プレスリリース 2006.12.08
根室半島における風力発電開発に関して、北海道電力、北海道庁他に要望書を提出しました
2006.12.8
日本野鳥の会根室支部(事務局:根室市、支部長:細川憲了、支部会員:約80名)と(財)日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博、会員・サポーター数:約5万2千人)は2006年12月11日までに、北海道電力株式会社、環境省、文化庁、北海道、根室市に対し連名で、根室半島における風力発電開発に関する要望書を提出しました。北海道電力株式会社への要望書では、風力発電施設により発電された電力の購入に先立ち、根室半島における風力発電施設の建設が、半島基部に存在するラムサール条約湿地「風蓮湖・春国岱」の生態系やオオワシ、オジロワシ、タンチョウの繁殖をはじめとする希少鳥類の生息に影響を与えないことを確認するよう求めています。
■根室半島における風力発電施設の現状
- 現在、根室半島では9基の風力発電用風車が稼動しています。
- 根室半島の歯舞地区(半島東部)では、ユーラスエナジージャパン社による15基程度の風力発電施設(仮称根室ウインドファーム)の建設計画があり自主アセスメントが行われています。
- 半島南西部の昆布盛ウインドファーム(1500kW×5基)敷地内では、2004年12月10日(同ウインドファームの竣工式の当日)に、体を切断されたオジロワシ1羽が地上に落ちているところを発見されています(発見後、死亡)。
文書の要旨
■根室半島の自然環境について
- 根室半島には、その基部に道立自然公園に指定されラムサール条約湿地に登録されている「風蓮湖・春国岱」があり、また環境省(2002)において「日本の重要湿地500」に選定されている「根室半島湿原群」がある。
- 風蓮湖周辺を含む根室半島は、オオワシ、オジロワシの重要な越冬地になっている。オジロワシ・オオワシ合同調査グループ(未発表)の2004年2月の一斉調査結果では、全国で確認されたオオワシの34.09%、オジロワシの20.36%が、根室半島と風蓮湖周辺で確認されている。
- 白木(未発表)によると、オジロワシの営巣が、根室半島、風蓮湖周辺でこれまでに17箇所確認されている。
- 正富ほか(未発表)によると、タンチョウの営巣が、2006年に根室半島、風蓮湖周辺で36箇所確認されている。
- 種の保存法、文化財保護法、環境省レッドデータブック、北海道レッドデータブックに指定されている鳥類がそれぞれ、13種、10種、39種、31種確認されている。
■野鳥への影響について
- 根室半島は、多くの希少鳥類が生息しており、風力発電施設が建設された場合、これらの希少鳥類の飛行経路、繁殖行動、越冬の阻害、衝突事故の発生を引き起こすことが懸念される。希少鳥類の保護のため、その生息地の保全が必要である。風力発電施設の建設にあたっては、これら希少鳥類の生息に影響を与えないかどうかを正確に把握するために必要な調査を十分行い、万一影響が生じると考えられた場合、計画を取りやめるなどの措置が必要である。
- 2006年7月に行った納沙布岬近隣の歯舞地区で行われたオジロワシの生息状況を把握する予備的な調査では、同地区の半島部を縦断するように飛行している個体が確認されている。
■提出文書
- 北海道電力株式会社への要望書
- 北海道庁への要望書
- 根室市への要望書
※別紙、参考資料については、共通です。
環境省、文化庁については、同様の内容です。
日野鳥発第71号
平成18年12月8日
北海道電力株式会社 取締役社長
近藤 龍夫 様
東京都渋谷区初台1-47-1
小田急西新宿ビル1F
財団法人 日本野鳥の会
会 長 柳生 博
日本野鳥の会 根室支部
支部長 細川憲了
希少鳥類の生息する根室半島の保全に関する要望書
(風力発電の計画に際して)
平素より当会の環境保全活動に関するご理解、ご協力に対し、深く感謝申し上げます。さて、根室半島はラムサール条約湿地「風蓮湖・春国岱」があり、野生動植物の重要な生息地となっています。特に鳥類では、オジロワシ、オオワシ、タンチョウなど、種の保存法 国内希少野生動植物種13種、文化財保護法 特別天然記念物2種、天然記念物8種などの希少鳥類の生息が確認されています。同半島に、風力発電施設が建設された場合、これらの鳥類の飛行経路が変更される、繁殖が阻害される、衝突事故が発生するなどの影響が危惧されます。そこで、希少鳥類の生息する根室半島の野生生物の保全のため、下記の通り要望いたします。
記
風力発電施設によって発電された電力の購入に先立ち、根室半島内での施設の設置が、希少鳥類、及び日本の重要湿地500「根室半島湿原群」、ラムサール条約湿地「風蓮湖・春国岱」、に影響を与えないことをご確認ください。
理由は以下の通りです。
(1) 根室半島は、オオワシ・オジロワシ(種の保存法 国内希少野生動植物種、文化財保護法 天然記念物)の重要な越冬地になっています。
根室半島では、10月から4月にかけてオオワシが越冬に訪れます。また、オジロワシは、1年中確認され、10月から4月にかけて越冬のため飛来数が増加し、根室半島全域で見られます。
