種子散布者として期待できる野鳥20種

ここでは、種子散布への貢献度が高いと思われる野鳥の一部を紹介します。また、各種の説明の後にあるURLをクリックすると(公財)日本野鳥の会が運営する「野鳥を楽しむポータルサイト「BIRD FAN」のページへ移動します。こちらでは、対象種の鳴き声なども確認できます。

■コゲラ(キツツキ科)

ほぼ全国で見られるもっとも身近な、スズメほどの大きさのキツツキ。都市部の公園の林や街路樹などでも目にすることが増えてきました。キツツキというと木を叩き中にいる虫を食べているイメージが強いですが、木の実を食べることもあり、種子散布へ貢献しています。

種子散布の対象となる主な樹種:
アケビ(アケビ科)、ナナカマド類(バラ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、ヌルデ(ウルシ科)、ハゼノキ(ウルシ科)、ツルウメモドキ(ニシキギ科)、コマユミ(ニシキギ科)、ミズキ(ミズキ科)、ヤマグワ(クワ科)、ムラサキシキブ(シソ科)

BIRD FAN コゲラ


■アカゲラ(キツツキ科)

主に北海道から本州の林に生息している、ムクドリほどの大きさのキツツキ。木の中の虫を中心に食べていますが、木の実も食べており、種子散布に貢献しています。

種子散布の対象となる主な樹種:
イチイ(イチイ科)、ヤマザクラ(バラ科)、ノイバラ(バラ科)、ナナカマド類(バラ科)、ヌルデ(ウルシ科)、ハゼノキ(ウルシ科)、ヤマグワ(クワ科)

BIRD FAN アカゲラ


■アオゲラ(キツツキ科)

本州から屋久島の林に生息する、ハトより少し小さいキツツキ。木の中の虫のほか、地面で虫を食べる種で、木の実なども食べたりすることが知られています。キツツキの中では多様な木の実を食べ、種子散布に貢献しています。

種子散布の対象となる主な樹種:
イチイ(イチイ科)、エノキ(ニレ科)、アケビ(アケビ科)、ヒサカキ(ツバキ科)、ヤマザクラ(バラ科)、ノイバラ(バラ科)、ナナカマド類(バラ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、ヌルデ(ウルシ科)、ハゼノキ(ウルシ科)、ミズキ(ミズキ科)、ムラサキシキブ(シソ科)、ガマズミ(スイカズラ科)

BIRD FAN アオゲラ


■モズ(モズ科)

ヒヨドリより少し大きいモズは、ほぼ全国で見られます。小さなハンターですが、昆虫やトカゲから時には小鳥なども捕らえます。しかし木の実も食べ、種子散布に貢献しています。

種子散布の対象となる主な樹種:
ムクノキ(ニレ科)、エノキ(ニレ科)、ヒサカキ(ツバキ科)、ノイバラ(バラ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、クロガネモチ(モチノキ科)、ミズキ(ミズキ科)、ヤマグワ(クワ科)、ムラサキシキブ(シソ科)

BIRD FAN モズ


■カケス (カラス科)

屋久島よりも北に生息する、ハトほどの大きさの鳥。木の実をよく食べ、フンで種子散布に貢献しています。また、食べ物を地面などに隠す習性があり、食べ残したり、隠した場所を忘れたりすることでも種子散布に貢献しています。

種子散布の対象となる主な樹種:
イチイ(イチイ科)、エノキ(ニレ科)、クスノキ(クスノキ科)、アケビ(アケビ科)、ヒサカキ(ツバキ科)、ナナカマド類(バラ科)、ヌルデ(ウルシ科)、ツルウメモドキ(ニシキギ科)、ミズキ(ミズキ科)、キヅタ(ウコギ科)、エゴノキ(エゴノキ科)、ガマズミ(スイカズラ科)

BIRD FAN カケス


■ハシボソガラス(カラス科)

身近なカラス2種のうちの1種。九州以北に分布し、農耕地や河川敷、海岸など開けた環境を好みます。カラスというとゴミをあさるイメージをもっている方も多いですが、木の実もよく食べ、カケス同様に食べ物を地面に隠すことなどで種子散布へ貢献しています。

種子散布の対象となる主な樹種:
ヤマモモ(ヤマモモ科)、ムクノキ(ニレ科)、エノキ(ニレ科)、クスノキ(クスノキ科)、ヤマザクラ(バラ科)、ナナカマド類(バラ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、ハゼノキ(ウルシ科)、クロガネモチ(モチノキ科)、エゴノキ(エゴノキ科)

