(仮称)日南風力発電事業 環境影響評価方法書に係る意見書を提出しました

「(仮称)日南風力発電事業 環境影響評価方法書」に係る意見書

令和元年10月1日 提出

項 目 記入欄
氏 名 ①日本野鳥の会宮崎県支部 支部長 岩切 久
②公益財団法人日本野鳥の会 理事長 遠藤孝一
住 所 ①〒880-0943 宮崎県宮崎市生目台西一丁目2-6
②〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
方法書についての環境の保全の見地からの意見

この度、貴社が作成された(仮称)日南風力発電事業に係る環境影響評価方法書について、次のとおり意見を提出します。

現在、貴社が環境影響評価方法書(以下、方法書と言う)を縦覧している日南風力発電事業について、対象事業実施区域(以下、計画地と言う)に風力発電施設を建設した場合、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」で国内希少野生動物種に指定され、「環境省レッドリスト」でEN:絶滅危惧ⅠB類(近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)に、また「宮崎県レッドリスト」にも掲載されているクマタカについて衝突死(以下、バードストライクと言う)等の影響が発生する危険性が非常に高く、また、「環境省レッドリスト」に掲載されているサシバなど希少猛禽類の渡り経路に対しても障壁効果等の影響を与えることが懸念される。
そのため、計画地およびその周辺において、一般的なものより質、量ともに更に十分で詳しい調査を行い、クマタカの生息および猛禽類の渡りの状況を把握したうえで、適切な保全措置を講じることを求める。
また、県内で減少が著しいヨタカやフクロウ、オオコノハズク、ミゾゴイなどの夜行性の鳥類など、クマタカ、サシバ以外の種についても十分な配慮を求める。

理 由

(1)方法書によれば計画地内には希少種のクマタカ、ミゾゴイ、サシバ等が生息していることが掲載されている。クマタカは過去に風車によるバードストライクに遭った事例があることから、計画地周辺での風車の建設はバードストライク等の影響が発生する可能性が高い。特に若いクマタカはバードストライクに遭う危険性が高く、繁殖地である当地では巣立ちおよびその後しばらくの時期が特に危険である。
方法書の「表4.3-9(2)鳥類の重要な種への影響の予測結果」には「事業実施想定区域内に主な生息環境が存在することから、事業実施により探餌活動の際、あるいは採餌環境と営巣環境間の移動や渡り時等において、移動経路の変更等の行動の変化及びブレード・タワー等への接近・接触の可能性があると予測する。」とある。クマタカなどの希少種の営巣が確認された場合は、営巣地周辺の区域を建設予定地から除外することを求める。
また、評価結果には、「低山帯の樹林、草地、市街地等を主な生息環境とする重要な種については事業実施想定区域内にも生息している可能性が高く、直接改変による生息環境の変化に伴う影響が生じる可能性がある」とあり、その為の留意する事項としてクマタカやサシバなどの猛禽類や渡り鳥ルートについて調査を実施するとあるが、「建設ありき」の調査であってはならず、バードストライクの回避策をどのように考えるのかその解決策が決まるまで工事を実施すべきではない。

(2)方法書及び日本野鳥の会宮崎県支部会員の目撃によると、予定地は、サシバの渡りルートになっている。クマタカ同様バードストライクに遭う確率が高い。
計画地一帯にはサシバを中心とする希少猛禽類の渡り経路が存在しており、風車の建設がバードストライクまたは障壁効果による渡り経路の変更といった影響を与える可能性が大きいと考える。

(3)動物の生息状況について文献その他の資料及び専門家等へのヒアリングにより調査をしたとある。専門家へのヒアリング結果により概略はつかむことができるが、絶滅危惧種のクマタカの生息状況(季節別の飛翔経路・繁殖カ所)等充分な現地調査をしてもらいたい。
 また、野鳥の種類によっては活動時間も異なるため、調査時間は毎回同じ時間ではなく時間帯を変えて調査することが必要であり、渡り鳥の調査においても2週間程度の間隔を置いて複数回の調査が必要である。自動撮影カメラの設置も有効である。

(4)計画地での風車の建設は、猛禽類を含む多くの希少鳥類の生息に対し、少なからず影響を及ぼすものと考える。ここではフクロウ、アオバズク、オオコノハズクなど夜間活動する野鳥も確認されており、このような夜行性の野鳥に対する対策も実施すべきである。フクロウ類の他、ミゾゴイ(宮崎県RL:EN-r)の鳴き声についても調査が必要で、さらに県内ではヨタカ(宮崎県RL:EN-r)の減少が著しくこのことにも慎重に調査して欲しい。

(5)渡り鳥や猛禽類等の鳥類について、バードストライクの重大な影響が避けられないとの結論に至った場合は風力発電機の配置等の検討を行うほか、バードストライクだけでなく、障壁影響による「渡り経路の変更」および「生息地の放棄(事実上の生息地からの追い出し)」といった影響についても、影響の回避または低減策を検討すべきである。

以上の理由から、貴社においても、風車の建設にあたっては、野鳥の生息状況等を的確に把握し、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう適切な対応をとることを強く求める。

以上。