(仮称)山形尾花沢風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

(仮称)山形尾花沢風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書

令和2年11月14日 提出

項 目 記入欄
氏 名
  1. 日本野鳥の会山形県支部 支部長 簗川 堅治
  2. 公益財団法人 日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一
住 所
  1. 〒994-0081 山形県天童市南小畑4-8-33
  2. 〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
計画段階配慮書についての環境の保全の見地からの意見

この度、貴社が作成された(仮称)山形尾花沢風力発電事業に係る計画段階環境配慮書について、下記の通り意見書を提出します。

風力発電施設(以下、風車という)の建設を計画している事業実施想定区域(以下、計画地という)は、環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に、また、山形県の絶滅のおそれのある野生動植物に指定されているイヌワシとクマタカの生息地と重なる。国内では、尾根や稜線を利用するイヌワシとクマタカがバードストライクに遭った事例が確認されており(武田 2013、浦2015)、計画地に風車を建設した場合には、同様のバードストライクが生じる可能性が高いと考える。計画地は、クマタカの生息密度が高い地域である。また、イヌワシの飛翔高度はクマタカよりもかなり高く、行動圏も広いという特徴がある。こうした点をふまえて、クマタカおよび全国的に繁殖成功率が著しく低下しているイヌワシついて、行動圏や高度利用域の推定などを含む生息状況の確認と計画の影響の有無について、質、量ともに十分な調査を実施することを求める。

(1)計画地はハチクマやサシバなど希少猛禽類の渡りルートの一部になっている可能性があることから、風車の建設によりバードストライクが生じ、また、障壁影響により渡りルートの変更および生息地の放棄といった影響が発生することが懸念される。そのため、希少猛禽類の渡りに対するこれらの影響の回避または低減策を計画の初期段階から検討すべきである。

(2)計画地から約6kmのところには徳良湖があり、ここは山形県内では有数のハクチョウ類・カモ類の越冬地となっている。そのため、これらの鳥類が計画地周辺を飛行することが想定され、風車建設に伴うバードストライクの発生と生息地の放棄が発生することが懸念される。配慮書では、ハクチョウ類・カモ類は鳥類の重要な種となっていないが、ハクチョウ類が越冬する徳良湖は重要な観光地で、かつハクチョウ類は地域の貴重な観光資源となっている。風車の建設および稼働によるバードストライクの発生、生息地の放棄は、ハクチョウ類・カモ類の生息状況に大きな影響を与えるものと考えられ、計画地の土地改変と風車の稼働による影響、徳良湖の生息状況を関連付けて調査する必要があり、その点について留意した調査計画を立てることを求める。

以上、計画地およびその周辺において、いわゆる発電所アセスのガイドラインにあるような一般的な環境影響評価よりも、利害関係者や専門家とも協議したうえで、さらに詳しい調査の実施を求めるところである。

貴社においても、風車の建設にあたって、鳥類の生息状況を的確に把握し、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう適切な対応をとることを強く求める。

以上