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ナベヅル・マナヅルの現状
ナベヅル・マナヅルは、20世紀はじめまでは日本全国の里地で越冬していました。しかし、現在は鹿児島県出水地域に1万羽以上いるものの、他は限られた地域に数家族が越冬する程度です。世界全体を見ても、ナベヅルは8~9割が、マナヅルは5割前後が出水周辺で越冬するまでに集中化が進んでいます。
20世紀に入り、生息地の湿地の開発や農地の圃場整備、狩猟によりツル類は急激に減少しました。そのころから出水と周南市八代では、地域の人々がツル類を保護し、給餌、ねぐらの整備などが行なわれてきました。そして、地理・地形的要因もあって、多くのツル類が出水に集まってくるようになりました。現在、日本ではツル類の狩猟は行なわれていませんが、水田の乾田化や河川の護岸工事などでツル類がねぐらをとれるような浅水域がなく、ツル類の越冬地は出水から広がらない状況にあります。
このように、多くのツル類が日本に飛来しているのは、出水におけるの保護活動の成果なのですが、集中化は、伝染病発生時に大量死が起きる危険や農業被害の大規模化といった問題も生じています。その解消のためにはツルが各地で分散して越冬していた昔の状態に戻すことが必要なのです。
とはいえ、相手は野生動物のツルです。こちらの意図どおりに動いてはくれません。また、警戒心が強いので、飛来しても人の接近によって驚いてしまい、定着しない事例が多々生じています。まずは越冬環境を整備し、ツルが飛来したら、通行や立入りに配慮するなど、地域の人の理解や協力が必要になります。
また、長期的な視点では、ツルが生息することが地域の活性化につながるなど、地域にとっても嬉しい仕組みづくりも必要になります。
<大量死の事例>
2000年10月、韓国の浅水湾で10,000羽以上のトモエガモが鳥コレラにより死亡しました(詳細はこちら)。
2002年12月には、総個体数が1,000羽ほどしかいないクロツラヘラサギのうち73羽が,やはり集中越冬地の台南でボツリヌス菌による中毒で死亡しています。