもとに、タンチョウの繁殖地でありながら法律で保護指定されていない湿原を購入、あるいは地主と協定を結ぶ等で、野鳥保護区を設置する活動を行っている。
<タンチョウの保護指定状況>
- 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法) 「国内希少野生動植物種」
- 文化財保護法 「天然記念物」
- 改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物‐レッドデータブック‐ 2 鳥類 「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」
- IUCN(国際自然保護連合)レッドリスト 「EN C1」
公益財団法人日本野鳥の会について
(詳しくはホームページ http://www.wbsj.org)
自然と人間が共存する豊かな社会の実現を目指し、野鳥や自然のすばらしさを伝えながら、自然保護を進めている民間団体である。全国5万人の会員・サポーターが、自然を楽しみつつ、自然を守る活動を支えている。
・創設:1934年 ・創設者:中西悟堂 ・連携団体:全国90団体
・2011年4月、「財団法人日本野鳥の会」は「公益財団法人日本野鳥の会」へ改称しました。
<野鳥や自然を大切に思う心を伝えます>
- 全国10か所のサンクチュアリやバードプラザを訪れる、年間約30万人に野鳥や自然のすばらしさを伝えている。
- 東京バードフェスティバルなどの大規模イベントへの参加や野鳥図鑑などの発行を通して、バードウォッチングの楽しさを伝えている。
- バードウォッチングの指導・案内のできる人材の育成を進めている。
<野鳥や自然を守ります>
- 北海道東部のタンチョウの営巣地を中心に、土地の買い取りや協定により野鳥保護区として保全している。現在、保護区の面積は33か所、2938.9haで、自然保護団体としては国内最大級である。
- 鳥類の生息地として保全が急がれる場所を明確にするため、国際的に重要な鳥類等を指標にした重要度の基準(IBA基準)を満たした野鳥の重要な生息地の選定、リストの公表を行ない、保全の推進、ネットワーク化を行なっている。
<公益財団法人です>
日本野鳥の会は、内閣総理大臣より「公益財団法人」に認定されており、個人や法人が支出した寄付金に対し「特定公益増進法人」として所得控除や損金算入等の税制上の優遇措置が設定されている。
本リリースの配布先
・釧路総合振興局記者クラブ
・環境省記者クラブ
公益財団法人日本野鳥の会
●本件に関するお問い合わせ
野鳥保護区事業所
担当:松本 潤慶(まつもと じゅんけい) 小畑 拓也(おばた たくや)
〒086-0074 北海道根室市東梅115-1
T E L:0153-25-8911 携帯電話:080-1179-2786