カラスとその仲間について

カラスはスズメ目カラス科に分類されている野鳥です。世界では約120種類のカラス科の鳥が知られています。

カラスとその仲間たちは世界中に広く分布しています。いわゆる「カラス」と総称されるのはカラス属(Corvus属)で40種。この他にカケス属、オナガ属、カササギ属、ホシガラス属などがあり、ヤマムスメ、サンジャク、カササギ、オナガ、ホシガラスなどの鳥が70種余りいます。

カラスってどんな鳥?

カラスは、餌として利用できるものであれば何でも食べる雑食性で、果実(カキ、ビワなど)などの植物質や昆虫、小動物、他の鳥の卵やヒナなどを捕食し、動物の死骸、生ごみ、腐肉なども食べるスカベンジャーでもあります。春には動物質が多く、秋には果実などの植物質を食べる割合が増えます。また、カケスやホシガラスなどは餌が少ない時期の食べ物を補うため、貯食行動も行います。

繁殖期は3月~7月です。繁殖期になると、親鳥は縄張りを確保し、巣作りに取りかかります。巣は、森林の高木、街路樹、電柱などに作り、3月中には巣作りを終え、4月上旬頃に産卵し、巣立ちまでには約1ヶ月かかります。

巣立ち時期は5月下旬から6月中旬頃です。巣立ちは十分に飛べないままに行われ、巣から飛び出たヒナは、路上や街路樹の間など人の生活する空間でしばらく過ごします。この時期に親鳥は巣立ったヒナを守り、近づく人に対して威嚇するため、人とのトラブルが集中して発生します。

カラスとその仲間たち

ここでは、日本で見られる種類について紹介します。

日本で見られるカラスの仲間は、ハシブトガラス、ハシボソガラス、カケスなど11種で、このうちカラス属は6種です。がっしりとしたくちばしを持ち、採食に足を使い、食物を貯食する習性があり、学習能力が高く、環境にうまく適応しているとされています。

ハシブトガラス

ハシブトガラス(写真提供:石田光史)

全長:56.5cm
艶やかな黒い体と、大きく湾曲した太いくちばしが特徴。額が出っぱっている。ハシボソガラスよりやや大きい。幼鳥は羽に光沢がなく、口の中が赤い。
インドからサハリンまでのユーラシア大陸南東部、フィリピン、ボルネオなどに留鳥として分布し、国内では、小笠原諸島を除く日本全土に生息する。森林から市街地、農耕地、海岸など多様な環境で見られる。雑食性で、一腹卵数は3~5個。抱卵期間は約20日で、巣立ちまでは30~35日。繁殖期の親鳥は攻撃性が強い。繁殖が終わると、集団でねぐらをとる。国内にすむ4亜種のうち、南西諸島南部に生息する亜種オサハシブトガラスは体が小さく、くちばしの湾曲が小さい。「カー、カー」と澄んだ声で鳴くが、「アー、アー」、「アワッ、アワッ」といった声で鳴くこともある。

ハシボソガラス

ハシボソガラス(写真提供:石田光史)

全長:50cm
ハシブトガラスよりやや小さく、ミヤマガラスよりは大きい。くちばしはハシブトガラスより細く、湾曲はゆるやか。額のでっぱりは少ない。幼鳥は口の中が赤い。
熱帯と寒帯を除き、ユーラシア大陸のほぼ全域に留鳥として分布する。国内では、九州以北で留鳥。沖縄ではまれな冬鳥。農耕地や河川敷などの開けた環境を好み、地上を歩きながら餌をとる。一腹卵数は3~5個。抱卵期間は約20日で、巣立ちまでは30~35日。貝を落として割る行動や、クルミを車にひかせて割る行動が知られている。ハシブトガラスの澄んだ声とは異なり、尾羽を開き、頭を上下に動かし「ガアー、ガアー」と濁った声で鳴く。

ミヤマガラス

ミヤマガラス(写真提供:石田光史)

全長:47cm
ハシボソガラスよりやや小さい。くちばしは細くとがり、つけ根の灰白色が特徴。額が高く、頭頂は平ら。若鳥のくちばしのつけ根は黒い羽毛で覆われており、ハシボソガラスとの区別は難しい。
ユーラシア大陸の中緯度帯に広く分布し、北方のものは冬に南下する。以前は九州など西日本に多く渡来していたが、1980年代以降、分布が拡がり、北海道南部や東北地方などでも見られるようになった。農耕地や河原などで大きな群れを作り、地面に落ちている穀類や昆虫などを食べる。繁殖期は3~6月。樹上にお椀状の巣を作り、複数のペアが集まって繁殖する。一腹卵数は3~5個。尾羽を開き、頭部を前に出し「カララ、カララ」と鳴くほか、「ガァー」、「グワァー」などと鳴く。

