(仮称)石狩湾洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する意見書
令和2年8月6日
シーアイ北海道合同会社
職務執行者 トーマス・ワイビー・ポールセン 様
日本野鳥の会札幌支部
支部長 猿子 正彦
〒060-0061 札幌市中央区
南1条西17丁目1-14-203
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一
〒141-0031 東京都品川区
西五反田3-9-23 丸和ビル
「(仮称)石狩湾洋上風力発電事業 計画段階環境配慮書」に対する意見書
貴社が「(仮称)石狩湾洋上風力発電事業境配慮書」(以下、配慮書という)に記載している事業実施想定区域(以下、計画地という)の位置に関し、鳥類の生息地としての石狩湾の重要性とその保護を鑑みて、以下の理由から、事業計画を全面的に見直すよう意見を提出いたします。
記
- 計画地となっている海域には海ワシ類としてオジロワシ(天然記念物・国内希少種・絶滅危惧種)が周年、また、一部のオオワシ(天然記念物・国内希少種・絶滅危惧種)も周年で生息しており、また、これらの種の渡り経路となっている。さらに、計画地がある石狩湾に注ぎ込む石狩川や新川の河口部はサケ類などが多く海ワシ類の採食場所として重要であり、これらの河口部を交互に繰り返して行き来をしている。これら河口の間にある飛行経路上に風力発電施設(以下、風車という)を建設すると、海ワシ類の風車への衝突死(以下、バードストライクという)や障壁影響が発生する可能性が非常に高い。
- 計画地が隣接する海岸域には多くのミサゴ(準絶滅危惧種)が繁殖しており、繁殖期は頻繁に海上に餌を獲りに行くことから、洋上に風車を建設するとバードストライクを引き起こす可能性が高い。また、蝟集効果により風車基部やその周辺に多くの魚類が集まることで、ミサゴをはじめとする魚食性の鳥類の採餌場所となり、バードストライクが発生する確率が高まる。
- 計画地が設定されている海域には、ウミガラス(国内希少種・絶滅危惧種)やハシブトウミガラスの渡り経路および越冬海域が存在する。それらの場所に風車を建設すると、バードストライクや障壁影響および生息地放棄が発生する可能性が非常に高い。
- 計画地がある海域には、マガンやヒシクイ(天然記念物)、ハクチョウ類や猛禽類をはじめとする多くの鳥類の渡り経路が存在する。それらの渡り経路上に風車を建設すると、バードストライクや障壁影響が発生する可能性が非常に高い。
- 計画地の周辺には、オオセグロカモメおよびウミネコの繁殖コロニーが数か所に存在する。カモメ類は普段行動している飛行高度から、風車へのバードストライクが多く発生することが世界的に知られている。そのことから、計画地に風車を建設すると、これらのコロニーのカモメ類の繁殖に影響を与えるものと考える。特にウミネコは世界的に個体数が減少している可能性があり、ウミネコの繁殖個体数についても北海道では減少傾向が続くことから、北海道の準絶滅危惧種に指定された。計画地での風車の建設で、ウミネコの個体数を減少させることがあってはならない。
- 計画地がある海域ではウミスズメ科の鳥類の生息が時期によって多数観察されている。特に繁殖期後期(育雛期)に個体数が多くなるが、それは、計画地がある海域が天売島などで繁殖する個体群の採餌場所になっているからである。風車の建設による影響で採食場所の放棄が起きると、鳥類の繁殖や育雛に対し重大な影響を及ぼすことから、計画地に風車を建設すべきではない。
以上