野鳥保護資料集 第26集「風力発電が鳥類に及ぼす影響の調査マニュアル」

第26集「風力発電が鳥類に及ぼす影響の調査マニュアル」の表紙の写真

当会は、風力発電による自然環境や鳥類への環境影響を評価し、悪影響を回避、最小化するための制度と方法論を日本でも確立することを目指し、2001 年以来、活動してきました。活動を通して明らかになったのは、わが国では風力発電施設建設後の鳥類への影響評価について、標準的な調査方法が確立されていないため、調査結果を比較できず、客観的な事後評価が困難な状態にあるということでした。
そこで2008 年10 月、影響評価のための標準的な調査方法を確立するための検討会を、実際に稼動しているウィンドファーム(むつ小川原ウィンドファーム/エコ・パワー社)で開催しました。
本書で取り上げている調査方法は、世界的にも調査研究が進んでいるカリフォルニア州のアルタモントパス・ウィンドリソースエリアで、ショーン・スモールウッド博士が関わる研究グループにより開発され用いられているものです。私たちは、バードコリジョン(鳥の衝突)の被害実態と衝突率を調査することについて、この調査方法を標準的に用いることを推奨します。
しかし、日本国内の風力発電施設は植生や地形、気候などの環境が異なります。そのため、本書の調査方法を国内で適用し、さらに他の地域や国での結果と比較可能にしていくには、日本の立地環境に合わせてスモールウッド博士らの方法を改変する必要があります。
そこで、スモールウッド博士らによる調査方法を国内で使用する際に課題になると考えられる環境要因を挙げ、その課題をどのように克服できるかについていくつか案を示し、調査方法のマニュアルとして構成したのが本書です。

●目次●

風力発電が鳥類に及ぼす影響の調査マニュアル ・・・・・ 12
K・ショーン・スモールウッド

  1. 調査目標と目的の設定 ・・・・・ 16

  2. 死亡率の推定 ・・・・・ 18
    2-1 死亡率の算出方法 ・・・・・ 18
    2-2 衝突危険率の算出方法 ・・・・・ 20
    2-3 データ収集 ・・・・・ 22
    2-4 発見されなかった死亡個体に対する補正 ・・・・・ 28
      推定死亡率を補正するための方程式 ・・・・・ 30
      死亡率の補正項を推定する ・・・・・ 34
    2-5 補正項を算出式に組み入れる ・・・・・ 52

  3. 死亡個体の探索調査 ・・・・・ 54
    3-1 死亡個体の定義 ・・・・・ 54
    3-2 探索調査の実施頻度 ・・・・・ 54
    3-3 探索範囲 ・・・・・ 56
    3-4 探索路 ・・・・・ 58
    3-5 死亡個体の記録 ・・・・・ 58
    3-6 データの管理 ・・・・・ 64

  4. 利用率調査 ・・・・・ 64
    4-1 調査の対象種と目的 ・・・・・ 66
    4-2 利用率の算出式 ・・・・・ 68
    4-3 観察定点と範囲の設定 ・・・・・ 74
    4-4 観察時間と実施頻度を設定 ・・・・・ 74
    4-5 観察の記録 ・・・・・ 76
    4-6 バイアスの確認 ・・・・・ 78

◆付録 死亡個体探索調査資料/死亡個体データ表/骨の状態 ・・・・・80
◆参考文献 ・・・・・ 86

日本国内で調査を行なうにあたっての課題 ・・・・・ 93
(財)日本野鳥の会・自然保護室/浦 達也
風車が立地する自然環境条件による死亡率推定へのバイアスと減少方法 ・・・・・ 96

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