(仮称)串間市いちき風力発電事業 環境影響評価方法書に対する意見書

令和3年3月4日

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新宿イーストサイドスクエア6階
株式会社イメージワン
代表取締役 新井 智 様

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日本野鳥の会宮崎県支部 支部長 岩切 久

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公益財団法人日本野鳥の会 理事長 遠藤孝一 (公印省略)

「(仮称)串間市いちき風力発電事業 環境影響評価方法書」に対する意見書

貴社が作成された(仮称)串間市いちき風力発電事業に係る環境影響評価方法書(以下、方法書という)に対し、環境保全の立場から下記のとおり意見を提出いたします。

①事業計画全体について

方法書の第7章にある、貴社が作成した計画段階環境配慮書(以下、配慮書という)に対する住民等の意見のうちNo.2に対する事業者見解で貴社は、本事業計画により宮崎県再生可能エネルギー等導入推進計画における2022年度までの風力発電導入見込量である112,800kWを大幅に超過することを認めつつも、「設備利用率が25%程度である」ので問題がないかのような見解を示し、また、「国の進める主電源化に至るものではない」と、宮崎県ではなく国の話に置き換え、さらに、「宮崎県の基本目標である“再生可能エネルギーによる持続的な社会の構築を目指す」ので受け入れてほしいと示していることは、私どもにはまったく理解できない。県は風力発電導入見込量を設備容量ベースで考えており、また、国ではなく県の目標として導入見込量等を掲げているのである。そして、宮崎県内では諸塚村、日之影町、日南市、串間市等で風力発電事業の、また、県内各地の山地や里山で大規模太陽光発電事業の計画、工事、稼働運転が開始されており、これらの事業により宮崎県の自然環境はまるで虫食い状態に、地域の自然環境や生態系が破壊されている。県の方針である再生可能エネルギーによる持続的な社会の構築は、単に再生可能エネルギーの導入量を増やすということではなく、地域との共生を図るため、景観や自然環境に配慮した発電設備の導入を推進したいということなのであるが、貴社のこの事業計画は県のビジョンにそぐわないと考えられ、我々や地域住民は受け入れることはできない。貴社は環境影響評価準備書の作成に進まず、現段階で事業を中止、または大幅に見直すべきである。

②地域住民の意見聴取のあり方について

地球温暖化対策や持続可能な社会を構築するために自然エネルギーの導入を拡大する必要性は、多くが認めるところである。しかし、それは開発行為を含む人の営みと自然環境との共生の上に成り立たねばならず、地球温暖化対策として行う開発行為が、我々の暮らしを支える生物多様性の基盤を破壊してはならない。しかし、そのようなことに気づかない人間の行為によって、後世になって地域の住民が大きな代償を払わされてきたことは、過去の多くの歴史が物語っている。宮崎県高千穂町岩戸地区では長きに渡り我慢を強いられてきた住民が健康被害などの大きな犠牲を払い、今も尚その傷は癒えていないのである。企業も行政も当初は経済発展のみを見据え、将来その地区に起こりうる環境影響に対する配慮ができていなかったのである。貴社のように大きな力を持つ企業は本来、地域の声なき声を尊重し、配慮しなければならない。そのような観点で貴社は、この事業計画に対する地域住民の意見を住民説明会や意見募集に留まらず、各戸を訪問するぐらいのつもりで丁寧に聴取すべきである。

③累積的影響評価について

配慮書に対する宮崎県知事の意見にもあるように、「事業実施想定区域の周辺で『(仮称)日南風力発電事業』及び『串間風力発電所』が手続き中であり、将来的には3箇所の風力発電所が南北に並ぶことが予想される。渡り鳥など生態系への影響等について、これら他事業との累積的な影響を考慮すること。環境影響を回避又は十分に低減できない場合は、事業実施区域の変更や風車の基数の削減などの、計画の見直しを行うこと」とある。このことについて貴社は、事業者見解として「他事業との累積的影響を考慮して実施する。」「環境影響を回避、又は十分に低減できない場合には計画の見直しを行う。」と回答している。

しかし、方法書には累積的影響評価に関する具体的な方針や考え方、評価手法等が記載されておらず、不十分な内容となっている。貴社は他事業者と協力し、情報の共有を図りながら、また、海外事例を参考にするなどして累積的環境影響評価を実施し、そのうえで、影響の回避・低減策を講じ、対象事業実施区域(以下、計画地という)の周辺に他事業の存在により生じる鳥類をはじめとした自然環境への重大な影響を回避するための方針や方法を示すべきである。また、回避できない重大な環境影響が生じると予測される場合には、事業計画そのものを見直すべきである。

④クマタカとサシバの生息に対する配慮について

方法書の第7章にある、貴社が作成した配慮書に対する住民等の意見のうちNo.2に対する事業者見解で貴社は、計画地にクマタカが生息していることを認識しているうえで、「クマタカ、サシバ等の生息状況の把握に努めます」、「実行可能な範囲内で影響の低減を図ります」と見解を示しているが、これら希少猛禽類の生息や風車建設により影響を受ける可能性があることが分かった場合は、勇気を持って事業そのものを見直すことが、最善の影響低減策であると認識していただきたい。

以上