BIRD FAN ハシボソガラス


■ハシブトガラス(カラス科)

身近なカラス2種のうちの1種。ほぼ全国に分布し、高い山から都会のビル群などへも適応して生息しています。カラスというとゴミをあさるイメージをもっている方も多いですが、木の実もよく食べ、こちらもカケス同様に食べ物を地面に隠すことなどで種子散布へ貢献しています。

ヤマモモ(ヤマモモ科)、ムクノキ(ニレ科)、エノキ(ニレ科)、クスノキ(クスノキ科)、ヤマザクラ(バラ科)、ナナカマド類(バラ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、ヌルデ(ウルシ科)、ハゼノキ(ウルシ科)、クロガネモチ(モチノキ科)、ミズキ(ミズキ科)、ヤマグワ(クワ科)、エゴノキ(エゴノキ科)

BIRD FAN ハシブトガラス(声はありません)


■ヤマガラ(シジュウカラ科)

ほぼ日本全国で1年を通してみられる、スズメサイズの小鳥。木の実を丸呑みして種子散布しているほか、カケス同様に木の隙間などに隠すことでも種子散布に貢献しています。

種子散布の対象となる主な樹種:
イチイ(イチイ科)、ムクノキ(ニレ科)、エノキ(ニレ科)、クスノキ(クスノキ科)、アケビ(アケビ科)、ヤマザクラ(バラ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、ヌルデ(ウルシ科)、ミズキ(ミズキ科)、エゴノキ(エゴノキ科)、ムラサキシキブ(シソ科)、クサギ(シソ科)

BIRD FAN ヤマガラ


■シジュウカラ

ほぼ日本全国で1年を通して林や市街地の公園などでみられる、スズメサイズの身近な小鳥です。木の実もよく食べ、種子散布へ貢献しています。

種子散布の対象となる主な樹種:
ムクノキ(ニレ科)、エノキ(ニレ科)、アケビ(アケビ科)、ヒサカキ(ツバキ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、サンショウ(ミカン科)、ヌルデ(ウルシ科)、ハゼノキ(ウルシ科)、コマユミ(ニシキギ科)、キヅタ(ウコギ科)、エゴノキ(エゴノキ科)、クサギ(シソ科)

BIRD FAN シジュウカラ


■ヒヨドリ(ヒヨドリ科)

全国的に身近な野鳥のヒヨドリは、1年を通して木の実を食べることがわかっています。また、ヒヨドリは生息数も多く種子散布において最も重要な種のひとつで、彼らの好む樹種を生かせば種子散布によって豊かな森づくりの可能性が広がります。

種子散布の対象となる主な樹種:
イチイ(イチイ科)、ヤマモモ(ヤマモモ科)、ムクノキ(ニレ科)、エノキ(ニレ科)、クスノキ(クスノキ科)、アケビ(アケビ科)、ヒサカキ(ツバキ科)、ヤマザクラ(バラ科)、ノイバラ(バラ科)、ナナカマド類(バラ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、サンショウ(ミカン科)、ヌルデ(ウルシ科)、ハゼノキ(ウルシ科)、クロガネモチ(モチノキ科)、ツルウメモドキ(ニシキギ科)、コマユミ(ニシキギ科)、ミズキ(ミズキ科)、キヅタ(ウコギ科)、ヤマグワ(クワ科)、エゴノキ(エゴノキ科)、ネズミモチ(モクセイ科)、ムラサキシキブ(シソ科)、クサギ(シソ科)、ガマズミ(スイカズラ科)

BIRD FAN ヒヨドリ


■エナガ(エナガ科)

九州以北の低地から低山の林に分布します。全長は14㎝弱とスズメほどですが、長い尾も含まれているため、身体はとても小さくピンポン玉ていどの大きさしかありません。小さな木の実をついばみ、種子散布へ貢献しています。

種子散布の対象となる主な樹種:
イチイ(イチイ科)、アケビ(アケビ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、コマユミ(ニシキギ科)、ミズキ(ミズキ科)

BIRD FAN エナガ


■メジロ(メジロ科)

全国で見られ、北海道や山地では冬に暖地や低地に移動する、スズメより小さい小鳥。木の実もよく食べ、種子散布に貢献しています。また、花の蜜も大好きでサクラやツバキの蜜を吸う姿を目にすることもあります。

