プレスリリース 2012.08.23

2012年8月23日

都立葛西臨海公園での2020年東京オリンピックカヌー競技場建設の
変更要望書提出を招致委員会と都知事に提出しました

日本野鳥の会東京
公益財団法人日本野鳥の会

 日本野鳥の会東京(代表:中村一也と公益財団法人日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博、会員・サポーター数約5万人)は8月23日、2020年に開催されるオリンピックの東京招致計画に関し、葛西臨海公園カヌースラローム競技場建設計画の変更を求める要望書を8月23日付けで東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会と都知事宛に提出しました。

<要望内容の概要>

  1. 開園から23年を経過した都立葛西臨海公園は多様な生態系が形成されているが、競技施設の建設によりこれが失われることとなる。
  2. 葛西臨海公園の豊な生物多様性からもたらされる都区民のかけがえのない憩いの場・自然との触れ合いの場を奪うことになってしまう。
  3. 短期間のオリンピック開催と利用者が限定される恒久施設のために、四季を通じて楽しめる住民の憩いの場が消滅してしまうという事態は、都民にとって大きな損失である。
  4. 東京湾岸には、未利用な土地があり、葛西臨海公園以外にも建設用地として利用可能な場所が存在することから計画の変更を求める。

参考

計画の概要 
2016年立候補ファイルより
2020年招致ファイルより

平成24年8月23日

東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会
理事長  竹田 恆和  殿

日本野鳥の会東京 代表 中村 一也
〒160-0022東京都新宿区新宿5-18-16新宿伊藤ビル3F
 Tel: 03-5273-5141 Fax: 03-5273-5142
公益財団法人日本野鳥の会 理事長 佐藤 仁志
〒141-0031東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
 Tel: 03-5436-2620 Fax: 03-5436-2635

都立葛西臨海公園での2020年東京オリンピックカヌー競技場建設
の変更についての要望書

 東京都は2016年に引き続き、2020年のオリンピック開催を表明し立候補されました。
貴委員会が先にIOCに提出された資料によりますと、前回の立候補時と同様、江戸川区の葛西臨海公園西側一帯にカヌー(スラローム)競技場を建設されることになっています。
 カヌー競技場はオリンピック終了後もカヌーやラフティングの施設として残す計画となっておりますが、その結果、同公園の鳥類園・水族園・大観覧車・ホテルシーサイド江戸川などを除く地域の約半分が競技場施設になってしまいます。
 私たちはオリンピックの東京招致に反対するものではありません。
 しかし、この件に関して、多くの都民が当建設計画の内容や問題点を知らないこと、また、葛西臨海公園建設の経過、新しい自然生態系の形成や保全を目指して整備されている経緯などからも、臨海公園の環境改変については十分に配慮して頂く必要があります。
 当会は、以下の理由により葛西臨海公園へのカヌー競技場建設には反対し、都または区の遊休地など別の適した場所への計画変更を求めます。

建設予定地の変更を求める理由

  1. 競技場建設予定地の豊かな自然環境を破壊する
     葛西臨海公園は開園から23年を経過し、土壌も植生も豊かになり、海・池・湿地・草原・林など変化ある環境に恵まれ、多様な生態系が形成されています。建設予定地(公園西側)だけに限っても、地元「葛西東渚・鳥類園友の会」の今迄の観察によると、鳥類(山野の鳥)76種、昆虫140種、クモ80種、樹木91種、野草132種を記録しています。また、トラツグミ、チョウトンボ、コガネグモ、ウラギクなど東京23区では絶滅危惧種に指定されている生物26種も確認しています(資料1)。競技施設の建設によりこのように、都内屈指の豊かな自然環境が破壊される(生物多様性が失われる)のを看過ごすことはできません。
  2. 都区民のかけがえのない憩いの場・自然との触れ合いの場が消滅する
     葛西臨海公園には昨年(平成23年)は320万人の行楽客が訪れています。
     建設予定地(公園西側)は海を見下ろしながらくつろげる地域で、家族で食事が楽しめるバーベキュー広場、歌手のコンサートや江戸川よさこいmyフェスタなどのイベントが行われる汐風の広場、松林や池・谷筋の散歩道、桜並木の中を通るサイクリングロードなどが在り野鳥の会探鳥コースにもなっており、競技施設の建設は都区民のかけがえのない憩いの場や1.で述べた豊かな自然と触れ合う場を奪うことになってしまいます(資料2)。
     今回の計画通り、競技場が建設されると、これらの場所の全域または一部が利用できなくなり、高さ9m長さ400mのコンクリートのコースや12,000席のスタンドは海風をさえぎり、公園からは海が見えず、なぎさ側からは公園が見えなくなるなど、臨海・海浜公園としての景観が壊れてしまいます。
     短期間のオリンピック開催と利用者が限定される恒久施設のために、四季を通じて楽しめる住民の憩いの場が消滅してしまうという事態は、都民としては納得できません。
  3. 他に適した候補地が存在する
     葛西臨海公園は、上記1、2に示したように、豊かな自然環境が育ち、区民を始め住民にとってかけがえのない場所となっています。
     一方、カヌー競技場は、たとえば中央防波堤埋立地内の未利用もしくは未建設地のなどに建設されても、機能的な面、交通の便などから、葛西臨海公園と同等と考えらます。このことは、前回とは異なる状況で、計画変更の対象となる案件だと思います。

添付資料(1)・(2)

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