(仮称)丸森筆甫風力発電事業 環境影響評価方法書に対する意見書

(仮称)丸森筆甫風力発電事業 環境影響評価方法書に対する意見書

令和3年2月12日 提出

項 目 記入欄
氏 名
  1. 日本野鳥の会宮城県支部  支部長  竹丸 勝朗
  2. 公益財団法人日本野鳥の会 理事長  遠藤 孝一 (公印省略)
住 所
  1. 〒982-0811 宮城県仙台市太白区ひより台20-7
  2. 〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
環境影響評価方法書についての環境の保全の見地からの意見

この度、貴社が作成された「(仮称)丸森筆甫風力発電事業 環境影響評価方法書」について、次のとおり意見を提出します。

現在、貴社が環境影響評価方法書(以下、方法書と言う)を縦覧している(仮称)丸森筆甫風力発電事業について、対象事業実施区域(以下、計画地と言う)に風力発電施設(以下、風車と言う)を建設した場合、サシバやハチクマなどの希少猛禽類およびハクチョウ類の渡り・移動経路に対して障壁影響等が発生することが懸念される。

方法書には鳥類に対する影響を評価するための調査方法等を記載しているが、希少猛禽類や渡り鳥等への影響を適切に評価し得る調査データを取得するという観点から、下記のことを実施するよう求める。

  1. 方法書には、希少猛禽類調査は各月1回3日間連続を基本とすると記載されているが、希少猛禽類の繁殖期においては造巣期から巣立ち期および巣外育雛期までの生態や行動を詳細に把握したうえで影響を評価する必要があることから、各月1回3日間にこだわらず、繁殖ステージごとに適切な調査時期を選定し、できだけ多くの日数で調査を実施すべきである。また、留鳥となっている希少猛禽類の生息が認められれば、通年で詳しい生態や行動のデータを取得できる調査計画に変更すべきである。希少猛禽類の飛翔状況の把握には、レーザーレンジファインダーなど鳥類の飛翔の位置を正確に把握できる機器等の使用を検討すべきである。
  2. 計画地にはヨタカやミゾゴイ、フクロウ類が生息している可能性がある。これらのような日出・日入前後などの薄明薄暮時や夜間に活動する鳥類の生態や行動を把握できるよう、適切な時間、時期、地域、頻度で、ICレコーダーなどの機材を利用して調査を実施することを求める。
  3. 秋の渡り鳥調査にあたっては、夏鳥と冬鳥で南下時期が異なるため、9~11月の各月複数回(上旬・中旬・下旬)の調査回数では不十分である。夏鳥は早いもので7月下旬に渡りを開始し、冬鳥は12月でも渡ってくるため、その期間中は渡り鳥の調査を継続的に実施する必要がある。夏鳥であるサシバやハチクマなどの希少猛禽類および冬鳥の小鳥類やカモ・ハクチョウ類の渡りについては、現地の鳥類の状況に詳しい者から情報を得るなどして、適切な時期に適切な回数の調査を実施し、計画地およびその周辺を通過する渡り鳥全般の飛翔状況を明らかにすべきである。なお、サシバおよびハチクマの移動時期は、宮城県では9月上旬から始まり、約一ヶ月続くことが観察、公表されている。しかし、ピークの時期は短く、それはその年の気候に左右される。そのため、このピークの時期を外さないよう綿密に立てた調査方法での実施が必要となる。また、計画地は広範囲であるため、その日の風向きや日射量等により上昇気流の発生位置が峰の東になるか西になるかが変わる。上昇気流の発生位置や風力によって鳥類の飛翔コースや高度が変わることも考慮して、適切な調査方法を取る必要がある。なお、ハクチョウ類等の大型鳥類の渡りの状況を正確に把握するのに、レーザーレンジファインダー等の使用を検討すべきである。加えて、渡りの時期は夜間に計画地およびその周辺の上空を移動、通過する小鳥類やハクチョウ類も存在するため、レーダー調査を実施するなどして渡りの状況をなるべく正確に把握し、影響を評価すべきである。
  4. 冬季、丸森町の阿武隈川に飛来したハクチョウ類は福島市の阿武隈川の飛来地との間を移動している。この移動は夜間にも見られるので、渡り鳥と同じくレーダー調査を実施し、その動きを把握すべきである。

以上