種子散布の対象となる主な樹種:
イチイ(イチイ科)、ヤマモモ(ヤマモモ科)、ムクノキ(ニレ科)、エノキ(ニレ科)、クスノキ(クスノキ科)、アケビ(アケビ科)、ヒサカキ(ツバキ科)、ヤマザクラ(バラ科)、ノイバラ(バラ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、サンショウ(ミカン科)、ヌルデ(ウルシ科)、ハゼノキ(ウルシ科)、クロガネモチ(モチノキ科)、ツルウメモドキ(ニシキギ科)、コマユミ(ニシキギ科)、ミズキ(ミズキ科)、キヅタ(ウコギ科)、ヤマグワ(クワ科)、エゴノキ(エゴノキ科)、ネズミモチ(モクセイ科)、ムラサキシキブ(シソ科)、クサギ(シソ科)、ガマズミ(スイカズラ科)

BIRD FAN メジロ


■ヒレンジャク(レンジャク科)

冬に全国に飛来しますが、年によってむらがあり、全く飛来しない年もあります。大きさはヒヨドリほど。レンジャク類というとヤドリギという寄生木に群がる姿を想像するバードウォッチャーの方も多いと思われますが、他の木の実も好み種子散布に貢献しています。

種子散布の対象となる主な樹種:
イチイ(イチイ科)、エノキ(エノキ科)、ヒサカキ(ツバキ科)、ノイバラ(バラ科)、ナナカマド類(バラ科)、クロガネモチ(モチノキ科)、ツルウメモドキ(ニシキギ科)、キヅタ(ウコギ科)、ガマズミ(スイカズラ科)

BIRD FAN ヒレンジャク(声はありません)


■ムクドリ(ムクドリ科)

オレンジ色の口ばしと脚が特徴の野鳥。ほぼ全国的に見られ、多くの種類の木の実を集団でついばみます。種子散布への貢献度はかなり高いといえます。

種子散布の対象となる主な樹種:
イチイ(イチイ科)、ヤマモモ(ヤマモモ科)、ムクノキ(ニレ科)、エノキ(ニレ科)、クスノキ(クスノキ科)、アケビ(アケビ科)、ヒサカキ(ツバキ科)、ヤマザクラ(バラ科)、ノイバラ(バラ科)、ナナカマド類(バラ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、ヌルデ(ウルシ科)、ハゼノキ(ウルシ科)、クロガネモチ(モチノキ科)、ツルウメモドキ(ニシキギ科)、コマユミ(ニシキギ科)、ミズキ(ミズキ科)、キヅタ(ウコギ科)、ヤマグワ(クワ科)、ネズミモチ(モクセイ科)、ムラサキシキブ(シソ科)、クサギ(シソ科)、ガマズミ(スイカズラ科)

BIRD FAN ムクドリ


■コムクドリ(ムクドリ科)

夏に本州中部の山地に、また東北、北海道では低地の明るい林に渡来します。大きさは、名前の通りムクドリよりもひと回り小さく、秋頃には木の実をよく食べ、種子散布へ貢献します。

種子散布の対象となる主な樹種:
ムクノキ(ニレ科)、エノキ(ニレ科)、クスノキ(クスノキ科)、ノイバラ(バラ科)、サンショウ(ミカン科)、ハゼノキ(ウルシ科)、ミズキ(ミズキ科)、ヤマグワ(クワ科)、クサギ(シソ科)

BIRD FAN コムクドリ


■シロハラ(ヒタキ科)

主に冬、ほぼ全国に飛来しますが、西日本に多い傾向があります。大きさは、ヒヨドリほど。暗い林を好み地面でエサをとることが多いですが、木の実をついばむことも多々あり、種子散布へ貢献します。

種子散布の対象となる主な樹種:
イチイ(イチイ科)、ムクノキ(ニレ科)、エノキ(ニレ科)、クスノキ(クスノキ科)、ヒサカキ(ツバキ科)、ノイバラ(バラ科)、ナナカマド類(バラ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、ヌルデ(ウルシ科)、クロガネモチ(モチノキ科)、ミズキ(ミズキ科)、キヅタ(ウコギ科)、ネズミモチ(モクセイ科)、ムラサキシキブ(シソ科)

BIRD FAN シロハラ


■アカハラ(ヒタキ科)

