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2007年1月に発生した鳥インフルエンザへの対応
2007年1月26日発表
宮崎県で発生した強毒の高病原性鳥インフルエンザにより、現地の養鶏業者はじめ多くの関係者が多大な損害を被られていることにお見舞い申し上げます。また世界的に人命までもが失われていることを深く憂慮しています。
日本野鳥の会としても関係各機関と協力して、この病気の拡大を防ぐために努力しております。これは、養鶏業への被害だけでなく、野鳥にとっても脅威となる病気であるためです。
高病原性鳥インフルエンザに対処するにあたって、これから述べることを基本に活動を行っていきます。日本において野鳥がすこやかにすごすことができるように、バードウォッチャーのみなさんや、野鳥に関心を持つ方々もご協力をお願いします。
国内の感染発生の状況
2007年1月11日に宮崎県清武町の養鶏場から大量にニワトリが死んでいる報告があり、強毒の高病原性鳥インフルエンザと判明しました。死亡数が増え始めたのは1月7日からです。この養鶏場では防疫処置も終わり、周辺の養鶏場でも個人が飼育しているニワトリにも感染がなかったことが確認された後の1月23日に、同じく宮崎県の日向市東郷町でニワトリの大量死が報告され、これも強毒の高病原性鳥インフルエンザであると確認されました。
野鳥と強毒の鳥インフルエンザ
野鳥、特に水鳥と称されるガン類やカモ類は、鳥インフルエンザのウイルスを普通に持っています。しかしこれは、今回宮崎で発生したり、世界で人の命を奪っている強毒の高病原性鳥インフルエンザウイルスではありません。強毒のウイルスは、ニワトリやアヒルなど家禽の間で感染を繰り返すうちに突然変異で生じたものです。
2005年から2006年の初めにかけては、中国の青海湖でインドガンが大量に死んだのを始め、ロシアやヨーロッパでも野鳥での強毒鳥インフルエンザ感染が確認されていますが、これは家禽の感染で増殖したウイルスが自然界に流出したため感染が起こったと考えられます。
ウイルス運搬者と渡り鳥
日本、特に西日本への渡り経路上である韓国で、2006年11月下旬から2007年1月19日まで合計5例の強毒鳥インフルエンザ感染が発生し、12月下旬には野外のカモ類の糞からもウイルスが検出されました。また感染の発生はないものの中国北部にもこのウイルスの存在が疑われています。ロシアや中国などから冬の渡り鳥が日本に渡来するのは、11月から12月上旬がピークです。韓国での発生がこの期間にあたったため、環境省は九州や中国地方のカモ類の大規模生息地18か所において、糞を拾ってウイルス検査を行いましたが、すべて陰性でした。したがって、冬鳥として渡ってくるカモ類の間にウイルスが蔓延しているというようなことは無いと考えられます。12月中旬から1月にかけての時期は、渡り鳥の飛来が少ない時期に当たり、新たな飛来があるとすれば、朝鮮半島に寒波が来て積雪や結氷がひどくなった場合にだけです。野鳥がウイルスを運んだ可能性があるとしても、みなさんの周囲にいる野鳥がウイルスを持っているおそれは非常に低いと言えますので、むやみに野鳥を恐れるようなことにならないようにしてください。
野鳥以外の可能性にも注意を払ってください
私たちは、ウイルスの運搬者として注意が野鳥ばかりに向き、その他の可能性への考慮が低くなることを懸念しています。中国や韓国と日本とは、人や物の移動が多くなっています。九州は近いこともあり、韓国からの観光客やゴルフ客も増加しています。野鳥以外にも国内にウイルスが入る可能性もあることを前提に、防疫の強化をさらに進めていくことが必要と考えます。
養鶏場での野鳥対策の重要性
農水省は、養鶏舎への野鳥の侵入対策の実施を指導しています。なんらかの原因で病気が発生した場合、養鶏場の野鳥対策に不備があると周辺の野鳥に感染が広がってしまうおそれがあるからです。そうなると、養鶏場間でさらに感染が拡大するおそれがあるだけでなく、野鳥が発症した場合には野鳥の大量死を引き起こすかもしれません。養鶏場での野鳥対策は、野鳥の保護のためにも重要です。
野鳥の追い払いも危険
野鳥が感染していたとしても、そのままそっとしておけば、鳥の体内に抗体ができてウイルスは消滅していきます。野鳥の間にウイルスが存在するのは、他の個体に感染が続くためです。群れで生活するカモ類でも、群れのすべての個体が感染すればそこで終わりになります。野鳥がウイルスも持っている可能性があるからといって、あちこちで追い払いが行なわれるようなことがあると、仮に野鳥が感染していた場合には、ウイルスを持ったまま他の場所に行って感染を拡大させてしまうおそれがあります。感染を拡大させないためには、無用な撹乱を起こさないことが重要です。
最後に
ツル類の世界的な大規模越冬地である鹿児島県の出水市では、ツル類にウイルスが感染することがないように、観光客も含めて消毒などの防疫体制を整えています。家禽にも野鳥にも感染が拡大することがないように、みなさまのご協力をいただきたいと思います。