(仮称) 宮城山形北部風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書を提出しました
(仮称) 宮城山形北部風力発電事業に係る環境影響評価方法書に対する意見書
令和2年3月6日 提出
項 目 | 記入欄 |
氏 名 | ①日本野鳥の会山形県支部 支部長 簗川 堅治 ②公益財団法人 日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一 (公印省略) |
住 所 | ①〒994-0081 山形県天童市南小畑4-8-33 ②〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル |
環境影響評価方法書についての環境の保全の見地からの意見 |
貴社が計画されている(仮称)宮城山形北部風力発電事業」における環境影響評価方法書(以下、方法書)に述べられている調査方法について、下記の通り意見を提出します。 ◇生物多様性の観点から、希少鳥類に対する影響の評価を重要視するだけでなく、対象事業実施区域(以下、対象区域)とその周辺に生息する鳥類全体の生息環境や生物多様性も評価すべきである。そのため、「重要とされる鳥」以外にも出現した鳥は全て記録すべきであり、一般鳥類の観察にもっと力を入れるべきである。 ◇一般鳥類の現地調査では、任意観察調査とテリトリーマッピング法による調査を行うとしている。 ◇任意観察調査について、ポイントセンサス法、ルートセンサス法など調査方法についての記載がない。どのような手法で調査を行うのかを明示すべきである。 ◇表6.2-2(29)希少猛禽類の生息状況調査について、「繁殖期と非繁殖期に実施する。各月1回3日間程度の調査を基本とする。繁殖は2年間調査を実施する。」と記載されているが、定点観察法についての記述が分かりにくい。繁殖期と非繁殖期の調査期間を明示し、また、全体で調査を何回実施するのかも明示すべきである。特に、繁殖期においては、繁殖そのものを阻害しないよう、繁殖・営巣活動を脅かすような調査を行わないよう十分な配慮をすべきである。 さらに、希少猛禽類、特にクマタカは毎年繁殖を開始、または成功するわけではなく、ヒナの成長にも数年かかるため、生息が認められた場合は、最低でも2営巣期、必要に応じて3営巣期に渡り調査する必要がある。そのため、方法書に記載されている調査期間では、適切な生息状況確認調査とは認められない。 ◇渡り鳥の調査については、方法書によると、定点観察法とコドラード調査を行うとし、定点観察法では、「日の出前後及び日没前後を中心とした時間帯に通過する小鳥類、猛禽類、水禽類等の渡り鳥の飛翔ルート、高度等を記録する。」と記載されている。さらに、鳥類の渡り時の移動経路の調査については、「春季(3~5月)及び秋季(9~11月)に実施する。秋季については、各月複数回(上旬、中旬、下旬)実施する。」と記載されている。 調査頻度についての詳細な記載がないが、1週間連続した観察を1回の調査として月2回、あるいは3日間連続した観察を1回の調査として月4回、これを2年間実施すること。なぜなら、渡り鳥の種類、個体数、時期等は年による変動があり、この年による変動及び計画地における渡り鳥のピーク状況を把握することが難しいからである。また、小鳥類の渡りは夜間も行われるので、日の出前後及び日没前後の目視、鳴き声を中心とした調査だけでは不十分である。「鳥類等に関する風力発電施設立地適正化のための手引き」(環境省、平成27年修正版)に準拠し、垂直回しを含めたレーダー調査を活用し、計画地における夜間の小鳥の渡り状況を把握すること。鳥の種類は分からなくても、おおよその個体数と飛行高度を把握することで、計画地が小鳥の渡り経路になっていないか、飛行高度等からみてバードストライクが発生する危険性がないか確認すること。 ◇計画地の地図を見ると、林野庁の設定した「緑の回廊」にいくらか配慮した形で設定されているが、大幅な見直しとは受け取れない。これは、「緑の回廊」事業の目的・意義を考える場合に大変遺憾である。計画地には絶滅危惧1B類に指定されているクマタカが生息している可能性が高く、これは、単にクマタカのバードストライクを回避すればよいという問題ではない。生態系の頂点に立つクマタカなど希少猛禽類は、餌動物となる多くの野生生物を育む豊かな自然環境に支えられているのであり、森林伐採や土地の改変が行われれば、クマタカの餌となるノウサギやヤマドリなどが激減し、クマタカの生息地が奪われることになる。計画地には優れた自然が多く残されており、環境省、林野庁が推進する生物多様性保全の観点からきわめて損失が大きいと考えられることから、(仮称)宮城山形北部風力発電事業については、生物多様性保全の観点から、中止も含めて事業規模を大幅に見直すことを要望する。 |
