北九州響灘洋上ウインドファーム(仮称)に係る環境影響評価方法書に対する意見書を提出しました
「北九州響灘洋上ウインドファーム(仮称)に係わる環境影響評価方法書」に対する意見書
日本野鳥の会北九州支部 支部長代行 前田伸一(公印省略)
(公財)日本野鳥の会 理事長 遠藤孝一(公印省略)
1.第6.2-2表(18)調査、予測及び評価の手法(動物)
「過去に船舶トランセクト調査、定点調査等が実施されており、当該地域の鳥類相は把握できていることから、船舶トランセクト調査、定点調査(陸域からの)は実施しない。」
【意見】
過去の調査データを参考にすることも必要だが、それに全く依存し、事業者自身が最新の状況を調査しないことは、アセス軽視と言わざるを得ない。オオミズナギドリの渡来数に変化があるように、響灘海域の夏鳥・冬鳥、そして留鳥においても、年毎の気象条件の変化、餌生物の増減による個体数変化や飛翔行動の変化が推察できる。配慮書審査会においても、委員から「(これまでの)データを補完しつつ、方法書以降に、年次調査に反映できれば」の意見があるように、トランセクト調査・定点調査を省略してもよいという意味ではないはずである。過去のデータに依存するのではなく、事業者自身がその都度、責任を持てる調査を行うこと。
※参考:近年における玄界灘の海鳥(アビ科)個体数変化について
玄海島、志賀島、相島、奈多漁港、新宮港に囲まれる海域の海鳥観察において、アビ科の個体数変化は以下の通りである。なお、2010年以前には、1592、3692がカウントされたこともある。
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | |
観察個体数 | 78 | 407 | 675 | 156 | 738 | 460 |
観察地 | 陸上 | 陸上 | 陸上 | 船上・陸上 | 船上・陸上 | 陸上 |
引用:日本野鳥の会福岡支部観察記録(玄界灘海鳥調査報告書、福岡支部報)より
2.第6.2-2表(20)
鳥類調査における船舶定点調査~春・夏・秋・冬の各季3日間程度
【意見】
響灘地区における、これまでのアセス調査において、荒天のため、陸域・海域にかかわらず予定通りの調査を実施することが出来なかった例がある。特に海上における調査は、冬季において厳しいと思われるが、各季3日間の調査予定が1日だけ、もしくは全く実施できなかったときは、どのようにカバーするのか。次の季節にずれ込んだり、短期間にまとめて実施するようなことになると、各季における鳥類調査の正確さを欠くことになる。予定日を多めに設定しておくなどの対策を検討しておくこと。
3.第6.2-2表(24)鳥類調査地点設定根拠(鳥類の渡り時の移動経路調査)
W1.新脇之浦漁港:Bエリアの海域を観察する定点
W2.藍島:Cエリア及びDエリアの海域を観察する定点
W3.高塔山:響灘の東側から北九州市東側一帯を見渡せる定点
W4.風師山:春季と秋季に主にハチクマの渡りを観察できる定点
【意見】
1)藍島からDエリアを観察するよりは、Dエリアの対岸(10基の風車の場所)から観察する方が確実ではないかと考える。
2)Aエリアの海域を観察する定点として、白島を設定すること。
3)近年のハチクマ観察地点として特に適しているのは高塔山であり、春季は5月初旬から下旬の1か月間に響灘沿岸から内陸まで幅広いコースを渡り、渡り時期のピークらしいピークは見られない。秋季の渡りは9月中旬から25日過ぎまでに集中して渡り、気象条件としては、東もしくは南よりの風の場合に高塔山周辺と響灘地区を多数飛翔する(北九州支部の観察記録より)。配慮書への当支部からの意見を参考にしていただきたい。
4)海岸地点での渡り鳥調査においては、海上に飛び出す地点と、着地(上陸)する地点を確認すること。海上の渡りを確認するのは容易でないため、両地点を把握することで海上を渡るコースがおよそ確認できる。
5)渡り鳥は夜間に渡る種が多いことから、夜間のレーダー調査を実施すること。配慮書審査会においても、委員から夜間の調査が要望されており、実証研究のデータに依存することなく、事業者自身がその都度、調査を行うこと。夜間に渡る鳥類を把握することは、鳥類への影響を回避するには欠くことのできない調査である。
【意見】
本事業は響灘における大規模な洋上風力発電計画であるため、鳥類への影響は海域における生態系に影響を及ぼすことが懸念される。さらに「渡り鳥の十字路」と呼ばれる北九州市の生物多様性に汚点を残す結果とならないよう、事業者自身が責任を持って調査を実施し、環境影響評価を行うべきである。大規模な開発事業であればあるほど、他の模範となるべく綿密な調査を実施し、環境影響評価を行ってこそ、「本当に自然にやさしい自然エネルギー」を目指す風力発電事業といえる。
以上の意見が反映された調査を実施するよう望みます。