2004年2月22日には、根室半島でオオワシ54.6羽、オジロワシ41.4羽、風蓮湖周辺でオオワシ738.4羽、オジロワシ184.6羽が確認され、根室半島と風蓮湖周辺で確認された総数は、全国で確認されたオオワシの34.09%、オジロワシの20.36%になります(オジロワシ・オオワシ合同調査グループ 未発表)。また、2006年2月13日には、風蓮湖周辺においてオオワシ919羽、オジロワシ239羽が確認されています(日本野鳥の会 未発表)。
オオワシ、オジロワシは、ご承知のとおり、ともに種の保存法で国内希少野生動植物種に、文化財保護法で天然記念物に、北海道レッドデータブック(以下、RDB)で絶滅危惧種とされ、環境省RDBでは、オオワシは絶滅危惧II類に、オジロワシは絶滅危惧IB類に指定される希少鳥類であり、根室半島を生息地としております。
特にオジロワシは、風力発電施設との衝突事故が根室半島で1回、他地域で4回確認されており、事故が発生する可能性が高い種であると考えられます。
両種の越冬地である根室半島で、風力発電施設の建設が計画された際は、計画予定地付近で越冬期に両種の生息が確認される可能性が非常に高いと考えられます。
しかし、根室半島全域において、越冬期に両種の移動経路・飛行高度・行動(採食、休息など)が正確に調査されたことはなく、その利用状況は明確になっておりません。両種の保護のためには、こうした基礎的な生態の把握を行って、風力発電施設による影響を予測しておく必要があります。
(2) オジロワシの営巣が、根室半島、風蓮湖周辺でこれまでに17箇所確認されています。
天然記念物、国内希少野生動植物種に指定されているオジロワシの営巣が、1992年以降の観察により、これまで根室半島で7箇所、風蓮湖周辺で10箇所確認されております(白木 未発表)。
特に、歯舞湿原周辺では2箇所の営巣が確認されており、トーサンポロ沼から太平洋側へ移動するなど、半島中央部を縦断するように利用している個体がいるとわかっています(山口・長岡 2006)。この調査は2006年7月7、9日の2日間のみ実施されたものであり、繁殖期を通しての調査ではないにもかかわらず、この地域における危険性が明瞭に示されています。
同種の繁殖地である根室半島に、風力発電施設が建設された場合、エサ運び、造巣などの活動が頻繁に行われ、営巣地周辺を高頻度で移動するため、施設周辺の同種の繁殖が阻害されることが考えられます。
(3) タンチョウ(種の保存法 国内希少野生動植物種、環境省RDB 絶滅危惧II類)の営巣が、根室半島、風蓮湖周辺で36箇所確認されています。
タンチョウの営巣が、2006年に根室半島で11箇所、風蓮湖周辺で25箇所確認されております(正富ほか 未発表)。同種は、種の保存法で国内希少野生動植物種に、文化財保護法で特別天然記念物に、北海道RDBで絶滅危惧種とされ、環境省RDBでは絶滅危惧II類に指定される希少鳥類です。
同種の繁殖地である根室半島、風蓮湖周辺に、風力発電施設が建設された場合、エサ運び、造巣などの活動が頻繁に行われ、営巣地周辺を高頻度で移動するため、施設周辺の同種の繁殖が阻害されることが考えられます。
(4) 根室半島では、以下39種の希少鳥類が確認されています。
根室半島では、上記以外にも別紙のように非常に多種の希少鳥類が確認されております。種の保存法、文化財保護法、環境省RDB、北海道RDBに指定されている種は、各々13種、10種、39種、31種、総数39種になります。
これらの生息を阻害しないためには、上記(1)、(2)、(3)のことも考え合わせ、そもそも根室半島が風力発電施設の計画地として適当かどうかをあらかじめよく検討して行く必要があります。
(5) 根室半島には、環境省(2002)において「日本の重要湿地500」に指定される「根室半島湿原群」に含まれる湿原が点在しています。
根室半島には、「日本の重要湿地500」に指定される「根室半島湿原群」があります。この湿原群は、根室半島に点在する複数の湿原を指しております。構成湿原としては、根室半島湿原、ホロニタイ・フレシマ湿原、タンネ沼・オンネ沼、南部沼、長節湖、落石岬湿原、落石西湿原、ヒキウス沼、沖根辺沼があげられております。それぞれ、希少動植物種が生息している、あるいは、多様な生物相が確認されているなど、「日本の重要湿地500」の基準を満たしております。
これらの重要な湿地、及び周辺に風力発電施設が建設された場合、風車の設置、送電線の埋設工事、取り付け道路の設置などにより、水の循環を分断し、希少動植物種の生息及び、「根室半島湿原群」の生態系に悪影響を与えることが考えられます。
参考資料:・環境省.2002.日本の重要湿地500.東京
(6) 根室半島基部には、ラムサール条約湿地「風蓮湖・春国岱」があり、野鳥の重要な生息地となっています。同地に飛来する、生態系の上位に位置する鳥類が根室半島で影響を受ければ、「風蓮湖・春国岱」の生態系にも影響を及ぼします。
