カワウと共に生きるには
採糞が行われなくなった「鵜の山」は現在どうなっているのだろうか?春先になると、なにやらごそごそと営巣地の中に立ち入る人たちがいる。実はワラビを獲っているのだ。これらの人たちは口をそろえて言う。「鵜の糞のせいか、ここはいいワラビがたくさん獲れる」。ワラの束を抱えた人もいる。地面に敷いたワラにカワウの糞をしみ込ませ、家庭菜園の肥料にするのだと言う。カメラを持ち、鵜を撮ろうとする人たちもいる。形こそ違うものの、ここでは今でもカワウとともに過ごす時間を大切にする多くの人たちがいる。 しかし、その一方で、カワウをやっかいだと思う人たちもいることも確かである。付近でミカンを育てる人の中には、果実に糞がついて困ると言う人もいる。池に魚釣りをしにきたある若者は、黒い鳥がみんな魚をさらっていってしまって全然釣れないとぼやいていた。三河湾沿岸でウナギなどの魚の養殖をしている人たちにとっては、知多の山から飛んで来る黒い鳥の群れはやはり脅威である。このような相反する感情を抱かせるカワウに関する問題の解決は容易ではないであろう。
|
|
|
|
保渡田八幡塚古墳(5世紀末)出土の鵜飼い埴輪。鵜飼いを証明する国内最古の資料
(写真提供/かみつけの里博物館) |
|