クロツラヘラサギ世界一斉センサス集計結果(2024年)

2024年5月2日

2024年クロツラヘラサギ世界一斉センサスの集計結果

日本クロツラヘラサギネットワーク・(公財)日本野鳥の会

東アジアの各国と地域が協力して毎年1月に実施している「クロツラヘラサギ世界一斉センサス」(主催:香港バードウォッチング協会(HKBWS))の2024年の調査結果がまとまりましたのでお知らせ致します。

この調査は、絶滅が危惧されているクロツラヘラサギの越冬個体数と分布を把握するために日本、韓国、中国、台湾、香港、ベトナム、タイ、フィリピンなど東アジアの自然保護団体が参加し、毎年実施しています。2024年の調査は1月19日~21日にかけて行なわれました。

クロツラヘラサギの国内での越冬地は、九州や沖縄など西日本が中心です。2024年の調査は、日本クロツラヘラサギネットワーク、日本野鳥の会の会員を中心に1都1府8県69か所において、計102名の協力者を得て行われました。

1.2024年クロツラヘラサギ世界一斉センサス調査結果の概要

2024年クロツラヘラサギ世界一斉センサスは1月19日~21日にかけて行なわれ、各国の150地域からの報告に基づき、香港バードウォッチング協会(HKBWS)が取りまとめを行ないました。その結果、2024年の調査では、東アジア全体で前年より355羽増えて、6,988羽が確認されました(5.4%増)。

東アジア地域での主要な越冬地は台湾です。4,135羽が観察され、全世界の個体数の約59%を占めています。
2024年に観察個体数が増加した地域は、中国本土で1,630羽(24.7%増)、后海湾375羽(25.4%増)、日本の702羽(9.7%増)、ベトナムの86羽(7.5%増)、フィリピンの7羽(75%増)で、昨年観察されなかったタイでは1羽が確認されました。

一方、減少傾向が見られたのは、台湾4,135羽(2.2%減)、韓国39羽(27.8%減)、マカオ13羽(38.1%減)で、この他、カンボジア、マレーシアでは一斉センサス期間中には生息が確認されませんでした。昨年大きな減少があった后海湾では今年個体数が増加したものの、越冬地を含む土地において開発事業計画が進行しており、油断を許さない状況です。

クロツラヘラサギの全世界の観察個体数は、2019年に4,000羽、2021年に5,000羽、2022年には6,000羽を超えました。2024年の一斉センサスで6年連続の個体数増加となり、着実に個体数が回復してきていると言えます。

(HKBWSによる2024年世界一斉センサスの集計をもとに作成)

表1.地域別のクロツラヘラサギの記録数
場所 2021年
調査
2022年
調査
2023年
調査
2024年
調査
前年比
(2024年-2023年. 羽数)
前年比
(2024年/2023年. %)
台湾 3,132 3,824 4,228 4,135 -93 -2.2
后海湾(香港、深セン) 336 369 299 375 76 +25.4
中国本土 1,022 1,136 1,307 1,630 323 +24.7
日本 570 683 640 702 62 +9.7
ベトナム 82 88 80 86 6 +7.5
マカオ 45 22 21 13 -8 -38.1
韓国 34 37 54 39 -15 -27.8
タイ 0 1 0 1 1
カンボジア 0 0 0 0 0
フィリピン 1 0 4 7 3 +75.0
マレーシア 0 2 0 0 0
合計 5,222 6,162 6,633 6,988 355 +5.4

(HKBWSの集計に基づく)

2.日本におけるクロツラヘラサギ一斉センサス調査の結果

日本クロツラヘラサギネットワーク・(公財)日本野鳥の会

2024年、国内では昨年より62羽多い、計702羽が確認されました(9.7%増)。最も多かったのは熊本県で250羽が観察され、次いで、福岡県121羽、鹿児島県83羽、佐賀県82羽、山口県53羽、沖縄県50羽、大分県34羽、宮崎県24羽の順で観察されました。西日本以外では、東京3羽、大阪府で2羽が観察されています。

図1.日本におけるクロツラヘラサギの記録数の推移
図1.日本におけるクロツラヘラサギの記録数の推移

図2.クロツラヘラサギの県別記録数の推移
図2.クロツラヘラサギの県別記録数の推移

表2.県別に見たクロツラヘラサギの記録数の推移
表2.県別に見たクロツラヘラサギの記録数の推移(画像クリックで拡大)