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概説:木曽岬干拓地のチュウヒの危機
国内でチュウヒは現在、12か所・計60ペア程度しか繁殖が確認されていない(絶滅危惧ⅠB類)。干拓や河川改修などによってアシ原が減少しているため。
日本の猛禽類(絶滅危惧種)の繁殖個体数
チュウヒ 数十羽(繁殖個体数)
イヌワシ 300羽(繁殖個体数)
クマタカ 900~1000羽(個体数)
オオタカ 1000羽以上(個体数)
木曽岬干拓地で冬季に観察できる猛禽類
全国有数の種類:チュウヒ・ハイイロチュウヒ・ノスリ・ケアシノスリ・ハヤブサ・チョウゲンボウ・コチョウゲンボウ・コミミズク・ミサゴなど (ねぐらとして利用)
木曽岬干拓地全体を「チュウヒの繁殖地として保全し、野生生物とヒトの共存を目指す自然教育の場」
として観察会などを通して活用することを提案
これまでの経緯
1950年 | 農林省(当時)の事業として干拓事業が開始される |
1973年 | 干陸化する(総工費150億円)440ha 20年以上放置 |
1990年代 | 愛知・三重の両県の県境が問題に |
1993年 | 8月、農水省と両県が「木曽岬干拓土地利用検討会議」を設置、土地利用の在り方について検討開始 |
1994年 | 会計検査院の検査報告(改善意見)が出される。 6月、農水省の立会いのもと、両県知事が「木曽岬干拓地に関する確認書」を取り交わし合意 |
1999年6月 | 木曽岬干拓地土地利用検討委員会「木曽岬干拓地土地利用に関する報告書」公表。「現状地盤高を前提として将来、高度な形での利用に至るまでの間、干拓地を大きく産業エリアと交流エリアとして位置づけ検討していく」とした |
2000年 | 両県が国(農水省)より土地を買い取る。契約書で、野外公園広場等、公の施設として5年間の供用を義務付け |
2001年 | 「木曽岬干拓地整備事業環境影響評価方法書」を発表 日本野鳥の会三重県支部・愛知県支部と名古屋鳥類調査会で調査開始 |
2004年 | 環境影響評価準備書 日本野鳥の会など意見書。三重県聴取会にて日本野鳥の会など意見陳述 |
2005年 | 2005年 1月 環境影響評価書 伊勢湾岸道路の北側にわんぱく原っぱを建設、チュウヒのための保全区域を整備する計画。着工後もチュウヒ等の事後調査が継続されている。 |
2011年 | 埋立て用残土の不足により、平成22年度末完成予定だったわんぱく原っぱの完成予定が平成26年末まで延期される。6月の県議会でメガソーラー基地の設置が提案される |
2012年 | 1月、日本野鳥の会、名古屋鳥類調査会がチュウヒ保全のための土地利用計画の変更の要望書を提出 |
問題点
- 必要性のない事業計画になっている
アセス準備書に寄せられた意見は、「事業の必然性に関すること(14件)」、「干潟の復元に関すること(25件)」に集中している。
日本野鳥の会は、湿性の草原の生物多様性を維持し、環境教育に活用することを提唱している。 - 代償処置になっていない
北側の開発の代償措置として、3つがいのチュウヒの繁殖地の代償措置として約50ヘクタールのチュウヒ保全区の設置工事が進行しているが、2009年以降、繁殖の成功は確認されていない。