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鳥獣保護管理法 Q&A(回答編 Q1~Q10)
- Q1:鳥獣はなぜ保護するのですか?
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自然はいろいろな生物や無機的環境によって形作られています。生物間では食べる食べられるという食物連鎖の関係があります。これらのつながりは、複雑にからみ合ったシステム(生態系)になっています。
ですから鳥や獣を保護することはただ単に、これらの生物を保護するだけでなく自然全体を保護することにつながります。こうして守られた自然は、きれいな空気と水と共に私たち人間にとっても必要な環境です。
- Q2:鳥獣保護管理法のルーツについて教えてください。
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一般に「鳥獣保護管理法」と呼ばれているこの法律は、正式には「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」といい、1963年(昭和38年)に基本的な形が整い、2002(平成14年)に大きな改正が行われて今の形になりました。そこに至る経緯を探っていくと、1892年(明治25年)の「狩猟規則」にたどりつきます。一世紀以上も前に、野生の生き物の保護に関係する法律が生まれていたことになります。
- Q3:鳥獣保護管理法は、もともと「狩猟」についての法律だったのですか?
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そうです。江戸時代には幕府が厳しく狩猟について規制していましたが、明治時代に入って急速にその規則が緩みます。それに伴い、誤射による人身事故や、他人の土地への不法侵入などが急増しました。そこで、安全や秩序維持のために狩猟のルールとして、1873年(明治6年)に「鳥獣猟規則」が作られました。でも、この時点では、すべての鳥獣が狩猟の対象であり、“保護”の思想は入っていないものでした。
- Q4:狩猟を取り締まる法律が、どうして野鳥を守る法律になるのですか?
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1892年(明治25年)の「狩猟規則」で、ツル各種、ツバメ各種、ヒバリ、シジュウカラ、ホトトギス、キツツキ、ムクドリなどが保護鳥獣として指定され、ここで初めて”保護”の思想が取り入れられました。“保護”といっても「野鳥は一部の例外を除いて、原則狩猟していい」という考え方です。やがて、鳥獣の保護繁殖を目的とする禁猟区制度などを盛り込んだ1895年(明治28年)の「狩猟法」として整備されていきます。
「狩猟鳥銃を除いて、原則としてすべての鳥獣は狩猟禁止」と、発想が逆転したのが、1918年(大正7年)の「狩猟法」改正のときです。「狩猟法」はその後たびたび改正され、鳥獣保護区の創設や、罰金、懲役刑の導入などが盛り込まれました。
一方で、より積極的に“保護”を全面に打ち出した法律を作りたい!という声が、本会の中西悟堂初代会長を中心に鳥類保護関係者の間に広がっていきますが、なかなか具体化せず、長年の国会闘争の末、ようやく1963年(昭和38年)に「狩猟法」が「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」(略称:鳥獣保護法)と改名されるに至りました。
それから約40年の間たびたび「鳥獣保護法」は改正されますが、その母体である「狩猟法」時代の思想が未だ色濃く残っており、種や生息環境に関する保護の側面が弱いこと、カタカナ混じりの文語体でわかりにくいこと、1999年に施行された「環境影響評価法」など他の環境関連の法律との連携など、さまざまな課題が指摘されているのです。
- Q5:現在の「鳥獣保護管理法」の目的はどのように定義されていますか?
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第1条に目的が制定されていますから、そのまま引用してみましょう。
「この法律は、鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するとともに、鳥獣による生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害を防止し、併せて猟具の使用に係る危険を予防することにより、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資することを目的とする」
この目的には、「生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与すること」が含まれています。この「生活環境の保全」の解釈が、この法律の有効性に大きく影響してきます。人と野鳥との共存とを目指す私たちにとっては、「野生鳥獣は地球の財産」であり、野鳥と人との共存する社会を目指して考え行動することが(私たち人の)「生活環境の保全」につながる、と考えられるわけですが、行政担当者はもっと狭い解釈をしているという問題点が、保護関係者のなかでは指摘されていました。
しかし、2002(平成14年)の改正の時に、これと並んで掲げられている「生物の多様性の確保」という考え方が新しくとり入れられました。その後、「生物多様性基本法」の制定(2008年(平成20年))でより明確にされました。この法律では、生物の多様性とは「様々な生態系が存在すること並びに生物の種間及び種内に様々な差異が存在すること」と定義されています。そして生物の多様性は人類の存続の基盤であり、地域における固有の財産として地域独自の文化の多様性をも支えている、とされています。現在ではこうしたより広い視野に立った保護の実践が求められていると言えます。
- Q6:具体的には、どのような内容が定められている法律なのですか?
