島根県出雲市の平田風力発電事業(仮称)計画への補助金拠出に関する要望

日野鳥発第44号
平成18年8月25日

経済産業大臣
二階 俊博 様

東京都渋谷区初台1- 47 – 1
小田急西新宿ビル1F
財団法人 日本野鳥の会
会長  柳生 博


島根県出雲市の平田風力発電事業(仮称)計画への
補助金拠出に関する要望

現在、ラムサール条約湿地であり、国指定鳥獣保護区特別保護地区にも指定されている宍道湖に隣接した島根県出雲市十六島・釜浦地区を中心とした島根半島に、ユーラスエナジージャパンときんでんによる風力発電施設の建設計画があり、貴省あてに補助金交付の申請が出されているとうかがっております。この計画地域は、当会島根県支部の調査によれば、以下のように多くの希少種を含む鳥類の生息地となっており、風力発電所の建設によって多大な影響を受けるおそれがあります。

  1. 計画地付近は、複数の絶滅のおそれのある種の繁殖地となっています。
    計画地付近では、以下のような複数の希少種の繁殖期における生息が確認されており、これらの繁殖は保護されるべきです。
    ハヤブサ
    絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(以下種の保存法と略記)国内希少野生動植物種、レッドデータブック(以下RDBと略記)絶滅危惧II類
    オオタカ
    種の保存法国内希少野生動植物種、RDB絶滅危惧II類
    クマタカ
    種の保存法国内希少野生動植物種、RDB絶滅危惧II類
    ハチクマ
    RDB準絶滅危惧
    ミサゴ
    RDB準絶滅危惧
    ミゾゴイ
    RDB準絶滅危惧
    カラスバト
    RDB準絶滅危惧、天然記念物

    これらの種は風車への衝突死の危険性があり、また風車の設置や取り付け道路の建設により採食等の行動が制限される可能性があります。

  2. 計画地付近はラムサール条約湿地の宍道湖に生息するマガン、ヒシクイ、コハクチョウなどの水鳥類や、渡り性のワシタカ類の飛行ルートとなっています。
    計画地付近は宍道湖に越冬する水鳥類の飛行ルートとなっており、この飛行ルートは気象条件によって変化すると思われます。気象条件によっては風車設置場所がこの飛行ルートと交差してしまう可能性が考えられ、風車への衝突死の危険性があります。これらの中には以下の希少種を含んでいます。
    マガン
    RDB準絶滅危惧、天然記念物
    ヒシクイ
    RDB絶滅危惧II類、天然記念物

    また、春季と秋季には1の猛禽類とは別に、多数の猛禽類の渡りによる通過が確認されており、渡り鳥の主要なルートになっていることが予想されます。

このように、多くの希少種を含む鳥類にとって重要な生息地においては、風力発電施設を設置すべきでないと考えられます。このような場所に目下の計画のように大型の風車を多数設置すれば、風車による衝突死や、風車を鳥類が避けるために付近の土地を使用できない、一定の飛行ルートを使用できない、あるいは取り付け道路により植生が破壊される、といった理由により、様々な悪影響を被る危険性があります。このことを踏まえ、以下のように要望いたします。

島根県出雲市の平田風力発電事業(仮称)計画については、希少種の猛禽類やラムサール条約湿地に生息する水鳥類等、多くの希少種を含む鳥類の保護上大きな支障があることが疑われますので、環境影響について上記の観点からの専門的な審査を行った上で、支障が認められた場合は補助金の交付を行わないといった、適切な判断をしてくださるよう要望いたします。

以上