野鳥保護資料集第32集 地域と自然のための風力発電とは

 風力発電施設の立地によっては、地域住民による反対活動などの地域紛争がしばしば起こることが報告されるようになってきました。紛争の要因としては、野鳥の生息地を中心とした自然環境の破壊、低周波騒音被害の発生、景観の悪化などがあげられます。
 風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーは分散型電源といって、消費地の近傍に小規模の発電所を設置し、発電所周辺の住民が中心となって電気を使用し、地域住民が発電所設置による何らかの便益を得られるのが本来の姿です。しかし、日本では発電施設の大規模化が進み、また、特に風力発電においてはある地域に計画地が複数生じる一極集中型の開発が進んでいます。それは、再生可能エネルギーの賦存量が多い地域が、大手事業者などに風力や太陽光エネルギーを支配され、地域の自然環境を搾取され、地域住民は施設立地による恩恵は何もなく、ただ疲弊していくエネルギー植民地のようです。
 そのため当会は、なぜ日本ではこのように地域住民からの自然資源の搾取が起き、また、地域住民は直接的な便益を得ることができないのか、欧米でも風力発電の導入が盛んだが、このような問題は起きていないのかを知ることを目的に、2017年10月15日(日)に北海道・豊富町でシンポジウム「地域と自然のための風力発電とは」を開催しました。
 国内で多くの再生可能エネルギー導入を手掛け、海外の事情にも詳しい環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏や地域住民の代表としてサロベツ・エコ・ネットワークの長谷部真氏らをシンポジウムに招き、風力発電や太陽光発電の導入と地域住民との関係について海外事例と国内での状況について学び、議論しました。本資料集では、その内容について報告しています。
 当会は、日本で地域住民にとってメリットのある、地域住民が主体となる風力発電など再生可能エネルギーの導入はどのようなものかについて一人一人や地域住民が考えるきっかけとなることを期待し、本書を発行しました。そして、風力発電や太陽光発電と地域住民との共存がはかられること、そして再生可能エネルギーが真にクリーンなエネルギー源となることを期待しております。

本書の内容

第一部 講演

  1. 自然と地域と調和する自然エネルギーによる持続可能なエネルギー社会に向けて
    飯田哲也(環境エネルギー政策研究所 所長)
  2. 風力発電を対象とした環境アセスメントにおける合意形成への課題
    北村亘(東京都市大学 講師)
  3. 風力発電計画と地域の自然環境
    長谷部真(サロベツ・エコ・ネットワーク)
  4. 景観と人の暮らし
    稲垣順子(とんこり堂)

第二部 パネルディスカッション

パネリスト:飯田哲也、北村亘、長谷部真、稲垣順子
コメンテーター:小杉和樹
コーディネーター:浦達也

*資料集全文(PDF:10MB)を、以下からダウンロードできます。
表紙