JP010 知床半島・斜里岳(しれとこはんとう・しゃりだけ)

北海道:斜里町、清里町、羅臼町、標津町、中標津町

北海道:斜里町、清里町、羅臼町、標津町、中標津町

位置 N 43°59′ E 145°01′
面積 123,000ha

環境構成【海洋/断崖/草原/森林/河川/湖沼】

藤川友敬
写真:藤川友敬

知床半島は、オホーツク海に突出した長さ約70km、基部の幅約25kmの細長い半島である。半島中軸には標高1,660mの羅臼岳をはじめ、硫黄山、遠音別岳、海別岳などが連なり、山麓の針広混交林帯からダケカンバ帯を経て高山のハイマツ帯まで連続した原生的環境が残されている。海岸部は断崖や岩場が続き、ウミウやケイマフリ、カモメ類の営巣地となっている。海岸断崖上部の森林にはオジロワシが営巣し、冬期は多数のオオワシが渡来して越冬する。森林内を流れる渓流にはオショロコマなどの淡水魚類が高密度で生息し、これら魚類を餌とするシマフクロウが繁殖している。半島基部には標高1,547mの斜里岳があり、知床火山群と屈斜路・阿寒火山群とを結んでいる。標高1,000m付近からはハイマツ帯となり、多くの高山植物が自生する。羅臼岳・遠音別岳・斜里岳のハイマツ帯にはオオムシクイが繁殖しており、国内で繁殖が確認されているのはこの山系だけである。

選定理由

A1 オオワシ・シマフクロウ
A3 オオワシ・シマフクロウ
A4i ウミウ・オオセグロカモメ

保護指定

サイトの全域(90%以上)に法的な担保がある
<保護指定の内容>
国指定鳥獣保護区(知床)、国立公園(知床)、都道府県立自然公園(斜里岳道立自然公園)、自然環境保全地域、保護林
<その他>
世界自然遺産登録地

保全への脅威

  • エゾシカ狩猟による鉛中毒(オオワシ・オジロワシ)
  • 希少動物の交通事故・感電事故(オオワシ・オジロワシ・シマフクロウなど)
  • 河川工作物による魚類への影響(魚食性鳥類への影響)
  • 希少種(シマフクロウ、オジロワシ、オオワシ)への観光目的餌付け。
  • かつて、海鳥営巣地付近の小型船航行によるケイマフリ繁殖への影響があったが、観光船事業者・行政・研究者等関係者よる協議会が発足し、影響を回避する航行ルール合意やケイマフリの保護啓発活動が共同で行われるようになり、ケイマフリの営巣数に回復傾向が見られている。
  • ヒグマが海鳥コロニーに侵入し、営巣攪乱と幼鳥の補食による影響が出ている。

保全活動

  • 環境管理:実施者(公益財法人知床財団、環境省、林野庁、斜里町、羅臼町 )
    内容:世界遺産地域管理計画に基づき、各行政機関・地元各機関が環境管理事業を
    実施
  • 外来種のコントロール:実施者(環境省)
    内容:アライグマ生息状況調査・捕獲調査
  • 環境教育活動:実施者(知床財団、知床博物館、羅臼町教育委員会、斜里高校、羅臼高校等)
    内容:地元小中学校におけるヒグマ学習、世界遺産体験学習など
    地元高校における知床自然概論授業、野外観察や海洋生物学習、世界遺産学習、知床100㎡運動の中で知床自然教室開催、森作りボランティア活動
  • 保全のための人材育成活動:実施者(知床財団、知床博物館、知床自然大学院大学 設立財団)
    内容:知床財団・知床博物館:大学生実習・インターンシップの受け入れ
    知床大学院設立財団:人材育成のための研修事業と高等教育機関設置活動
  • 法律制定、政策、規制:実施者(環境省、林野庁、北海道 )
    内容:知床世界自然遺産管理計画策定、エゾシカ管理計画策定、ヒグマ管理計画策定、知床海域管理計画策定、知床エコツーリズム戦略策定、知床条例(道条例)策定
  • モニタリング調査:実施者( 環境省、林野庁、知床財団、民間グループ )
    内容:世界遺産管理計画に基づく各種モニタリング調査(37項目、うち鳥類5項目)
  • 経済活動を通じた保全(エコツーリズム等):実施者(知床世界自然遺産地域適正利用エコツーリズム検討会議とその構成団体)
    内容:知床エコツーリズム戦略に基づき、観光事業やエコツーリズム事業のチェックが行われている。
  • その他:シマフクロウ保護増殖事業(環境省)

※サイト情報の詳細版はこちら(PDF 672KB)
※知床半島・斜里岳の周辺海域は、マリーンIBA(Marine Important Bird and Biodiversity Areas:海鳥の重要生息地)に選定されている。 詳しくはこちら

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