あわら市における風力発電施設建設画について、 立地選択の見直しを資源エネルギー庁等に改めて申し入れ

2008.8.18
財)日本野鳥の会

あわら市における風力発電計画への見直しの要望書の経緯について

1. 概要

(1) 電源開発による福井県あわら市における風力発電施設建設計画について、当会は、ラムサール条約湿地片野鴨池および国指定天然記念物マガン、ヒシクイの保護上に問題があるため、立地選択のやり直しが必要である旨を主張しています。
(2) 本年4月17日・18日付けで、当会は同社及び同社と売電契約を結ぶ北陸電力に対し要望書を提出しました(福井県支部、石川支部との連名)。またこの件で加賀市鴨池観察館において、加賀市と共同記者会見を行いました。
(3) 文化庁、環境省に対しては、以上の経緯説明のため4月25日で調査結果の報告資料を送付し、また6月3日に訪問して事情を説明しました。
(4) 補助金の申請先である資源エネルギー庁に対しては、6月17日に会長名で、立地選択の見直しが必要である旨要望書を提出しています。
(5) 資源エネルギー庁の補助金交付先決定を前に、本日、加賀市と共に資源エネルギー庁を訪問し、上記について改めて申し入れを行いました。また文化庁、環境省に対しても、この件を重ねて説明し、善処を要望しました。

2.意見の要旨

(1) 片野鴨池の生態系とそこに飛来するマガン、ヒシクイに悪影響を及ぼさないために、立地選択の変更を求める。
(2) 建設予定地を大きな群が通過することにより、大きな影響が生じる恐れがある。
(3) その年の積雪量により建設予定地上空を通過する頻度が変化する可能性がある。
(4) シミュレーションによる死亡数は、当会の調査結果からはガン類の保護上無視できない規模。
(5) 衝突死が少ない場合でも、障壁効果による越冬数の減少を考慮する必要がある。


石川県加賀市の大幸市長、当会の佐藤副会長と古南自然保護室長が資源エネルギー庁の担当者に対し、本件に関して意見を申し入れているところ。

3.経緯

2006年3月 事業者から関係者(当会、加賀市鴨池観察館、当会福井県・石川支部、福井県、石川県、加賀市等)への計画と事前調査結果の説明。ガンの飛行経路については、調査回数が1月、3月合わせて6日間ときわめて少なく、ガン類への影響の有無を判断できるレベルではなかった。
2006年3月7日
~23日
日本野鳥の会、鴨池観察館友の会によるガン類の飛行経路に関する独自の調査を22回(朝5回夕方17回)実施。計画地の上空の通過を確認。
2006年5月
26日付け
環境省、文化庁、経済産業省、資源エネルギー庁、福井県、あわら市、石川県、北陸電力、電源開発へ、当会と福井県支部、石川支部との連名で要望書を提出。
その後、電源開発と北陸電力との間の売電契約が成立せず、事業が休止状態に入る。
2007年11月5日
~2008年3月8日
日本野鳥の会、鴨池観察館友の会によるガン類の飛行経路に関する独自の調査を19回(朝14回、夕方5回)実施。積雪量の違いが飛行経路の選択に関係する可能性があることが判明。
2008年3月 事業者と北陸電力が契約交渉を開始。北陸電力との契約権はくじ引きで順位が決定しており、電源開発は下位だったが、上位の事業者の契約が次々と不成立になったため、交渉権が回ってきたとのこと。3~5月に事業者は関係者(当会、加賀市鴨池観察館、当会福井県・石川支部等)に、この経緯と追加調査に基づく環境影響評価について説明を行ったが、簡単な資料と口頭による説明のみで、保全措置に関する文書(環境影響評価書)を8月現在に到るも公表していない。「風力発電のための環境影響評価マニュアル」によれば、補助金交付時に環境影響評価の手続きが完了していることを求めている。資源エネルギー庁と環境省が合同で設けた「風力発電施設と自然環境保全に関する研究会」論点整理でも、この「ガイドラインに沿った適切な取り組みをすることが必要」と指摘されている。
2008年4月17日
・18日付
当会は事業者及び同社と売電契約を結ぶ北陸電力に対し要望書を提出(福井県支部、石川支部との連名)。加賀市も事業者、同社、環境省に対し要望書を提出、文化庁に天然記念物の現状変更について照会。この件で4月23日に加賀市鴨池観察館において、加賀市と共同記者会見。
2008年4月25日 当会から、説明資料としてガンの飛行経路に関する詳細な報告書を文化庁と環境省に提出。6月3日に面談して説明。
2008年5月 事業者が補助金の申請を資源エネルギー庁に提出。
2008年6月17日 当会から資源エネルギー庁長官宛に要望書を提出。
2008年7月10日 事業者が北陸電力と売電契約を締結
2008年8月中に 資源エネルギー庁が補助金の申請について決定の見込み。