トップメッセージ

2024年11月1日 更新

日本野鳥の会 会長 上田恵介

私と山(2)

前回、大学までの山との付き合いを書いたので、今回はそのあとのことを書いてみよう。

セッカの研究のはじまり

京大で昆虫生態学者になろうと思っていた頃、信州大から大阪市立大にホオジロの研究で有名な山岸哲さんが移ってこられた。この時点で就職して昆虫学者になる道もあったのだが、やっぱり鳥がやりたかった。そんなわけで、早速大阪市立大学に山岸さんを訪ね、博士課程から入学を許してもらった(もちろん院入試があったが)。鳥の研究を始めたのはこの時からである。さてテーマは何にしようかという時に山岸さんに「セッカはどうや?」とアドバイスされ、一夫多妻の鳥セッカの研究が始まったのである。

博士課程に進学してからは野外調査と論文作成、アルバイト(高校の非常勤)、それと野鳥の会の支部活動が忙しくて、自然と山からは離れてしまっていた。そして無事に(?)学位を取ったものの、そのあともしばらくは無職だったから、論文を書きつつ、高校生に生物を教える日々であった。自慢するわけではないが、ようやく職につけたのは38歳の時である。

高校で講義中

高校で講義中

低山から富士山まで

前置きが長くなったが、再度、山へ行くようになったのは、たまたま地元ニュータウンの自治会役員をしていた時に、「山遊会」という地域の山のサークルがあって、それに誘われたからであった。そのサークルで、関東近辺の山を登っていた。といってもメンバーはほぼ50歳以上のシニア世代なので、榛名山や赤城山から、高尾山、筑波山など比較的標高の低い近場の山が中心だった。しばらくあちこち登っているうちに、若手(といっても50代)メンバーで、少し高い山に登ろうと南アルプスや八ヶ岳にも出かけるようになった。

11月の上高地(背景に広がるのは穂高連峰)

11月の上高地(背景に広がるのは穂高連峰)

ちょうどその頃、大学の研究室ではジュウイチの研究をしていて、院生たちと富士山の須走口5合目のオオシラビソの森で調査をしていた。標高2000mの傾斜地で、ルリビタキ の巣を探して、一日中、斜面を登ったり降りたりしていると自然と体力もついてくる。初めて富士山に登ったのはこの時で、6月の初め、調査の合間の天気の良い日に、朝早く出て山頂まで往復してきた。9合目からは少し雪があったが、頂上には人っ子一人いない快晴の富士山だった。

そんなわけで50歳を過ぎてから、かなりの山を登ってきた。基本は一人で登るのが好きなのだが、時々一緒にいく山仲間が百名山を目指していたので、私も百名山中50以上の山を登ったことになる。

最近は、朝起きて天気がいいと、ぶらっと一人で奥武蔵の低山を歩いているが、ちょっと運動不足だなと思ったら、時には秩父の武甲山や谷川岳にも出かけている。まあ、あとしばらくは体力が続きそうだから、これまであまり登っていない北海道や東北の山に行こうかと思っている。

槍ヶ岳を背に晩秋の常念岳にて

槍ヶ岳を背に晩秋の常念岳にて


過去のメッセージ

プロフィール

日本野鳥の会 理事長 遠藤孝一

バードアイランド三宅島

10月中旬、三宅島に行ってきました。日本野鳥の会が三宅村から運営を受託している「三宅島自然ふれあいセンターアカコッコ館」の、レンジャーやお世話になっている役場や村民の皆さんとお会いするためです。

太平洋に浮かぶバードアイランド

三宅島は、東京から南南西へ約180kmの太平洋に位置する、伊豆諸島に属する島です。国の天然記念物のアカコッコやイイジマムシクイ、固有亜種のオーストンヤマガラなど、同島ならではの野鳥が密度高く生息していることから、別名「バードアイランド」とも呼ばれており、野鳥の生息地として世界的にも重要な地域です。

当会は、野鳥とその生息地を保全し、適切な環境管理のもと自然と触れ合うことができる自然系施設を「サンクチュアリ」と呼び、その理念を広めるために、1981年に北海道苫小牧市に日本で最初の「ウトナイ湖サンクチュアリ」を開設しました。その後は自治体などとも連携しながら全国に自然系施設を展開し、アカコッコ館もその流れの中で1993年に開設されました。今年で30周年を迎えたところです。

アカコッコ館の入り口
アカコッコ館の入り口
アカコッコ館の館内
アカコッコ館の館内


環境の変化がもたらす野鳥の生息数

アカコッコ館近くのスダジイの森林におおわれた大路池(たいろいけ)の岸辺に立つと、以前と変わらぬ島の豊かな自然を感じます。一方で、野鳥の生息状況は変化しているようです。

例えば、2000年の噴火で森林が大規模に消失したことによってアカコッコの個体数が減少しました。現在、個体数は回復傾向にあるものの、強力な捕食者であるイタチの導入前と比較するとまだまだ少なく、新たな対策が必要です。

また、オーストンヤマガラも個体数が減少しているようです。原因としては、南西諸島から伊豆諸島に侵入したスダジイタマバエが、天敵のいない環境で大発生してスダジイの実がほとんど実らなくなり、それを主食としているオーストンヤマガラが餌不足におちいり、減ったのではないかと言われています。

水浴びをするオーストンヤマガラ

水浴びをするオーストンヤマガラ

これからも当会は、バードアイランド三宅島を未来につなぐために、村民の皆さんをはじめ、島を訪れて三宅島のファンになってくださった皆さんとともに、地域振興や地域活性化とも連動しつつ、島の自然や野鳥を守っていきます。

スダジイの原生林に囲まれた大路池にて

スダジイの原生林に囲まれた大路池にて


過去のメッセージ

プロフィール