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クロツラヘラサギ世界一斉センサス集計結果(2025年)
2025年4月7日
2025年クロツラヘラサギ世界一斉センサスの集計結果
日本クロツラヘラサギネットワーク・(公財)日本野鳥の会
東アジアの国々と地域が協力して毎年1月に実施している「クロツラヘラサギ世界一斉センサス」(主催:香港バードウォッチング協会(HKBWS))の、2025年の調査結果がまとまりましたのでお知らせ致します。
この調査は、絶滅が危惧されているクロツラヘラサギの越冬個体数と分布を把握するために、日本、韓国、中国、台湾、香港、ベトナム、タイ、フィリピンなど東アジアの自然保護団体が参加し、毎年実施しています。2025年の調査は1月17日~19日にかけて行われました。
クロツラヘラサギの国内での越冬地は、九州や沖縄など西日本が中心です。2025年の調査は、日本クロツラヘラサギネットワーク、日本野鳥の会の会員を中心に1都1府8県77か所において、計66名の協力者を得て行われました。
1. 2025年クロツラヘラサギ世界一斉センサス調査結果の概要
2025年クロツラヘラサギ世界一斉センサスは1月17日~19日にかけて行われ、各国の150地域からの報告に基づき、香港バードウォッチング協会(HKBWS)が取りまとめました。
その結果、2025年の調査では、東アジア全体で前年より93羽増えて、7,081羽が確認され(前年比1.3%増)、史上最多を記録しました。
東アジア地域での主要な越冬地は台湾です。4,169羽が観察され、全世界の個体数の約59%を占めています。
2025年に観察個体数が増加した地域は、台湾の4,169羽(0.8%増)をはじめ、中国本土1,671羽(2.5%増)、日本716羽(2.0%増)、ベトナム112羽(30.2%増)、韓国52羽(33.3%増)、フィリピン17羽(142.9%増)、マカオ16羽(23.1%増)です。日本とベトナムでは過去最高の個体数が記録され、クロツラヘラサギの生存には、分散した複数の安全で管理された越冬地が重要であることを示しています。特定の地域に個体が集中しすぎると、生息地の消失や鳥インフルエンザなどのまん延により、個体群が大きな影響を受ける可能性があります。そのため、今後も複数の越冬地を確保し、長期的な保全を進める必要があります。
一方、減少傾向が見られたのは、后海湾328羽(12.5%減)でした。この他、タイ、カンボジア、マレーシアでは一斉センサス期間中には生息が確認されませんでした。
后海湾は2023年の激減後、昨年は個体数が増加しましたが、今年は減少しており、依然として越冬するクロツラヘラサギにとっては不利な環境であり、さらなる保護と生息地の管理が必要と考えられます。
クロツラヘラサギの全世界の観察個体数は、2019年に4,000羽、2021年に5,000羽、2022年には6,000羽を超えました。2025年の一斉センサスで7年連続の個体数増加となり、着実に個体数が回復してきているといえます。しかしながら、その増加率はこれまでの調査結果よりも低くなっており、特に台湾、中国本土、日本といった主要な越冬地では増加率が0.6%~2.5%と少なめでした。
(HKBWSによる2025年世界一斉センサスの集計をもとに作成)
場所 | 2016年 調査 |
2017年 調査 |
2018年 調査 |
2021年 調査 |
2022年 調査 |
2023年 調査 |
2024年 調査 |
2025年 調査 |
前年比 (2025年-2024年. 羽数) |
前年比 (2025年/2024年. %) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
台湾 | 2,060 | 2,601 | 2,195 | 3,132 | 3,824 | 4,228 | 4,135 | 4,169 | 34 | +0.8 |
后海湾 (香港、深セン) |
371 | 375 | 350 | 336 | 369 | 299 | 375 | 328 | -47 | -12.5 |
中国本土 | 434 | 397 | 744 | 1,022 | 1,136 | 1,307 | 1,630 | 1,671 | 41 | +2.5 |
日本 | 383 | 433 | 508 | 570 | 683 | 640 | 702 | 716 | 14 | +2.0 |
ベトナム | 9 | 62 | 65 | 82 | 88 | 80 | 86 | 112 | 26 | +30.2 |
マカオ | 61 | 44 | 50 | 45 | 22 | 21 | 13 | 16 | 3 | +23.1 |
韓国 | 38 | 29 | 26 | 34 | 37 | 54 | 39 | 52 | 13 | +33.3 |
タイ | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | -1 | -100.0 |
カンボジア | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | – |
フィリピン | 0 | 3 | 1 | 0 | 4 | 7 | 17 | 10 | +142.9 | |
マレーシア | 0 | 3 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | – | |
合計 | 3,356 | 3,941 | 3,944 | 5,222 | 6,162 | 6,633 | 6,988 | 7,081 | 93 | +1.3 |
(HKBWSの報告に基づく)
2. 日本におけるクロツラヘラサギ一斉センサス調査の結果
日本クロツラヘラサギネットワーク・(公財)日本野鳥の会
2025年、国内では昨年より14羽多い、計716羽が確認されました(2.0%増)。最も多かったのは熊本県で207羽が観察され、次いで、福岡県152羽、鹿児島県98羽、佐賀県89羽、山口県57羽、大分県・宮崎県41羽、沖縄県18羽が観察されました。西日本以外では、東京6羽、大阪府で7羽が観察され、以前より東側の地域でも生息確認が増えています。
図1. 日本におけるクロツラヘラサギの記録数の推移
図2. クロツラヘラサギの県別記録数の推移