(仮称)彦岳風力発電事業 環境影響評価 計画段階 環境配慮書についての意見書
令和 2年 5月27日
(株)ジャパンウィンドエンジニアリング 御中
日本野鳥の会大分県支部
支部長 谷上和年
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公益財団法人日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一
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(仮称)彦岳風力発電事業 環境影響評価 計画段階 環境配慮書についての意見書
- ■基本的な考え方
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私たちは風力発電施設(以下、風車という)の導入が地球温暖化対策等に果たす役割や重要性を理解していますが、彦岳周辺の稜線を覆うような大規模風車建設計画に対しては、様々な問題点があると考えています。
加えて、現状ではこの地域において、豊かな生態系が織りなす景観の重要性が十分に認識されておらず、数多くの動植物の生態について明らかになっていない点が多く存在します。
このような中で、大規模風車建設が彦岳周辺の稜線に集中することにより、今後、永きに渡って周辺地域において利用可能な観光資源としての自然環境、貴重な鳥類の生息環境を大きく損なう恐れがあると懸念しています。
- ■風車建設地および周辺環境に生息する貴重な鳥類
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事業実施想定区域(以下、想定区域という)と周辺には環境省のレッドリストで絶滅危惧種IB類に指定されているクマタカをはじめ、希少鳥類やその他の貴重な野生動植物が多く生息しています。また、周辺の里山では絶滅危惧II類のサシバの繁殖も確認されています。
- ■風車建設による希少猛禽類への影響の懸念および事前対策と精密調査の必要性
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この風車建設が計画どおり実施されれば、彦岳周辺の稜線の約1200haに31機もの巨大風車(風力発電機の単機出力:最大5500KW、風力発電機の最大高:約200m)が林立することとなります。
これらの風車建設予定地において、既に本会会員により、クマタカの生息・営巣が確認されています。また、彦岳の稜線周辺は、サシバ、ハチクマなど、数多くの希少猛禽類における渡りのコースになっていることも確認されています。
もしも何の対策もないまま風車が建設されると、食物連鎖の頂点である猛禽類のバードストライクだけでなく、生息地放棄も含め、当地域のクマタカ個体群への影響、他の猛禽類の渡りのコースへの影響は計り知れないこととなり、また、同時に、その地域全体の生態系にも多大な影響を与えかねないことになると予想できます。
したがって、計画地周辺に生息する希少猛禽類をはじめとする鳥類への影響を回避、低減可能な前向きで根本的な対策、およびそのための精密で科学的な事前の調査方法の立案と長期間の調査実施が不可欠になります。
- ■風車建設による環境変化が起因となる災害等の可能性および事前の防止の必要性
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風車建設予定地の稜線下にある番匠川水系床木川流域(佐伯市側)の平均年雨量は、約2,000mmで、そのほとんどが台風の影響によるものです。この地域は、一度降雨があれば水害発生の大きな原因となっている急峻な山地と細長い平野部で成り立っている地域です。
近年の地球温暖化による雨量増加傾向に加え、風車建設工事に伴う稜線の森林植生の改変による砂泥流出や土砂崩れなどが懸念されます。また、これらのことが発生すれば源流域床木川が合流する一級河川の本流番匠川に生息する水棲生物の生息に重大な影響が発生することも予想されます。
したがって、こういった影響が回避可能な前向きで根本的な対策、およびそのための事前の精密で科学的な事前の調査方法の立案と実施が不可欠になります。
- ■環境配慮対策に対する要望
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以上述べたように、当該事業想定区域一帯には希少な鳥類および優れた自然環境が多く存在しており、風力発電施設を設置することは、環境省・大分県が推進する生物多様性保全の観点から極めて損失が大きいと考えられます。そのため、(仮称)彦岳風力発電事業については、配慮書に示されたような調査及び予測・評価に加え、貴社における環境配慮対策や災害対策を事前に十分に検討した経過および対策の内容、そのための事前の精密で科学的な調査方法(環境アセスメントの調査方法)の詳細を、次回の方法書で明記することを要望します。