根室半島の基部に位置する「風蓮湖・春国岱」は、2005年11月にラムサール条約湿地に登録されました。同地は、ラムサール条約湿地の登録基準を5つ満たしています。
そのうち、基準5「定期的に2万羽以上の水鳥を支えている」については、渡りの時期のガンカモ類の最大渡来数が54,839羽確認されており、定期的に2万羽以上の水鳥を支えていることから基準を満たしています。
また、基準6「地域個体群の個体数1%を定期的に支えている。」については、オオハクチョウは10,331羽、ヒシクイは 1,800羽、コクガンは2,000羽、ヒドリガモは8,673羽、オナガガモは11,442羽、スズガモは19,076羽、ホオジロガモは1,517羽、タンチョウは20~40羽、キアシシギは約400~1,900羽の渡来が確認されており、各々、東アジア地域個体群の個体数1%(各600羽、550羽、50羽、7,500羽、7,500羽、3,000羽、750羽、8羽、400羽)を定期的に支えていることから基準を満たしています。
以上の種類に加えて、「風蓮湖・春国岱」ではこれまで約280種の鳥類が確認されています。これらの鳥類は「風蓮湖・春国岱」ばかりではなく、移動により隣接地である根室半島を併せて利用していることが考えられます。根室半島で、これら鳥類の生息に影響があれば、「風蓮湖・春国岱」の生態系にも影響を及ぼします。ラムサール条約湿地の保全管理のため、これらの鳥類の移動、生息状況を十分に検討する必要があります。
参考資料:環境省.2004. 第2回ラムサール条約湿地検討会議 資料2-1 選定基準見直し後の基準別湿地一覧.東京
以上のように、根室半島には、ラムサール条約湿地「風蓮湖・春国岱」があり、また、根室半島全域で多くの希少鳥類が確認されるなど、希少鳥類の重要な生息地になっています。同地域での風力発電施設の建設は、これら希少鳥類の飛行経路、繁殖行動、越冬の阻害、衝突事故の発生を引き起こすことが懸念されます。希少鳥類保護のため、その生息地の保全が必要です。これら希少鳥類の生息地である同地域では、その生息に影響を与える風力発電施設の建設は実施されるべきではありません。風力発電施設の建設にあたっては、これら希少鳥類の生息に影響を与えないかどうかを正確に把握するために必要な調査を十分行い、万一影響が生じると考えられた場合は、計画を取りやめるなどの措置が必要です。
根室半島において、風力発電施設の建設計画があった場合、北海道電力として、その計画が希少鳥類の生息、及び「風蓮湖・春国岱」、「根室半島湿原群」に影響を与えないかどうかを十分にご確認ください。
以上
別紙 根室半島に生息する希少鳥類
■コアホウドリ
・環境省 RDB 絶滅危惧IB類
■クロコシジロウミツバメ
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
■チシマウガラス
・種の保存法 国内希少野生動植物種
・環境省 RDB 絶滅危惧IA類
・北海道 RDB 絶滅危機種
■チュウサギ
・環境省 RDB 準絶滅危惧種
・北海道 RDB 希少種
■コウノトリ
・種の保存法 国内希少動植物種
・文化財保護法 特別天然記念物
・環境省 RDB 絶滅危惧IA類
・北海道 RDB 絶滅危惧種
■コクガン
・文化財保護法 天然記念物指定種
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
・北海道 RDB 希少種
■マガン
・文化財保護法 天然記念物
・環境省 RDB 準絶滅危惧種
・北海道 RDB 希少種
■オオタカ
・種の保存法 国内希少動植物種
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
・北海道 RDB 絶滅危急種
■ハイタカ
・環境省 RDB 準絶滅危惧種
・北海道 RDB 絶滅危急種
■クマタカ
・種の保存法 国内希少動植物種
・環境省 RDB 絶滅危惧IB類
・北海道 RDB 絶滅危惧種
■イヌワシ
・種の保存法 国内希少動植物種
・文化財保護法 天然記念物
・環境省 RDB 絶滅危惧IB類
・北海道 RDB 絶滅危惧種
■チュウヒ
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
・北海道 RDB 絶滅危急種
■ハヤブサ
・種の保存法 国内希少動植物種
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
・北海道 RDB 絶滅危急種
■タンチョウ
・種の保存法 国内希少野生動植物種
・文化財保護法 特別天然記念物
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
・北海道 RDB 絶滅危惧種
■コアジサシ
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
■ウミガラス
・種の保存法 国内希少動植物種
・環境省 RDB 絶滅危惧IA類
・北海道 RDB 絶滅危機種
■ケイマフリ
・環境省 RDB 絶滅危惧;類