コクマルガラス

コクマルガラス(写真提供:石田光史)

全長:33cm
ハトくらいの大きさで、くちばしは短く、細い。全身黒色の暗色型のほか、後頭部から頸、胸、腹にかけて白い淡色型、中間型が見られる。モンゴル、アムール、ウスリー、朝鮮半島、中国などユーラシア大陸に広く分布しており、冬には南に移動する。国内では、冬に九州を中心に渡来し、農耕地や干拓地などで、ミヤマガラスの群れに混じり、行動をともにする。「キョン、キョン」、または「キョ、キョ」などと鳴く。

ワタリガラス

ワタリガラス(写真提供:石田光史)

全長:61cm
北半球の温帯から寒帯にかけて、留鳥として広く分布する。国内では、冬鳥として北海道東部や北部に少数が渡来する。カラス科の中では最大で、くちばしは太く長い。飛ぶと、翼が長く、くさび形の尾羽が特徴。海岸から山地の森林、岩礁地などに生息する。警戒心が強く人にはあまり近づかない。非繁殖期には群れで生活し、動物の死がいや果実、穀物などのほか、流氷上でワシ類が食べ残した魚などを食べることもある。「カポ、カポ」、「グアグアグア」などと鳴く。

カケス

カケス(写真提供:石田光史)

全長:33cm
頭部は白と黒のごま塩模様で、翼の大雨覆・中雨覆には青と黒と白の縞模様がある。腰は白色。ユーラシア大陸の中緯度帯、東南アジア、北アフリカに分布し、国内では、屋久島以北の森林に留鳥として生息する。秋に渡りをし、冬には低地の緑地でも見られる。「ジャーッ」といった声で鳴き、他の鳥の声や機械的な音もまねる。国内にすむ4亜種のうち、北海道の亜種ミヤマカケスは頭部が赤褐色で目の色はブドウ色。

ルリカケス

ルリカケス(写真提供:石田光史)

全長:38cm
群青色の頭部、胸部、翼、尾羽、赤茶色の体上面と腹部が特徴で、尾羽の先端には白斑がある。奄美諸島の奄美大島、加計呂麻島、請島に留鳥として生息する。常緑広葉樹林や農耕地などで見られ、「シャー、シャー」、「ガー、ガー」といった声で鳴く。日本固有種で、国指定天然記念物。鹿児島県の県鳥。

オナガ

オナガ(写真提供:石田光史)

全長:36cm
黒い頭部と、青味がかった翼、水色の長い尾が特徴。幼鳥は頭部に白い羽毛が混じり、尾が短い。モンゴル北部、アムール、ウスリー、朝鮮半島などアジア東部とイベリア半島に留鳥として分布する。国内では、本州中部、北部の山林や人家付近で留鳥として生息する。群れで生活し、繁殖期も数つがいが比較的近くに集まり営巣する。「ゲェーイ、キュイキュイ」と鳴き、春には「ピューイピリピリピリ…」といった声も出す。

カササギ

カササギ(写真提供:石田光史)

全長:45cm
頭部から胸部、背中は黒色。肩羽や腹部は白色で、長いくさび形の尾羽が特徴。ユーラシア大陸の中緯度帯、北アフリカ、北アメリカ西部に留鳥として分布する。国内では、17世紀に朝鮮半島から移入されたものが佐賀平野を中心に生息し、近年、北海道や北陸の一部でも記録されている。球形の大きな巣を樹上に作り、電柱に営巣することも多い。「カシャ、カシャ」といった声で鳴く。カササギ生息地は、国指定天然記念物。佐賀県の県鳥。

ホシガラス

ホシガラス(写真提供:石田光史)

全長:34.5cm
体は黒褐色で、各羽の先端に白い斑がある。くちばしは黒くて細長い。スカンジナビアからカムチャッカまでのユーラシア大陸の冷帯及びヒマラヤ周辺に生息する。国内では、四国以北の亜高山帯から高山帯にかけて、ハイマツ、シラビソなどの針葉樹林に生息し、冬はやや低地に移動する。針葉樹の種子を貯食する習性がある。「ガーッ、ガーッ」、「ケケッ」などと鳴く。

これらのほかに、本来はヨーロッパから中央アジアで繁殖するニシコクマルガラスが迷鳥として、北海道(天売島、浜中町)、熊本県で記録されている。また、外来鳥類として、ヤマムスメが兵庫県で繁殖が確認されているほか、近年、逃げ出したサンジャクが愛媛県、香川県、高知県で繁殖し、生態系への影響が懸念されている。