(仮称)第二中九州大仁田山風力発電事業 環境影響評価方法書に係る意見書に対する意見書を提出しました

日 野 鳥 発 第 121 号

(仮称)第二中九州大仁田山風力発電事業 環境影響評価方法書に係る意見書

平成28年3月11日 提出

項目 記入欄
氏名 ①日本野鳥の会宮崎県支部 支部長 前田 幹雄
②公益財団法人日本野鳥の会 理事長 佐藤 仁志
住所 ①〒889-1605 宮崎県宮崎市清武町加納乙62‐90
②〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23丸和ビル
評価書についての環境の保全の見地からの意見

 この度、貴社が作成された(仮称)第二中九州大仁田山風力発電事業に係る環境影響評価方法書について、次のとおり意見を提出します。

 現在、貴社が環境影響評価方法書(以下「方法書」と言う。)を縦覧している第二中九州大仁田山風力発電事業について、対象事業実施区域(以下「計画地」と言う。)に風力発電施設を建設した場合、環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠB類で、かつ宮崎県レッドリストに掲載されている、国内希少野生動植物種のクマタカにおいて衝突死(以下、バードストライクと言う)等の影響が発生する危険性が高く、また、サシバやハチクマなど希少猛禽類の渡り経路に対しても障壁効果等の影響を与えることが懸念される。
 そのため、計画地およびその周辺において、一般的な環境影響評価より質、量とも十分で詳しい調査を行い、クマタカの生息および猛禽類の渡りの状況を把握したうえで、適切な保全措置を講じることを求める。

理由

(1)方法書によると、現在、建設工事中の中九州大仁田山風力発電事業予定地周辺(以下「建設地」と言う。)において、クマタカ(平成24年および25年の調査)が3つのエリア(北東ペア、南東ペア、西ペア)に生息していることが分かっている。この他、さらに3番いがの計画地周辺に生息していることが分かった。計画地周辺に営巣地が2カ所あることも分かっている。クマタカは過去に風車によるバードストライクに遭った事例があることから、計画地周辺での風車の建設はバードストライク等の影響が発生する可能性が高いと考える。

(2)方法書によると、建設地で実施された希少猛禽類調査で、サシバが平成24年秋に27回、25年秋に17回、ハチクマが24年秋に5回、ハイタカが24年秋に14回、ツミが24年秋に8回確認されている。また、平成27年4月にはサシバの渡りと考えられる飛翔を23回記録している。
 さらに、方法書にある専門家の意見でも「本州または朝鮮半島から渡ってくるルートは中央山地を利用している可能性があると言われており、当該地域もその一部に該当すると思われることからサシバの秋の渡りのルートにも留意していただきたい」と述べられている。また、「サシバと同じルートをハチクマが利用している可能性がある。サシバより約1カ月早い時期に渡りを開始するので、こちらも留意してもらいたい」と指摘されている。
 これらのことから、計画地一帯にはサシバを中心とする希少猛禽類の渡り経路が存在しており、風車の建設がバードストライクまたは障壁効果による渡り経路の変更といった影響をこれらの鳥類に与えると考える。

(3)日本野鳥の会宮崎県支部が2014年9月14日に計画地周辺で鳥類調査を行った結果、大仁田山南側でクマタカの飛翔を3回(4羽)記録した。また、2羽のサシバが計画地の稜線上すれすれを北から南へ飛翔したことを確認した。1日だけの調査でも大仁田山周辺や南側でクマタカ等の猛禽類が頻繁に活動していることが確認された。
 また、この調査ではアカヤマドリ(宮崎県レッドリスト準絶滅危惧種)など21種の鳥類を記録している。貴社が作成した配慮書では、計画地内でルリビタキ(宮崎県レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類)、カッコウ(同準絶滅危惧種)、オオルリ(同準絶滅危惧種)など10種、計画地周辺でもハチクマやコノハズク(同)、ヤイロチョウ(同絶滅危惧ⅠB類)、サシバ(同準絶滅危惧種)など、希少種を含む24種の鳥類の生息およびその可能性を指摘し、重要種として指定している。
 これらのことから、計画地での風車の建設は、猛禽類を含む多くの希少鳥類の生息に対し、少なからず影響を及ぼすものと考える。

(4)専門家も指摘しているようにフクロウ類の調査が不足している。フクロウ、オオコノハズク、夏鳥のコノハズク、アオバズク、数の少ないヨタカを主な対象とした夜間調査も実施すべきである。

(5)方法書の第7.1-2表(4)にある「重大な環境影響が考えられる事項についての評価の結果」の動物の部分において、「渡り鳥や猛禽類等の鳥類について、バードストライクの重大な影響が避けられないとの結論に至った場合は、風力発電機の配置等の検討を行う」と保全措置を述べているが、バードストライクだけでなく、障壁影響による「渡り経路の変更」および「生息地の放棄(事実上の生息地からの追い出し)」といった影響についても、影響の回避または低減策を検討すべきである。

 以上の理由から、計画地およびその周辺において、一般的な環境影響評価よりもさらに詳しい調査を求めるところである。
 貴社においても、風車の建設にあたっては、野鳥の生息状況等を的確に把握し、地域の優れた自然環境と生物多様性が失われないよう、適切な対応をとることを強く求める。

以上