・北海道 RDB 絶滅危急種
■ウミスズメ
・環境省 RDB 絶滅危惧IA類
・北海道 RDB 絶滅危機種
■エトピリカ
・種の保存法 国内希少動植物種
・環境省 RDB 絶滅危惧IA類
・北海道 RDB 絶滅危機種
■ヒシクイ
・文化財保護法 天然記念物
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
・北海道 RDB 希少種
■ツクシガモ
・環境省 RDB 絶滅危惧IB類
■トモエガモ
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
・北海道 RDB 希少種
■ミサゴ
・環境省 RDB 準絶滅危惧種
・北海道 RDB 絶滅危急種
■ハチクマ
・環境省 RDB 準絶滅危惧種
・北海道 RDB 希少種
■オジロワシ
・種の保存法 国内希少野生動植物種
・文化財保護法 天然記念物
・環境省 RDB 絶滅危惧IB類
・北海道 RDB 絶滅危惧種
■オオワシ
・種の保存法 国内希少野生動植物種
・文化財保護法 天然記念物
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
・北海道 RDB 絶滅危惧種
■シマクイナ
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
■ヘラシギ
・環境省 RDB 絶滅危惧IB類
・北海道 RDB 絶滅危急種
■アカアシシギ
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
・北海道 RDB 絶滅危急種
■カラフトアオアシシギ
・種の保存法 国内希少動植物種
・環境省 RDB 絶滅危惧IA類
・北海道 RDB 絶滅危急種
■ホウロクシギ
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
・北海道 RDB 希少種
■コシャクシギ
・環境省 RDB 絶滅危惧IA類
■オオジシギ
・環境省 RDB 準絶滅危惧
・北海道 RDB 希少種
■セイタカシギ
・環境省 RDB 絶滅危惧IB類
・北海道 RDB 希少種
■シマフクロウ
・文化財保護法 天然記念物指定種
・種の保存法 国内希少動植物種
・環境省 RDB 絶滅危惧IA類
・北海道 RDB 絶滅危機種
■クマゲラ
・文化財保護法 天然記念物
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
・北海道 RDB 絶滅危急種
■サンショウクイ
・環境省 RDB 絶滅危惧II類
■アカモズ
・環境省 RDB 準絶滅危惧種
・北海道 RDB 希少種
■シマアオジ
・環境省 RDB 準絶滅危惧種
・北海道 RDB 希少種
<参考資料>
・ 文化財保護法(法律 第214号)
・ 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(法律第 75号)
・ 環境省.2002.改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物-レッドデータブック(環境省 RDB)-鳥類.東京
・ 北海道.2001.北海道の希少野生生物 北海道レッドデータブック2001(北海道 RDB).北海道
・ 根室市教育委員会.2005.根室市鳥類生息調査報告書.北海道
参考資料1
根室市温根元~珸瑶瑁地区におけるオジロワシの生息状況調査
山口 桂賜※1 ・ 長岡 滋雄※2
(※1.)
(財)日本野鳥の会 サンクチュアリ室 〒151-0061 東京都渋谷区初台1-47-1 小田急西新宿ビル1階
(※2.)
霧多布湿原自然学校 〒088-1365 北海道厚岸郡浜中町茶内橋北東53
はじめに
北海道東部に位置する根室半島先端部の根室市温根元~珸瑶瑁地区では、オジロワシ Haliaeetus albicilla の生息や繁殖が確認されているが、同地域でのオジロワシの生息エリアを明らかにする調査は、これまで行なわれていない。この報告では、これを明らかにするために行なった基礎的な調査結果について述べる。
調査地と調査方法
調査地は、根室半島先端部に位置する、根室市温根元~珸瑶瑁周辺である。同地域は、北部のオホーツク海(根室海峡)と、南部の太平洋に挟まれた半島部に位置し、オホーツク海側に2つの漁港、太平洋側に 1つの漁港があり、北部にトーサンポロ沼があり、内陸部は牧草地である。
調査定点は、トーサンポロ沼東側と南側に各 1ケ所設置した。調査は、8~10倍の双眼鏡、20~40倍の望遠鏡をもちいて、7時から17時までの間に、調査エリア内を休止・飛行するオジロワシの休止位置・飛行ルートを地図上に記録した。
また、5時から6時まで、調査エリアを一周する約 21kmの周回コースを自動車で走行し、車中から確認されたオジロワシの休止位置・飛行ルートを地図上に記録し、6時から7時までの間に、定点周辺の道路沿いに2コース(2.25km、2.43km)を設定し、徒歩または自動車で確認されたオジロワシの休止位置・飛行ルートを周り、周辺のオジロワシの生息状況の確認を行った。
