野鳥保護区
野鳥の生息地の保全を目的として、日本野鳥の会では1986年から、土地の買取りや協定による「野鳥保護区」の設置に取り組んでいます。
その面積は現在、北海道におけるタンチョウとシマフクロウのための保護区を中心に、全国で3500ha以上にもおよび、民間の自然保護区としては国内最大級です。また、自然環境の改変や立ち入りを厳しく制限し、保護区となったあとも環境の維持に取り組むなど、高い保護レベルを保っており、我が国の自然保護に大きな役割を担っています。
土地の買取りや環境管理は、みなさまからのご寄付やご協力に支えられています。
これまでの活動
- 2022/3/16 【北海道・日高地域に新しい野鳥保護区が誕生】ご寄付をもとにした土地購入と、土地所有者との協定により、シマフクロウ3つがいの繁殖地、合計25.7ヘクタールを保全
- 2021/12/9 【北海道・根室地域に新しい野鳥保護区が誕生】ご寄付をもとに「シマフクロウ」の生息地37.3ヘクタールを購入、合計4つがいの生息地保全を強化
- 2021/1/7 【北海道・日高地域に新しい野鳥保護区が誕生】個人からのご遺贈により「シマフクロウ」の生息地57.1ヘクタールを購入
- 2018/3/23 新しい野鳥保護区が誕生
- 2016/8/22 十勝地域にシマフクロウのための野鳥保護区を設置しました
ご支援のお願い
- 野鳥保護区基金
- 新たな土地の購入と管理に限定したご寄付です。一口10万円から(「任意の金額の寄付」で10万円以上の金額を入力してください)
- 活動全般へのご寄付
- 野鳥保護区事業をはじめとする当会の活動全般に使われます。
ご寄付額に応じてシマフクロウ・タンチョウグッズをプレゼント
日本野鳥の会の野鳥保護区
持田野鳥保護区シマフクロウ日高第1
当会の絶滅危惧種を対象とした野鳥保護区事業が本格的にスタートしたのは1987年、北海道根室市の「持田野鳥保護区東梅」の設置からです。その前年、日本野鳥の会ツル保護特別委員会により策定された「タンチョウ保護の全体構想」の中で、当会は規模の大きな繁殖地については国や自治体に法的な保護の指定を働きかけ、行政による保全が難しい中・小規模な繁殖地は買取りや協定で保護をするという方針を打ち出していました。この根室市東梅の土地は個人の所有地でタンチョウが繁殖していましたが、競売にかけられたため買い手によっては開発されてしまうおそれがありました。すぐさま資金調達に奔走し、会員の方からのご寄付を得て、買取りによる当会最初のタンチョウの野鳥保護区が誕生しました。迅速な対応が可能だったのも民間団体だからこその利点です。
2004年からは、タンチョウ繁殖地の周辺の森に生息する絶滅危惧種シマフクロウの保護事業がスタートし、以来、野鳥保護区設置という手法で多くのタンチョウ、シマフクロウの生息地を保全しています。他にも、青森県のオオセッカ生息地、岩手県のイヌワシ生息地、沖縄県のノグチゲラの生息地などの保護区があります。
野鳥保護区で守る生物多様性
繁殖期のタンチョウはひとつがいで200~700haもの行動圏を持つと言われています。当会の野鳥保護区のひとつ「渡邊野鳥保護区フレシマ」も204haの広さに、保全しているタンチョウはたったひとつがいです。しかしここは、湿地や草原、森林などのさまざまな環境を持ち、低地でありながら冷涼な気候のため、海岸性から高山性まで多様な動植物が見られます。当会の調査では保護区内で118種の鳥類、335種の植物が確認されました。タンチョウをひとつのシンボルとして、私たちはそこに生息するすべての動植物を守っています。
野鳥保護区の環境を維持する
野鳥保護区の設置はゴールではなくむしろスタートです。土地を確保しても周辺の環境変化などが保護区内の環境に影響することもあります。また、もともと土地の一部が森林伐採などで環境改変されている場合は、その環境を回復させることも必要です。その場所特有の動植物がくらせる環境を保ち続けることも私たちの重要な役目ですが、そのためにはさまざまな調査と管理作業を継続して行なうことが必要です。当会には現在、北海道に4ヶ所の拠点があり、レンジャーがタンチョウやシマフクロウの生息地の情報を常に収集し、同時に広大な地域に点在する野鳥保護区の調査、巡回、管理にあたっています。調査や管理にも多くの労力や費用がかかります。これらの活動もみなさまからのご支援で支えられています。