本州以北のやや高い山地や北海道で繁殖し、冬は暖地や低地で見られます。ヒヨドリほどの大きさ。林の縁などの地面でエサをとることが多いですが、秋冬は木の実を食べることも多く種子散布に貢献します。

種子散布の対象となる主な樹種:
イチイ(イチイ科)、ムクノキ(ニレ科)、エノキ(ニレ科)、クスノキ(クスノキ科)、ヒサカキ(ツバキ科)、ノイバラ(バラ科)、ナナカマド類(バラ科)、ヌルデ(ウルシ科)、ハゼノキ(ウルシ科)、クロガネモチ(モチノキ科)、ツルウメモドキ(ニシキギ科)、コマユミ(ニシキギ科)、ミズキ(ミズキ科)、キヅタ(ウコギ科)、ネズミモチ(モクセイ科)、ムラサキシキブ(シソ科)、クサギ(シソ科)、ガマズミ(スイカズラ科)

BIRD FAN アカハラ


■ツグミ(ヒタキ科)

冬にかけて日本に飛来するヒヨドリほどの大きさの鳥。渡ってきてすぐの晩秋の頃には、林などで木の実をよく食べ、種子散布に貢献します。

種子散布の対象となる主な樹種:
イチイ(イチイ科)、ヤマモモ(ヤマモモ科)、ムクノキ(ニレ科)、エノキ(ニレ科)、クスノキ(クスノキ科)、アケビ(アケビ科)、ヒサカキ(ツバキ科)、ヤマザクラ(バラ科)、ノイバラ(バラ科)、ナナカマド類(バラ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、ヌルデ(ウルシ科)、ハゼノキ(ウルシ科)、クロガネモチ(モチノキ科)、ツルウメモドキ(ニシキギ科)、コマユミ(ニシキギ科)、ミズキ(ミズキ科)、キヅタ(ウコギ科)、ヤマグワ(クワ科)、エゴノキ(エゴノキ科)、ネズミモチ(モクセイ科)、ムラサキシキブ(シソ科)、クサギ(シソ科)、ガマズミ(スイカズラ科)

BIRD FAN ツグミ


■ルリビタキ(ヒタキ科)※画像はオス

主に四国以北の高山の林や北海道の針葉樹で繁殖し、冬は本州中部以南の低地や山麓の暗いヤブに飛来する、スズメサイズの小鳥です。秋には木の実も食べ、種子散布に貢献します。

種子散布の対象となる主な樹種:
ヒサカキ(ツバキ科)、ノイバラ(バラ科)、ナナカマド類(バラ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、サンショウ(ミカン科)、ヌルデ(ウルシ科)、ハゼノキ(ウルシ科)、コマユミ(ニシキギ科)、ネズミモチ(モクセイ科)、ムラサキシキブ(シソ科)

BIRD FAN ルリビタキ


■ジョウビタキ(ヒタキ科)※画像はオス

主に冬に全国に飛来しますが、積雪の多い地域ではあまり越冬しません。スズメサイズの小鳥。飛来当初の秋頃には様々な樹種の木の実をよく食べ、種子散布に貢献します。

種子散布の対象となる主な樹種:
ヒサカキ(ツバキ科)、ノイバラ(バラ科)、ナナカマド(バラ科)、カラスザンショウ(ミカン科)、サンショウ(ミカン科)、ヌルデ(ウルシ科)、ハゼノキ(ウルシ科)、クロガネモチ(モチノキ科)、ツルウメモドキ(ニシキギ科)、コマユミ(ニシキギ科)、キヅタ(ウコギ科)、ネズミモチ(モクセイ科)、ムラサキシキブ(シソ科)、クサギ(シソ科)、ガマズミ(スイカズラ科)

BIRD FAN ジョウビタキ


★スズメとキジバトのひみつ★
身近な鳥としてイメージするのは、スズメ、ハト、カラスではないでしょうか? ここまで、種子散布に貢献する野鳥を挙げてきましたが、その中に、スズメとハトが出てきていません。じつは、スズメとキジバトは種子散布という点においては、貢献度が低い野鳥です。スズメは、ヒヨドリやメジロなどと違って太いペンチのような口ばしを持っていてるので、実もタネも潰して食べることができます。一方、キジバトは、スズメのような太い口ばしではなく細い口ばしをしていますが、ハトの仲間は消化器官が発達しているため、タネの多くを消化することができるからです。