定点調査は、 2006年7月7日、7月9日の2日間、合計20時間実施した。調査員の延べ人数は4名であった。
調査結果
2006年7月7日、9日の調査結果を図1にまとめた。
トーサンポロ沼の南東部に位置するポンオンネモト川周辺と、太平洋側を行き来するオジロワシや、トーサンポロ川の南部に位置する牧草地を東進するオジロワシが確認された。ポンオンネモト川の南部牧草地にある牧柵で休止することがよく確認された。また、当該地域には、今シーズンの繁殖は失敗しているものの、オジロワシ 1つがいの営巣が確認されており、その営巣地を休止場所の一つとして移動するオジロワシも確認された。
調査地周辺を一周する約 21kmのコースでは、7月7日にオジロワシ1羽1ヶ所での休止が確認され、定点周辺の道路沿いの2コースでは確認できなかった。
日野鳥発第73号
平成18年12月7日
北海道知事
高橋 はるみ 様
東京都渋谷区初台1-47-1
小田急西新宿ビル1F
財団法人 日本野鳥の会
会 長 柳生 博
日本野鳥の会 根室支部
支部長 細川憲了
希少鳥類の生息する根室半島の保全に関する要望書
(風力発電の計画に際して)
平素より当会の環境保全活動に関するご理解、ご協力に対し、深く感謝申し上げます。さて、根室半島は道立自然公園でありラムサール条約湿地の「風蓮湖・春国岱」があり、野生動植物の重要な生息地となっています。特に鳥類では、北海道レッドデータブック(以下、RDB)に指定される31種などの生息が確認されています。同半島に、風力発電施設が建設された場合、これらの鳥類の飛行経路が変更される、繁殖が阻害される、衝突事故が発生するなどの影響が危惧されます。そこで、希少鳥類の生息する根室半島の野生生物の保全のため、下記の通り要望いたします。
記
根室半島内での風力発電施設の建設により、地域の財産である、道立自然公園でありラムサール条約湿地の「風蓮湖・春国岱」、日本の重要湿地500「根室半島湿原群」、及び北海道RDBに指定される31種の希少鳥類が影響を受けないよう、北海道として適切な対応をとっていただけるよう要望いたします。
理由は以下の通りです。
(1) 根室半島は、オオワシ・オジロワシ(種の保存法 国内希少野生動植物種、文化財保護法 天然記念物、北海道レッドデータブック(以下、RDB) 絶滅危惧種)の重要な越冬地になっています。
根室半島では、10月から4月にかけてオオワシが越冬に訪れます。また、オジロワシは、1年中確認され、10月から4月にかけて越冬のため飛来数が増加し、根室半島全域で見られます。
2004年2月22日には、根室半島においてオオワシ54.6羽、オジロワシ41.4羽、風蓮湖周辺でオオワシ738.4羽、オジロワシ184.6羽が確認され、根室半島と風蓮湖周辺で確認された総数は、全国で確認されたオオワシの34.09%、オジロワシの20.36%になります(オジロワシ・オオワシ合同調査グループ 未発表)。また、2006年2月13日には、風蓮湖周辺においてオオワシ919羽、オジロワシ239羽が確認されています(日本野鳥の会 未発表)。
オオワシ、オジロワシは、ご承知のとおり、ともに種の保存法で国内希少野生動植物種に、文化財保護法で天然記念物に、北海道RDBで絶滅危惧種とされ、環境省RDBでは、オオワシは絶滅危惧II類に、オジロワシは絶滅危惧IB類に指定される希少鳥類であり、根室半島を生息地としております。
特にオジロワシは、風力発電施設との衝突事故が根室半島で1回、他地域で4回確認されており、事故が発生する可能性が高い種であると考えられます。
両種の越冬地である根室半島で、風力発電施設の建設が計画された際は、計画予定地付近で越冬期に両種の生息が確認される可能性が非常に高いと考えられます。
しかし、根室半島全域において、越冬期に両種の移動経路・飛行高度・行動(採食、休息など)が正確に調査されたことはなく、その利用状況は明確になっておりません。両種の保護のためには、こうした基礎的な生態の把握を行って、風力発電施設による影響を予測しておく必要があります。
(2) オジロワシの営巣が、根室半島、風蓮湖周辺でこれまでに17箇所確認されています。
国内希少野生動植物種、天然記念物に指定されているオジロワシの営巣が、1992年以降の観察により、これまで根室半島で7箇所、風蓮湖周辺で10箇所確認されております(白木 未発表)。
特に、歯舞湿原周辺では2箇所の営巣が確認されており、トーサンポロ沼から太平洋側へ移動するなど、半島中央部を縦断するように利用している個体がいるとわかっています(山口・長岡 2006)。この調査は2006年7月7、9日の2日間のみ実施されたものであり、繁殖期を通しての調査ではないにもかかわらず、この地域における危険性が明瞭に示されています。
同種の繁殖地である根室半島に、風力発電施設が建設された場合、エサ運び、造巣などの活動が頻繁に行われ、営巣地周辺を高頻度で移動するため、施設周辺の同種の繁殖が阻害されることが考えられます。