(仮称)宮城山形北部風力発電事業 環境影響評価方法書に対する意見書
項 目 | 記入欄 |
氏 名 | ①日本野鳥の会宮城県支部 支部長 竹丸 勝朗 ②公益財団法人日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一 (公印省略) |
住 所 | ①〒982-0811 宮城県仙台市太白区ひより台20-7 ②〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル |
環境影響評価方法書についての環境の保全の見地からの意見 |
この度、貴社が作成された「(仮称)宮城山形北部風力発電事業 環境影響評価方法書」について、次のとおり意見を提出します。 現在、環境影響評価方法書(以下、方法書と言う)を縦覧している(仮称)宮城山形北部風力発電事業について、対象事業実施区域(以下、計画地と言う)に風力発電施設(以下、風車と言う)を建設した場合、環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠB類で宮城県の絶滅のおそれのある野生動植物 RED DATA BOOK MIYAGI 2016(以下宮城RDBと言う)にも掲載されているクマタカの生息地と重なることが予想され、衝突死(以下、バードストライクと言う)が発生する危険性が高い。また、サシバやハチクマなど希少猛禽類の渡り経路に対しても障壁影響等が発生することが懸念される。 ①私たちの普段の観察において計画地周辺でクマタカの生息を確認しており、また、計画地全域周辺でも同種の繁殖の可能性が高いことから、影響評価に係る現地調査ではクマタカが繁殖しているものとして、2営巣期にわたり調査を行うなど、調査には慎重を期していただきたい。国内ではクマタカが過去に風力発電施設によるバードストライクに遭った事例があることから、計画地に風車を建設した場合、バードストライクの起こる可能性が高いと考える。そのため、クマタカの生息状況の確認および猛禽類の渡りに係る調査について、環境影響評価が適切に行えるよう質、量とも十分なものを求める。 ②方法書における鳥類の調査計画において、季節ごとに年4回の調査を計画されているが、猛禽類の生息、生態調査は造巣期から巣立ち幼鳥の巣外育雛期までの生態、行動範囲を調査によって詳細に把握していただきたい。猛禽類が計画地をどのように利用しているかを明確にできるよう調査時期を選定するとともに、調査回数を増やすなど配慮していただき、周年生息する猛禽類の正確な生息状況データを影響評価に提供していただきたい。 ③ミゾゴイやヨタカなど夕方から朝方の夜間に活動する種の調査は適切な時間および時期、地域で行い、生息状況がきちんと評価できる夜間調査を要望する。また、夜間に上空を移動する小鳥類やガンカモ類の存在も知られているので、各種アセスのガイドラインに沿った内容だけでは不足してしまう調査データを補うような調査の実施(時間及び回数)を求める。 ④秋の渡り調査にあたっては、夏鳥の南下時期と冬鳥の南下時期が異なるので、3回の調査回数では全く不十分である。夏鳥であるサシバやハチクマなどの猛禽類調査にあたっては、適切な移動時期に適切な回数の調査を行い、計画地付近を通過する猛禽類の飛行行動を明らかにできる調査方法で実施すること。また、計画地は冬鳥の移動ルートとなっていることが予想されるので、バードストライクが予想される小鳥類やガンカモ類についても、猛禽類調査と同様の調査の実施を要望する。 ⑤計画地を通過する猛禽類について、秋の調査実施を計画されているが、サシバ、ハチクマの移動時期は、宮城県では9月上旬から始まり、約ひと月続くことが観察され、また公表されている。しかし、ピークの時期は短く、その年の気候に左右されることが知られている。従って、このピークの時期を外さない調査方法での実施が必要である。計画地は広範囲であるため、風向きと日射により上昇気流発生が峰の東になるか西になるかが変わる。上昇気流の発生位置によって、移動のコースが変わること、風力によって移動時の飛翔高度が変わることも調査時には考慮して、適切な調査を行っていただきたい。 ⑥計画地周辺に生息する鳥類は猛禽類だけではなく、それ以外の鳥類や水鳥類の移動も考えられる。従って、日中の調査だけではなく、レーダー調査を行うなど夜間の調査も充実した内容となることを要望する。 以上 |