粟島
環境構成
粟島は、新潟県の沖合35㎞の日本海上にある、周囲23㎞の有人島である。島の中央には、標高265.6mの小柴山があり、南北に連なる山々の東側と西側に集落がある。島の西部の丸山、立島の周辺、そこから北部に伸びる北西の崖で、オオミズナギドリが繁殖しており、その繁殖地は拡大しつつある。良好な漁場に囲まれており、漁業と観光業が盛んである。
海鳥の繁殖地の保護指定
- 粟島鳥獣保護区(立島特別保護区)
繁殖している海鳥
オオミズナギドリ
海鳥・海洋保全への脅威
- 漁業操業時の羅網が推測される。
- 気候変動による餌資源の減少(近年、日本海は水温の上昇傾向が著しい。オオミズナギドリは、カタクチイワシを主な餌としているが、海水温が高温の年は繁殖成績、雛の成長速度が低いことから、長期的に繁殖地の個体群動態に影響を与える可能性がある。)
- 洋上風力発電建設の可能性(村上市沖の洋上風力発電については、実施は見直されたが、今後も日本海沖に洋上風力発電建設の可能性がある。)
- ノネコによる捕食(近年、新潟県獣医師会、粟島浦村、長岡技術科学大学でTNR(避妊手術)を実施し、観察されるノネコの個体数は減少傾向にある。しかし、一方でカメラで鳥が襲われる様子が確認されたり、箱罠でノネコが捕獲される事例は後を絶たない。)
保全活動
- 外来種のコントロール:実施者(粟島浦村、長岡技術科学大学、新潟県獣医師会)
内容:2013年よりTNR(避妊手術)活動を実施。これまで親猫の避妊去勢を行い、子猫はボランティア飼育の後、島外譲渡をしている。 - 環境教育活動:実施者(長岡技術科学大学、名古屋大学)
内容:オオミズナギドリの調査でわかったことの講演会の開催(小中学校)、フィールド調査に現地の人や子供たちを招いて、オオミズナギドリの生態を紹介する活動を実施 - 法律制定、政策、規制:実施者(粟島浦村)
内容:外来種の持ち込みを禁止する条例を制定し、飼育する猫のIDチップ装着、避妊去勢を義務付けている。 - モニタリング調査:実施者(長岡技術科学大学、名古屋大学)
内容:オオミズナギドリのヒナの成長速度、繁殖成功率、巣立ち率、GPSを用いた親鳥の繁殖期の行動調査、胃内容物の調査を2008年より継続して実施。