(3) タンチョウ(種の保存法 国内希少野生動植物種、文化財保護法 特別天然記念物、北海道 RDB 絶滅危惧種)の営巣が、根室半島、風蓮湖周辺で36箇所確認されています。
タンチョウの営巣が、2006年に根室半島で11箇所、風蓮湖周辺で25箇所確認されております(正富ほか 未発表)。同種は、種の保存法で国内希少野生動植物種に、文化財保護法で特別天然記念物に、北海道RDBで絶滅危惧種とされ、環境省RDBでは絶滅危惧II類に指定される希少鳥類です。
同種の繁殖地である根室半島、風蓮湖周辺に、風力発電施設が建設された場合、エサ運び、造巣などの活動が頻繁に行われ、営巣地周辺を高頻度で移動するため、施設周辺の同種の繁殖が阻害されることが考えられます。
(4) 根室半島では、以下39種の希少鳥類が確認されています。
根室半島では、上記以外にも別紙のように非常に多種の希少鳥類が確認されております。種の保存法、文化財保護法、環境省RDB、北海道RDBに指定されている種は、各々13種、10種、39種、31種、総数39種になります。
これらの生息を阻害しないためには、上記(1)、(2)、(3)のことも考え合わせ、そもそも根室半島が風力発電施設の計画地として適当かどうかをあらかじめよく検討して行く必要があります。
(5) 根室半島には、環境省(2002)において「日本の重要湿地500」に指定される「根室半島湿原群」に含まれる湿原が点在しています。
根室半島には、「日本の重要湿地500」に指定される「根室半島湿原群」があります。この湿原群は、根室半島に点在する複数の湿原を指しております。構成湿原としては、根室半島湿原、ホロニタイ・フレシマ湿原、タンネ沼・オンネ沼、南部沼、長節湖、落石岬湿原、落石西湿原、ヒキウス沼、沖根辺沼があげられております。それぞれ、希少動植物種が生息している、あるいは、多様な生物相が確認されているなど、「日本の重要湿地500」の基準を満たしております。
これらの重要な湿地、及び周辺に風力発電施設が建設された場合、風車の設置、送電線の埋設工事、取り付け道路の設置などにより、水の循環を分断し、希少動植物種の生息及び、「根室半島湿原群」の生態系に悪影響を与えることが考えられます。
参考資料:・環境省.2002.日本の重要湿地500.東京
(6) 根室半島基部には、ラムサール条約湿地「風蓮湖・春国岱」があり、野鳥の重要な生息地となっています。同地に飛来する、生態系の上位に位置する鳥類が根室半島で影響を受ければ、「風蓮湖・春国岱」の生態系にも影響を及ぼします。
根室半島の基部に位置する「風蓮湖・春国岱」は、2005年11月にラムサール条約湿地に登録されました。同地は、ラムサール条約湿地の登録基準を5つ満たしています。
そのうち、基準5「定期的に2万羽以上の水鳥を支えている」については、渡りの時期のガンカモ類の最大渡来数が54,839羽確認されており、定期的に2万羽以上の水鳥を支えていることから基準を満たしています。
また、基準6「地域個体群の個体数1%を定期的に支えている。」については、オオハクチョウは10,331羽、ヒシクイは1,800羽、コクガンは2,000羽、ヒドリガモは8,673羽、オナガガモは11,442羽、スズガモは19,076羽、ホオジロガモは1,517羽、タンチョウは20~40羽、キアシシギは約400~1,900羽の渡来が確認されており、各々、東アジア地域個体群の個体数1%(各600羽、550羽、50羽、7,500羽、7,500羽、3,000羽、750羽、8羽、400羽)を定期的に支えていることから基準を満たしています。
以上の種類に加えて、「風蓮湖・春国岱」ではこれまで約280種の鳥類が確認されています。これらの鳥類は「風蓮湖・春国岱」ばかりではなく、移動により隣接地である根室半島を併せて利用していることが考えられます。根室半島で、これら鳥類の生息に影響があれば、「風蓮湖・春国岱」の生態系にも影響を及ぼします。ラムサール条約湿地の保全管理のため、これらの鳥類の移動、生息状況を十分に検討する必要があります。
参考資料:環境省.2004. 第2回ラムサール条約湿地検討会議 資料2-1 選定基準見直し後の基準別湿地一覧.東京
以上のように、根室半島には、道立自然公園でありラムサール条約湿地の「風蓮湖・春国岱」、日本の重要湿地500「根室半島湿原群」があり、また根室半島全域では、北海道RDBに指定される31種の希少鳥類が確認されております。特に、希少鳥類については重要な生息地になっており、同地域での風力発電施設の建設は、これら希少鳥類の飛行経路、繁殖行動、越冬の阻害、衝突事故の発生を引き起こすことが懸念されます。希少鳥類保護のため、その生息地の保全が必要です。これら希少鳥類の生息地である同地域では、その生息に影響を与える風力発電施設の建設は実施されるべきではありません。風力発電施設の建設にあたっては、これら希少鳥類の生息に影響を与えないかどうかを正確に把握するために必要な調査を十分行い、万一影響が生じると考えられた場合は、計画を取りやめるなどの措置が必要です。
