「(仮称)石狩コミュニティウインドファーム事業 環境影響評価準備書」に対する意見書を提出しました

日 野 鳥 発 第 20 号

(仮称)石狩コミュニティウインドファーム事業 環境影響評価準備書に係る意見書

平成27年6月29日 提出

項目 記入欄
氏名 ①日本野鳥の会札幌支部 支部長 山田 三夫
②公益財団法人日本野鳥の会 理事長 佐藤 仁志
住所 ①〒060-0061 札幌市中央区南1条西17丁目1-14シェール松岡203
②〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
計画段階配慮書についての環境の保全の見地からの意見

 この度、貴社が作成された(仮称)石狩コミュニティウインドファーム事業 環境影響評価準備書について、次のとおり意見を提出します。

1)総論
貴社が本配慮書で設定した対象事業実施区域(以下、「実施区域」という。)での風力発電施設の設置は、実施区域及びその周辺のオジロワシの生息に対し、バードストライクの発生を招くことで多大な影響を与える恐れがあるため、実施区域の位置含めて事業計画自体を見直すべきである。
 また、今回、貴社が実施区域を想定した地域においては、既に他の事業者が風力発電事業に係る複数の計画を有しているため、それぞれの事業案件毎の環境影響配慮だけでなく、石狩湾岸全体(札幌市・石狩市)での風力発電事業計画を公表し、その上で、各事業間の複合的かつ累積的な影響等準備書の内容に反映させ、石狩湾岸全体の広域的視点にも重きを置いた実施区域の見直し等を検討すべきである。

2)主な理由
・「第8.1.3-61表」にあるとおり、実施区域を含む周辺地域では、オジロワシの飛翔が104回確認され、そのうち9回が実施区域内を通過した。また、その9回のうち7回は、バードストライクが発生する危険性が極めて高い高度Mでの飛翔であった。このことから、実施区域やその周辺はオジロワシの高度利用地域と言え、実施区域内を飛翔すると、バードストライクが発生する危険性が高いことから、実施区域の位置そのものを見直す必要がある。さらに、2005年12月には、実施区域から数百mしか離れていない貴社の風車において、オジロワシがバードストライクで死亡しているが、その原因は未だ解明されていない状況にあり、当該地域でのオジロワシにおけるバードストライクの予防措置も確立できていない中で、新たに風車を建設することは、当該地域でのさらなるバードストライクを増やすことにつながりかねない。
 これらの点から、貴社が準備書で提示した場所を実施区域とすることは甚だ不適当である。

3)準備書の内容について
①「第8.1.3-7表 鳥類に係る文献その他の資料」の中に、日本野鳥の会札幌支部が協力して知床博物館が実施した「オジロワシ・オオワシ合同調査グループ」による「越冬個体数等調査報告書」が含まれていない。今回の影響の評価にあたっては、この報告書を含めて行うべきである。

②『「第8.1.3-17」(b)ウ.調査期間』は春季から冬季となっているが、実際には、調査日数が2日間から最大でも4日間と、極めて短く、そのデータのみで正確な実態を把握したとは到底言えない。ついては、調査は、毎月に渡って、実施区域の鳥類の生息状況を十分に把握できる日数の間、2年間にわたって継続して実施すべきである。

③実施区域周辺における大半の鳥類の繁殖時期は5月中旬から7月初旬とみているが、『「第8.1.3-17」(b)ウ.調査期間』によると、鳥類の繁殖時期と言うべき、肝心のこの時期に現地調査が実施されておらず、これでは、実施区域での風力発電施設建設による繁殖鳥類への影響を評価したとは到底言えない。鳥類の繁殖時期に関する適切な影響評価を行うには、この時期に2年間の調査を継続して行うべきである。

④『「第8.1.3-17」(b)ウ.調査方法」(ア)ラインセンサス法による調査』によると、調査ルート(R1~R3)は三つのルートしか設置されておらず、また、その設置場所は、実施区域の鳥類の生息状況を十分に把握できる場所に設置されたとは到底言えない。この調査に伴う適切な影響評価を行うには、建設予定地周囲を一周するようなルートを別に設け、毎月初めに5日間以上の調査を2年間、継続して行うべきである。

⑤『「第8.1.3-17」(b)ウ.調査方法(イ)ポイントセンサス法による調査』では、ポイント(P1~P4)が4か所しか設置されていないが、それでは甚だ不十分である。ついては、少なくとも予定地の海岸部に3ポイント、防風林の東西南北に各1ポイントずつの計7ポントを追加して設置し、各ポイントにおいて、毎月の初めに5日間以上の調査を2年間、継続して行うべきである。

⑥『「第8.1.3-58」(イ)重要な鳥類』を見ると、現地調査で確認された鳥類14種(ヒシクイ、マガン族の一種、コクガン、ミコアイサ、カンムリカイツブリ、ヒメウ、シロチドリ、セイタカシギ、オオソリハシシギ、ホウロクシギ、ツルシギ、タカブシギ、ケイマフリ、アカモズ)の確認位置図が省略されている。重要種であるかどうかの判断は貴社の基準によったものと考えるが、今回の環境影響評価は、国が定める環境影響評価法に基づくものであり、重要種として扱うかどうかの判断は、環境省のレッドリスト掲載種、とりわけその中でランクの高い種や国内希少野生動植物種とするなど、国による基準に準拠すべきである。
 また、当会は、確認位置図の掲載が省略されたこれら重要種についても、実施区域やその周辺を高密度で利用しているものと考えていることから、これらの種についても確認位置図を示したうえで、住民等から広く意見聴取すべきである。とりわけ、確認位置図を省略しすぎることは、準備書自体の存在意義の本質に関わる重大な問題点である。

⑦『「第8.1.3-61表」高度区分別の確認状況』では、調査対象範囲で飛翔行動を確認した猛禽類6種について、実施区域内で合計28回の飛翔がみられたとされている。そのうち18回は、高度M(高さ25m~145m)での飛翔であり、さらに種ごとにみると、ミサゴ3回(種ごとの実施区域内の全飛翔のうち75%)、ハチクマ2回(同66.6%)、オジロワシ7回(同77.7%)、ハイタカ1回(同25%)、オオタカ3回(同75%)、ハヤブサ2回(同50%)とされている。
ところで、猛禽類はその生態や行動様式から、衝突死が多いことが世界中で指摘されており、そのためにも、衝突死が起こりやすい猛禽類の種の生息地周辺では風力発電施設を建設しないことや、風力発電の建設不適地として指定することが世界的な潮流となりつつある。
 その意味では、先出したパーセンテージの数字からみても、当該の猛禽類6種については、一般的にも高度Mでの飛翔割合が高いと言える。
 特にオジロワシについては先述のように、2005年12月に実施区域から数百mしか離れていない貴社の風車において衝突死が発生しているが、その原因は未だ解明されていない状況にある。
 これらのことを鑑みれば、実施区域に風力発電を建設した場合、当該の猛禽類6種で衝突死が起こる可能性が極めて高いため、再度、環境影響評価の基本原則である、影響を“回避”するための予防措置を講ずるべきである。 さらに、適切な回避策を見いだせない場合は、実施区域の位置の見直しを含めて事業計画そのものを見直すべきである。

以上