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国の方針に沿って、各都道府県ごとに「鳥獣保護管理事業計画」を作成すること、狩猟の適正化を図るための各種の規制と、鳥獣の捕獲や流通に関することなどが、決められています。
- Q7:鳥獣保護事業計画とはどんなものですか?
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全国的に統一のとれた鳥獣保護行政を計画的に推進するために、昭和39年度から都道府県は環境省の定める基本指針にしたがって鳥獣保護事業計画を樹立し、かつ実施しています。計画の期間は最近は5年間であり、計画の主な内容は、1.鳥獣保護区・特別保護地区・休猟区の指定と整備、2.鳥獣の人工繁殖・放鳥獣、3.鳥獣の捕獲許可、4.猟具の使用規制、5.特定鳥獣保護管理計画、6.鳥獣生息状況の調査、7.鳥獣保護事業の実施体制、8.その他(普及啓発、傷病鳥獣の救護、安易な餌付けの防止、感染症への対応等)等に関する事項です。
- Q8:野鳥の個体や種そのものを守る法律は、他にあるのですか?
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「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存法に関する法律」(略称:「種の保存法」。平成4年成立。所管:環境省)と「文化財保護法」(昭和25年成立。所管:文化庁)の2つがあります。
「種の保存法」では、希少野生動植物を指定し、その捕獲、譲渡、譲受、輸出入などを環境大臣の許可制にするなど、個体の保存増殖及び生息環境の維持管理のための事業を規定しています。
「文化財保護法」では、天然記念物あるいは特別天然記念物に指定された種について、さまざまな規制をかけています。記念物指定には地域指定もあり、その場合には、当該地域内に生息している動植物の個体は保護対象とされます。
- Q9:「文化財保護法」や「種の保存法」で指定されていない野鳥を守る法律としては、「鳥獣保護法」しかよりどころがないわけですか?
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本来は、数が減ってきてそれらの法律で天然記念物や希少種として指定される以前に対策が必要ですね。スズメやヒヨドリのように今は身近に見られる野鳥、つまり、普通種の野鳥の存在は、生物多様性の観点からとても重要とされてます。これらの普通種の野鳥を一般的に保護することは、「鳥獣保護法」に委ねられています。
ただし、自然環境保全法、自然公園法、都市公園法、都市緑地保全法、森林法、河川法、食料・農業・農村基本法、環境影響評価法なども特定の場所における野鳥とその生息環境の保全に関係しています。しかし、それらは野鳥保護を専門としているわけではないので、野鳥保護の観点からそれらの法律の運用を監視していく必要があります。
- Q10:植物や昆虫などを守る法律はあるのですか?
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狩猟法を出発点としているため、「鳥獣保護管理法」の対象は、野鳥や哺乳類に限られています。植物や昆虫、は虫類や両生類などの種や個体の保護に関する法律は前述の「種の保存法」と「文化財保護法」しかありません。たとえば、カタバミやコオロギなど身近な生物は、希少種または天然記念物として認知されないと、法律での保護の対象にならないわけです。特定の場所については、前の質問で触れた法律が使える場合もあります。
そうしてみると、まだ野鳥については、全体的に保護の網がかかっているとみることもできます。生物多様性基本法の制定や、2010年の生物多様性COP10を受けて、より広い分類群の生物や生態系についての法律や政策の取り組みが求められて来ているところですが、法律としては未整備です。