根室半島において、風力発電施設の建設計画があった場合、地域の財産である道立自然公園・ラムサール条約湿地の「風蓮湖・春国岱」、日本の重要湿地500「根室半島湿原群」を守るべき立場にある北海道として、その計画が希少鳥類の生息、及び「風蓮湖・春国岱」「根室半島湿原群」に影響を与えないかどうかを十分にご確認いただき、適切な対応をくださるよう要望します。
以上
(以下別紙、参考資料は省略)
日野鳥発第72号
平成18年12月7日
根室市長
長谷川 俊輔 様
東京都渋谷区初台1-47-1
小田急西新宿ビル1F
財団法人 日本野鳥の会
会 長 柳生 博
日本野鳥の会 根室支部
支部長 細川憲了
希少鳥類の生息する根室半島の保全に関する要望書
(風力発電の計画に際して)
平素より当会の環境保全活動に関するご理解、ご協力に対し、深く感謝申し上げます。さて、既にご承知かと存じますが、根室半島には、ラムサール条約湿地「風蓮湖・春国岱」をはじめ、多様な野鳥や野草などの野生生物が暮す、豊かな自然環境があります。特に鳥類では、種の保存法 国内希少野生動植物種13種、文化財保護法 特別天然記念物2種、天然記念物8種の生息が確認されています。同半島に、風力発電施設が建設された場合、豊かな自然環境が損なわれる、あるいは、これらの鳥類の飛行経路が変更される、繁殖が阻害される、衝突事故が発生するなどの影響が危惧されます。根室半島の貴重な自然環境は、根室市の財産であり、また貴重な観光資源でもあります。そこで、根室半島の豊かな自然環境の保全のため、下記の通り要望いたします。
記
根室市の財産であり、貴重な観光資源でもある、根室半島の豊かな自然環境、多様な野生生物の生息が、風力発電施設の建設により損なわれないよう、地域住民や地元自然保護団体などと協働しながら、根室市として、適切な計画のみを認められるなどの対応をいただけますことを要望いたします。
理由は以下の通りです。
(1) 根室半島は、オオワシ・オジロワシ(種の保存法 国内希少野生動植物種、文化財保護法 天然記念物)の重要な越冬地になっています。
根室半島では、10月から4月にかけてオオワシが越冬に訪れます。また、オジロワシは、1年中確認され、10月から4月にかけて越冬のため飛来数が増加し、根室半島全域で見られます。
2004年2月22日には、根室半島においてオオワシ54.6羽、オジロワシ41.4羽、風蓮湖周辺でオオワシ738.4羽、オジロワシ184.6羽が確認され、根室半島と風蓮湖周辺で確認された総数は、全国で確認されたオオワシの34.09%、オジロワシの20.36%になります(オジロワシ・オオワシ合同調査グループ 未発表)。また、2006年2月13日には、風蓮湖周辺においてオオワシ919羽、オジロワシ239羽が確認されています(日本野鳥の会 未発表)。
オオワシ、オジロワシは、ご承知のとおり、ともに種の保存法で国内希少野生動植物種に、文化財保護法で天然記念物に、北海道RDBで絶滅危惧種とされ、環境省RDBでは、オオワシは絶滅危惧II類に、オジロワシは絶滅危惧IB類に指定される希少鳥類であり、根室半島を生息地としております。
特にオジロワシは、風力発電施設との衝突事故が根室半島で1回、他地域で4回確認されており、事故が発生する可能性が高い種であると考えられます。
両種の越冬地である根室半島で、風力発電施設の建設が計画された際は、計画予定地付近で越冬期に両種の生息が確認される可能性が非常に高いと考えられます。
しかし、根室半島全域において、越冬期に両種の移動経路・飛行高度・行動(採食、休息など)が正確に調査されたことはなく、その利用状況は明確になっておりません。両種の保護のためには、こうした基礎的な生態の把握を行って、風力発電施設による影響を予測しておく必要があります。
(2) オジロワシの営巣が、根室半島、風蓮湖周辺でこれまでに17箇所確認されています。
天然記念物、国内希少野生動植物種に指定されているオジロワシの営巣が、1992年以降の観察により、これまで根室半島で7箇所、風蓮湖周辺で10箇所確認されております(白木 未発表)。
特に、歯舞湿原周辺では2箇所の営巣が確認されており、トーサンポロ沼から太平洋側へ移動するなど、半島中央部を縦断するように利用している個体がいるとわかっています(山口・長岡 2006)。この調査は2006年7月7、9日の2日間のみ実施されたものであり、繁殖期を通しての調査ではないにもかかわらず、この地域における危険性が明瞭に示されています。
同種の繁殖地である根室半島に、風力発電施設が建設された場合、エサ運び、造巣などの活動が頻繁に行われるため、営巣地周辺を高頻度で移動するため、施設周辺の同種の繁殖が阻害されることが考えられます。
(3) タンチョウ(種の保存法 国内希少野生動植物種、文化財保護法 特別天然記念物)の営巣が、根室半島、風蓮湖周辺で36箇所確認されています。
タンチョウの営巣が、2006年に根室半島で11箇所、風蓮湖周辺で25箇所確認されております(正富ほか 未発表)。同種は、種の保存法で国内希少野生動植物種に、文化財保護法で特別天然記念物に、北海道RDBで絶滅危惧種とされ、環境省RDBでは絶滅危惧II類に指定される希少鳥類です。
