プレスリリース 2006.09.11

鳥類の愛玩飼養は、すみやかに終息させるべき
― 野生鳥獣の愛玩飼養はメジロとホオジロに限り1世帯1羽のみ認められている。
この2種とも愛玩飼養の許可対象からはずし、野生鳥類の愛玩飼養の歴史に終止符をー

2006.9.11

鳥獣保護法は、今年の6月8日、通常国会において改正された。しかし多数の附帯決議が付いたことに表れているとおり、抜本的な問題は今回の改正では解決されておらず、鳥獣保護行政には課題が山積しているのが実情である。このような中で、改正法を受けて各都道府県の策定する「鳥獣保護事業計画」の新たな基本指針を検討するため、環境省では3つのワーキンググループ(WG)を立ち上げた(鳥獣保護事業に関するWG、特定鳥獣保護管理計画に関するWG、人材育成に関するWG)。これらのWGには学識経験者だけでなく、それぞれNGO職員を委員として迎えており、多様な意見に耳を傾けようとする同省の姿勢は高く評価できる。
これらWGで野生鳥獣の保護管理についての様々な課題について議論が重ねられているが、当初期待したような成果が今ひとつ出せないでいる。利害の調整が難しい局面に及ぶと、どうしても従来路線の延長で穏便に決着を図ろうとしてしまう傾向がある。その典型例が、野生鳥獣の愛玩飼養の議論である。
日本国内に生息する野生鳥獣の愛玩飼養についての考え方は、実は基本的なところで一致を見ている。それは、以下のとおりである。「野生鳥獣の愛玩飼養は、鳥獣は本来自然のままに保護すべきであるという理念にもとるのみならず、鳥獣の乱獲を助長する恐れもあるので、飼養のための捕獲又は採取の規制の強化に努めるものとする」(環境省作成資料より)。この考え方の原型は、実は50年も昔にさかのぼることができる(昭和32年鳥獣審議会答申「本来は捕獲を禁止すべきものであるが、旧来より飼養の慣行もあるので、制度の運用に当たっては、学術研究、教育参考資料、愛がん飼養のため必要な場合に限り、最小限度においてこれを許可するようにすべきである」)。そもそも、昭和25年には野生鳥獣の愛玩飼養を制限する方向性が出されていたが、一挙にすべての飼養を禁止すると、野鳥の飼養慣行がまだかなり残っていた当時の社会状況から混乱が起きるとして、ヒバリ、ウグイス、ヤマガラ、メジロ、ホオジロ、マヒワ、ウソの7種に限って飼養目的の捕獲を許可するという制度が、やむを得ない措置として導入された。その後、上記答申の考え方に沿って許可対象種は削減されてきた。昭和53年の自然環境保全審議会答申には、より明瞭に廃止の考えが示された(「日本に生息する種類の鳥獣の愛がん飼養を広範囲に認めることは、鳥獣は本来自然のままに保護すべきであるという理念にもとるのみならず、鳥獣の乱獲を助長することとなるおそれがあるので、廃止することが望ましい」)。これを受け昭和54年にヒバリとヤマガラが、昭和55年にウグイスが許可対象からはずされた。平成11年にはマヒワとウソがはずされ、残すところメジロとホオジロの2種になっている。
そして、今回のワーキンググループでは、ホオジロをはずし、メジロ1種を残すという提案がなされている。ホオジロは飼養数が減っている現状にかんがみて賢明な判断である。メジロについては、9月5日に開催された第3回鳥獣保護事業に関するWGでは、ホオジロ同様許可対象からはずすべきであるという意見がWWFジャパンのみならず、他の委員からも強く出された。一度にすべて禁止すれば混乱が生じるから漸次削減していくという措置に50年以上を費やしているのは、社会通念上もはや通用しない。今回は社会的状況が整っており、2種とも許可対象からはずすのが妥当であろう。
鳴き合せ会での入賞をねらい、声の美しいメジロを違法捕獲する事例があとを絶たないのは、各種報道のとおりである。違法行為に抜け穴を用意しているかのような措置は、そろそろ終わりにすべきである。特定外来生物の指定にあたって、ブラックバスをすみやかに指定すべきであるとした小池大臣の手腕に注目したい。

お問合せ先
WWFジャパン 草刈秀紀 Tel:03-3769-1713 /広報担当:大倉寿之
日本野鳥の会 古南幸弘 Tel:042-593-6872
全国野鳥密猟対策連絡会 中村桂子 Tel:075-864-0777


参考

■野鳥の密猟事例
  • 2006年5月12日 茨城県高萩署が、鳥獣保護法違反容疑で高萩市の60歳男性宅を家宅捜索し、メジロ、ヤマガラ、オオルリなど9種76羽の野鳥を押収。
  • 2006年3月17日 愛知県新城署が鳥獣保護法違反容疑で、豊橋市の62歳男性を書類送検。2005年の11月14日にメジロ10羽、ウグイス3羽を無許可で捕獲、15日にもウグイス3羽を同様に捕獲した。
  • 2005年11月15日 徳島県牟岐署は、海部郡の70歳男性と74歳男性を鳥獣保護法違反容疑で書類送検。70歳男性はメジロ5羽、オオルリ1羽、ホオジロ2羽の計8羽を捕獲。74歳男性は、メジロ3羽を捕獲。

以上は氷山の一角であるが、特に、2005年7月に奈良県で、違法捕獲により摘発された鳴き合わせ会メンバーが、愛玩飼養登録を受けていた事例や、2000年8月に京都府でメジロを密猟した男性が、愛玩飼養許可制度をたてに正当化しようとした事例は、同制度の悪用事例として見逃すことは出来ない。
日本野鳥の会では、飼育が認められている野鳥が2種あること自体が、密猟などの問題を助長しているとし、出来るだけ早期に全面禁止にすべきとかねてから主張している。全国野鳥密猟対策連絡会でも、同様の申し入れを環境省に対して、繰り返し行なっている。

■都道府県の対応状況

 すでに独自の判断で捕獲許可を認めていない都道府県は、メジロ11、ホオジロ14に上る。つまり、都道府県が国に先行している例がこれだけあることになる。また、全国野鳥密猟対策連絡会が平成16年に各都道府県に問い合わせたところ、23府県から、実際には新たな捕獲許可を出していないとの回答を得ている。

■メジロの飼養数は、過去に許可対象からはずれた鳥類にくらべて実は少ない

平成16年度のホオジロの飼養登録数は737羽、メジロ5,977羽である。両種ともに、過去に愛玩飼養目的の捕獲許可対象からはずれた鳥類とくらべても少ない。すなわち、ヤマガラ6,048羽(昭和53年度)、ウグイス14,565羽(昭和54年度)。いずれも、捕獲許可を打ち切る前年の時点の数字である。現在のメジロよりもずっと飼養数が多い時点で、捕獲許可を打ち切っている。

※トラバサミという危険で残忍なわなの使用禁止も、附帯決議に懸案事項として書き込まれているものの、事態は思うように進展していないことも付け加えておきたい。狩猟での使用は禁止される見込みで、これについては評価できるが、有害鳥獣捕獲(許可捕獲)では依然として使用が許可される方向である。


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