(仮称)パシフィコ・エナジー遠州灘洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書を提出しました

令和元年 6月30日

「(仮称)パシフィコ・エナジー遠州灘洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」
ご意見用紙

ご住所 438-0035 静岡県袋井市砂本町12
ご氏名 日本野鳥の会遠江 代表 増田 裕

ご住所 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
ご氏名 (公財)日本野鳥の会 理事長 遠藤 孝一

環境の保全の見地からのご意見をお持ちの場合は、ご記入願います。

下記の理由により、事業実施想定区域のうち離岸距離5km以内の海域には洋上風力発電施設の設置をすべきではなく、また、風車列の数はできるだけ沖合に1列にとどめ、基数も可能な限り少なくすべきであることから、事業実施想定区域の位置および面積について大幅な変更を求める。

  • 環境省の「洋上風力発電所等に係る環境影響評価の基本的な考え方に関する検討会報告書」p14および「-資料編-」p107によれば、離岸距離5kmが鳥類への影響を回避するために望ましい設置距離とあるため、それにあたる範囲には洋上風力発電施設を建設すべきでない。
  • 海岸付近には多くのシギ・チドリ類(ムナグロ、ダイゼン、ハジロコチドリ、イカルチドリ、コチドリ、シロチドリ、メダイチドリ、オオメダイチドリ、ミヤコドリ、オオソリハシシギ、チュウシャクシギ、ホウロクシギ、アカアシシギ、キアシシギ、ソリハシシギ、イソシギ、キョウジョシギ、オバシギ、コオバシギ、ミユビシギ、トウネン、ヨーロッパトウネン、ウズラシギ、サルハマシギ、ハマシギ、ヘラシギ、キリアイ、アカエリヒレアシシギ、ツバメチドリ、等)および一般鳥類の渡り経路が存在する。
  • 海岸付近および沖合域には多数のカモメ類(ミツユビカモメ、ユリカモメ、ウミネコ、カモメ、シロカモメ、セグロカモメ、オオセグロカモメ)が生息するが、海外事例からみてもカモメ類はバードストライクが起こる危険性の高い鳥類であることから、これらの生息地を避けて風車を建設すべきである。
  • 海岸付近から水深20~30m以浅の海域には海のガンカモ類(コクガン、ホシハジロ、シノリガモ、クロガモ、ウミアイサ)およびカイツブリ類(アカエリカイツブリ、カンムリカイツブリ、ハジロカイツブリ)が多数生息しているが、海外事例からみても海のガンカモ類は生息地放棄を起こす可能性が高い鳥類であることから、これらの生息地を避けて風車を建設すべきである。
  • 事業実施想定区域から近い磐田市の海岸には絶滅危惧Ⅱ類のコアジサシが繁殖しているが、コアジサシは年によって繁殖コロニーの位置を変えることがある。事業実施想定区域に面する海岸はどこもコアジサシの繁殖および営巣条件を満たしていることから、いつコアジサシが繁殖するようになってもおかしくはない状況である。事業実施想定区域に面する海岸でコアジサシが繁殖するようになった場合、コロニーから5km沖合までは活発に利用する餌場になり、また、海外ではコアジサシの繁殖コロニーに近い洋上風力発電施設でバードストライクが多く発生することから、これらの海域を避けて風車を建設すべきである。
  • 事業実施想定区域にはアビ類(アビ、オオハム、シロエリオオハム)の渡り経路が存在する。アビ類は離岸距離500~5000m付近の海域を群で飛行高度50~100mで渡り、バードストライクが発生する危険性が高いことから、これらの渡り経路を避けて風車を建設すべきである。
  • 事業実施想定区域を含む周辺海域はオオミズナギドリの餌場として活発に利用されており、一度の観察で数百〜数千羽の群れを見るこがある。これらの鳥類の採餌場所に影響が及ばないよう、適切な立地選定を行う必要がある。
  • 配慮書段階から現地調査を伴う影響評価(前倒調査)について鳥類を対象に行う場合、調査の方法や時期等については事業実施想定区域周辺の鳥類の状況および海鳥の専門家等に意見聴取を行ったうえで策定すること。なお、海外事例に倣えば、年間12回は船舶によるライントランセクト調査を行い、既存データの無い海域で詳細に鳥類の状況を把握すべきである。
  • 鳥類以外の影響について
    1. 景観の問題
      本件配慮書に対する意見書は、特に問題意識を持った個人または関係団体などが閲覧し提出すると思われるが、事業実施想定区域周辺に暮らす一般市民ついては、風力発電施設の設置工事中または完成後に計画の存在を認識するのが普通である。配慮書段階で一般市民にもわかりやすく本事業の内容について告知し、フォトモンタージュ等を用いて事前事後で景観が変わる様子を示したうえで、広く市民の意見を聴取すべきである。
    2. 残骸の問題
      商用運転終了後や事業者の倒産等で事業継続が難しくなった場合の残骸、どのように風車を撤去するのか、撤去に係る費用等は担保が事業者内で担保できているかどうかを事業開始の条件にすべきである。
    3. 漁業との問題
      対象事業実施区域が含まれる周辺海域は県内でも有数のシラスやタイ、イサキ、アジ、タチウオ、コチ、ヒラメの漁場となっているため、これら漁業の操業に影響がないよう漁業者らと合意形成を果たしながら風車の設置位置を選定すべきである。
    4. 国防上の問題
      御前崎には航空自衛隊御前崎分屯基地が管理するレーダーサイトがある。配慮書に記載されている大型の風車をレーダーサイト周辺に建設した場合、レーダーに常に風車の影が映るなどして防衛監視業務に支障をきたす可能性があるため、これら業務に影響がないよう防衛省等と協議を行ったうえで風車の設置位置を選定すべきである。

以上