同種の繁殖地である根室半島、風蓮湖周辺に、風力発電施設が建設された場合、エサ運び、造巣などの活動が頻繁に行われ、営巣地周辺を高頻度で移動するため、施設周辺の同種の繁殖が阻害されることが考えられます。
(4) 根室半島では、以下39種の希少鳥類が確認されています。
根室半島では、上記以外にも別紙のように非常に多種の希少鳥類が確認されております。種の保存法、文化財保護法、環境省RDB、北海道RDBに指定されている種は、各々13種、10種、39種、31種、総数39種になります。
これらの生息を阻害しないためには、上記(1)、(2)、(3)のことも考え合わせ、そもそも根室半島が風力発電施設の計画地として適当かどうかをあらかじめよく検討して行く必要があります。
(5) 根室半島には、環境省(2002)において「日本の重要湿地500」に指定される「根室半島湿原群」に含まれる湿原が点在しています。
根室半島には、「日本の重要湿地500」に指定される「根室半島湿原群」があります。この湿原群は、根室半島に点在する複数の湿原を指しております。構成湿原としては、根室半島湿原、ホロニタイ・フレシマ湿原、タンネ沼・オンネ沼、南部沼、長節湖、落石岬湿原、落石西湿原、ヒキウス沼、沖根辺沼があげられております。それぞれ、希少動植物種が生息している、あるいは、多様な生物相が確認されているなど、「日本の重要湿地500」の基準を満たしております。
これらの重要な湿地、及び周辺に風力発電施設が建設された場合、風車の設置、送電線の埋設工事、取り付け道路の設置などにより、水の循環を分断し、希少動植物種の生息及び、「根室半島湿原群」の生態系に悪影響を与えることが考えられます。
参考資料:・環境省.2002.日本の重要湿地500.東京
(6) 根室半島基部には、ラムサール条約湿地「風蓮湖・春国岱」があり、野鳥の重要な生息地となっています。同地に飛来する、生態系の上位に位置する鳥類が根室半島で影響を受ければ、「風蓮湖・春国岱」の生態系にも影響を及ぼします。
根室半島の基部に位置する「風蓮湖・春国岱」は、2005年11月にラムサール条約湿地に登録されました。同地は、ラムサール条約湿地の登録基準を5つ満たしています。
そのうち、基準5「定期的に2万羽以上の水鳥を支えている」については、渡りの時期のガンカモ類の最大渡来数が54,839羽確認されており、定期的に2万羽以上の水鳥を支えていることから基準を満たしています。
また、基準6「地域個体群の個体数1%を定期的に支えている。」については、オオハクチョウは10,331羽、ヒシクイは1,800羽、コクガンは2,000羽、ヒドリガモは8,673羽、オナガガモは11,442羽、スズガモは19,076羽、ホオジロガモは1,517羽、タンチョウは20~40羽、キアシシギは約400~1,900羽の渡来が確認されており、各々、東アジア地域個体群の個体数1%(各600羽、550羽、50羽、7,500羽、7,500羽、3,000羽、750羽、8羽、400羽)を定期的に支えていることから基準を満たしています。
以上の種類に加えて、「風蓮湖・春国岱」ではこれまで約280種の鳥類が確認されています。これらの鳥類は「風蓮湖・春国岱」ばかりではなく、移動により隣接地である根室半島を併せて利用していることが考えられます。根室半島で、これら鳥類の生息に影響があれば、「風蓮湖・春国岱」の生態系にも影響を及ぼします。ラムサール条約湿地の保全管理のため、これらの鳥類の移動、生息状況を十分に検討する必要があります。
参考資料:環境省.2004. 第2回ラムサール条約湿地検討会議 資料2-1 選定基準見直し後の基準別湿地一覧.東京
以上のように、根室半島には、ラムサール条約湿地「風蓮湖・春国岱」、日本の重要湿地500「根室半島湿原群」があり、また、根室半島全域で多くの希少鳥類が確認されております。特に、希少鳥類については重要な生息地になっており、同地域での風力発電施設の建設は、これら希少鳥類の飛行経路、繁殖行動、越冬の阻害、衝突事故の発生を引き起こすことが懸念されます。希少鳥類保護のため、その生息地の保全が必要です。これら希少鳥類の生息地である同地域では、その生息に影響を与える風力発電施設の建設は実施されるべきではないと考えられます。風力発電施設の建設にあたっては、これら希少鳥類の生息に影響を与えないかどうかを正確に把握するために必要な調査を十分行い、万一影響が生じると考えられた場合は、計画を取りやめるなどの措置が必要です。
根室半島において、風力発電施設の建設計画があった場合、根室の財産を守るべき立場にある根室市として、その計画が希少鳥類の生息や、多様な生物相、及び「風蓮湖・春国岱」、「根室半島湿原群」などの豊かな自然環境に影響を与えないかどうかを検討し、必要に応じて地域住民や、地元自然保護団体と協力しながら、適切な対応をとっていただけることを期待いたします。また、私どもとしましても調査等に協力する用意があります。
以上
(以下別紙、参考資料は省略)