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- 岩木川河口域~十三湖(中泊町西部、つがる市北東部、五所川原市北部)
岩木川河口域~十三湖(中泊町西部、つがる市北東部、五所川原市北部)
推薦:日本野鳥の会 弘前支部
岩木川の河口部には長さ約10km、最大幅約400m、面積約400haのヨシ原が広がっています。この一帯は昭和初期まではヨシの原野からなる広大なデルタで、周辺に集落と水田が点在していました。しかし、田は腰まで埋まるような湿田で、洪水も頻発していました。そこで昭和中期に干拓・堤防工事が行なわれ、原野は美田地帯となり、ヨシ原は岩木川の河川敷に閉じ込められる形になりました。
その後、このヨシ原は希少な草原性鳥類の繁殖地となり、とくにオオセッカの繁殖地として仏沼(ほとけぬま)湿原、利根川とともに重要な場所になっています。中でも岩木川最下流にかかる津軽大橋の下流右岸、上流左岸のヨシ原が広く良好な環境で、コジュリンやチュウヒ、コヨシキリなども繁殖しています。
このヨシ原の環境維持には、地元のヨシ産業による刈り取りと火入れが大きな役割を果たしてきました。しかし、近年は需要の減少からヨシの刈り取りは縮小し、火入れも一時禁止となったために低木がめだちはじめ、ヨシ原の荒廃が心配されました。そこで、2018年、国土交通省が岩木川改修100周年記念行事として火入れを復活させ、中泊町、武田堤防保護組合、ヨシ業者等関係者が連携して取り組む体制が整いました。弘前大学や日本野鳥の会弘前支部による調査も長年継続されており、ヨシ原の価値を共有し、保全に向けた協力関係が築かれています。
所在地
中泊町西部、つがる市北東部、五所川原市北部(旧市浦村)
環境
湖、川/河原、草地
ベストシーズン
5月、6月
見られる鳥
早春から初夏にかけて、河口域のヨシ原ではオオセッカ、コジュリンはじめ草原性の小鳥たちのさえずりで満ちあふれ、その上をチュウヒが舞い、新たな命の誕生を目の当たりにすることができます。
冬季は、十三(じゅうさん)湖は汽水湖のため全面結氷はせず、周辺の水田地帯は積雪も少なく、オジロワシ、オオワシ、ハイイロチュウヒ、コミミズクなどの猛禽類やカモ類、そしてユキホオジロなどの冬の小鳥類にとって格好の越冬地となっています。また、このエリアは渡り鳥の重要な中継地となっており、春・秋の渡りの季節には数多くのシギ・チドリ類やガン・カモ類が羽を休め、栄養補給をする姿を観察することができます。
近隣情報
周辺の津軽平野には多くのため池が点在し、カンムリカイツブリやオオバン等が繁殖しているほか、春と秋には周りの田んぼも含めて水鳥の渡りの一大中継地となります。津軽半島西部に広がる屏風山(びょうぶさん)地域にあるベンセ湿原では、初夏にニッコウキスゲやノハナショウブの群落を楽しむことができます。
そのほか、世界遺産に指定された縄文遺跡群の亀ヶ岡遺跡、田小屋野(たごやの)貝塚、十三湖方面では中世に勢力を誇った安藤氏の遺跡や資料館、名産のしじみ(ヤマトシジミ)、金木地区では太宰治の生家である「斜陽館」など、岩木川の近隣では奥津軽の自然、歴史、文化、食を楽しむことができます。
注意事項
ヨシ原は堤防の上の道路から観察できますが、本来は堤防管理用の道路のため、車が一台通れる幅しかありません。所々に駐車スペースがありますが、工事用車両や地元の人の車も通るので、注意が必要です。
日本野鳥の会 弘前支部については、以下をご覧ください。