むつ小川原港洋上風力開発(株)の環境影響評価方法書に対し意見書を提出いたしました

日 野 鳥 発 第 38 号

「むつ小川原港洋上風力発電事業環境影響評価方法書」に対する意見書

平成26年7月11日 提出

項目 記入欄
氏名 公益財団法人日本野鳥の会 理事長 佐藤 仁志
住所 〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
(公財)日本野鳥の会 佐藤 仁志
方法書についての環境の保全の見地からの意見

 この度、貴社が作成された「むつ小川原港洋上風力発電事業」に係る環境影響評価方法書について、次のとおり意見を提出します。

1.鳥類への影響評価手法と結果について
 「4.2.3.1」にある洋上風力発電およびその付帯施設が鳥類の生息地と採食地へ及ぼす影響の評価手法とその結果について、風車建設による土地改変面積および空隙率を用いて生息地の損失や衝突事故の発生を評価している。しかし、実際に鳥類へ及ぼす影響を考えるには、改変面積のみならず、風車やその付帯施設の存在そのものが及ぼす忌避効果も加味して、生息地放棄や生息環境の質の低下等による影響を考慮すべきである。対象事業実施区域における鳥類の生息地の改変は少なく、そのほとんどの部分が残存すると記されているが、海外での研究では、発電施設の間や周辺の浅水域で採食するアビ類やクロガモなどの鳥類は発電施設建設後、その水域を利用する数が減少することが明らかとなっている。また、世界的にみて風車間の距離が広いものや単独で建っている風車でも衝突事故が起きていることから、衝突事故については空隙率から計算するのではなく、対象となる鳥類の生態的特徴や環境利用の状況なども考慮して影響評価を行なうべきである。

2.鳥類の調査および評価の手法について
①レーダー調査の利用について
「第6.2-4表(3)」においてレーダー調査は海霧の発生する6月の1回のみとしているが、当該地における鳥類の春秋の渡り時期と考えられる3月中旬~5月下旬(春季)、8月中旬~11月中旬(秋季)にも実施することが望ましい。

「むつ小川原港洋上風力発電事業環境影響評価方法書」に対する意見書

平成26年7月11日 提出

項目 記入欄
氏名 公益財団法人日本野鳥の会 理事長 佐藤 仁志
住所 〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
(公財)日本野鳥の会 佐藤 仁志
方法書についての環境の保全の見地からの意見(つづき)

2.鳥類の調査および評価の手法について(つづき)
②希少猛禽類の生息状況に関する調査について
 希少猛禽類の繁殖状況は年によって変動することを踏まえ、少なくとも3年以上は調査を継続実施すること。なお、調査は月に2回以上行なうこと。特に、猛禽類の風車へのバードストライクは天候不良時に発生しやすいとされることから、好天時と悪天候時の行動様式についても、別途調査を実施すること。
 南北2つの対象事業実施区域の中間には、太平洋に繋がる尾鮫沼と鷹架沼が存在し、こうした地形はオジロワシ、オオワシ、ミサゴといった魚食性の猛禽類が特に餌場として頻繁に利用すると考えられる。環境省が行っている調査から、猛禽類の衝突事故の起きやすさの一つに、風車の近くに営巣地およびねぐら、そして餌場が存在することは大きな要因となることが示唆されている。そのため、当該地域の希少猛禽類の行動生態を把握するためには、定点調査とは別に営巣地やねぐらの場所、そして採餌場所を特定する調査を実施すべきである。

③飛翔軌跡調査について
 希少猛禽類の生息状況調査においては、すべての希少猛禽類に対して飛翔軌跡を記録し、計画区域とその周辺をどのように利用しているか把握すること。飛翔軌跡調査では飛翔高度を正確に把握するため、高度が分かるレーザー距離計を用いて飛行高度の計測を行なうこと。

④渡り時の移動経路に関する調査時期について
 「第6.2-4表(3)」において調査時期は1~5月、8~9月、11~12月の9回、1日/回程度とあるが、渡りの時期の幅はより広いことから10月も調査を実施すること。さらに、渡り時期に出現する鳥種の変化は短い期間中でも大きいことから、各調査は少なくとも2週間に1回(1回につき3日間)程度実施するなど、十分な配慮が必要である。

以上