野鳥保護区に行くには
野鳥保護区は貴重な動植物の生息地であるため、その多くは通常公開していません。しかし、いくつかの保護区では中を散策したり、道路からその自然を楽しむことができます。
- 渡邊野鳥保護区フレシマ
- 一部が「根室フットパス」のコースになっており中を歩くことができます。春から夏はオオジシギやベニマシコなどを、秋から冬はオオワシなどを見ながら雄大な景色を堪能できます。
- 仏沼野鳥保護区
- 周辺の道路からオオセッカやチュウヒ、コジュリンなどの野鳥観察を楽しむことができます。
野鳥保護区を見てみよう
野鳥保護区ストリートビュー
普段は入れない野鳥保護区をストリートビューで体験してみましょう。4つの保護区の景色を360度楽しむことができます。
これはGoogle の「ストリートビュートレッカーパートナープログラム」(※)に、当会が参加し、2016年9-10月に現地でレンジャーが撮影したものです。
※ストリートビュートレッカーパートナープログラムとは、ストリートビューの撮影を希望する観光協会、非営利団体、大学、研究機関などにGoogle がバックパック型のストリートビュー撮影機材「トレッカー」を無償で貸出すプログラムです。
https://www.google.co.jp/intl/ja/maps/about/partners/streetview/trekker/
渡邊野鳥保護区フレシマ
タンチョウのための野鳥保護区です。人工物がほとんどなく、根室の原風景を残すと言われる景色を見ることができます。
※右の地図の数字をクリックすると、おすすめのビューポイントを見ることができます。
ビューポイント
①:「東側の高台」
野鳥保護区の東側の高台で、この保護区一番の見晴しのよい場所です。西を向くと左に太平洋、正面の低くなった場所に湿地が広がっているのが見えます。海沿いの崖からあがる風に乗って、オジロワシやオオワシが舞うのが見られる場所です。
②:「北側の低地」
海に面した湿地から沢に沿って少し内陸に入った場所です。周囲と比べて低いこの場所は、大雨などで管理道が水没することもあります。周りにはハンノキが見られます。見渡すと周辺の丘陵が見え、変化に富んだこの保護区の地形がよくわかります。
③:「北側の尾根」
野鳥保護区の北側の尾根の上です。西側は林で、ちょうど林を抜けたところから南に海に面した低い湿地が臨めます。この広い湿原にひとつがいのタンチョウが毎年なわばりを作ります。北側に広がる国有林から保護区の森、草原から湿原、湖沼、海へと続く人工物の無い北海道の原風景を眺めることができます。
④:「西側の低地」
野鳥保護区の西側からの景色です。湿地が広がっているのが東側に見え、その奥には保護区東側の高台が臨めます。
※西側の市道を除き、通常、野鳥保護区は立入禁止です。ただし、一部はフットパスのルートになっており、中を歩くことができます。http://www.nemuro-footpath.com[※外部リンク。フットパスは申込み制です]
渡邊野鳥保護区ソウサンベツ
タンチョウのための野鳥保護区です。風蓮湖畔の湿地とその奥の高台で構成されています。
※右の地図の数字をクリックすると、おすすめのビューポイントを見ることができます。
ビューポイント
①:「高台の記念碑」
野鳥保護区の中央に位置し、風蓮湖を臨む高台です。この保護区の設置を記念した石碑が建っています。風蓮湖の向こうには、手前に槍昔の岬が、その奥に走古丹が見えます。
②:「白鳥橋」
風蓮湖に注ぐアッツコベツ川にかかる橋です。橋の上から見渡すと川の両岸にヨシが茂っているのが見えます。
③:「内陸の林」
風蓮湖から少し内陸に入った林です。ダケカンバやミズナラなどを左右に見ることができます。道の脇に湿地も見られます。
※ビューポイント3は一般の方は通常立入禁止です。1・2は通行可能ですが、ヒグマの生息地であるため、十分にご注意ください。
野鳥保護区事業所
〒059-1365
北海道苫小牧市植苗150-3
ウトナイ湖サンクチュアリネイチャーセンター内
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